中嶋 悟(元F1ドライバー)

人間の心理は不思議なもので、幹線道路の中央分離帯や歩道沿い、高速道路の高架下の空き地にあき缶が落ちていると、みんなクルマからポイ捨てしてしまう。本当は絶対してはいけない行為でも、結構ボロボロ落ちていると、ドライバーや同乗者はポイ捨てしても心に痛みを感じなくなる。レース中これまで、サーキット内にあき缶が転がってきたという経験はさすがにないけれども、ビニール袋が舞い込んできて、エンジントラブルの原因になったことはしばしばある。怖いよね、もしドライブ中にあき缶が転がってきたら。

もちろん、みんながポイ捨てしないことが理想だけれど、捨てられたあき缶を回収するちょっとしたルールがあると随分違うんじゃないかな。例えば、アメリカのインディアナポリス。あそこは街中で「インディ500」という大人気のレースが行われている。その期間中、主催者は民家の庭と道路を完璧に金網で仕切り、観客にビールのあき缶などのごみを金網越しの庭に投げ入れさせ、道路には捨てさせない。そして、庭に投げ入れられたごみを主催者は必ず回収して、1個数セントで買い取るというルールをつくっている。1日40万人の観客を集める大イベントだけに、ゴミの量は夥しい。きっと、1軒あたり数百ドルにはなっているはず。そのルールを初めて知った時、そうか!そうすれば、街にごみは残らないし、住民も納得して「この金はチャリティに」という気持ちにもなれると思ったね。

まあ最終的には、ポイ捨てしないことと、徹底的に回収すること、どっちが先かという議論に行き着いてしまうけれども…。しかし、まず大人たちが率先してポイ捨てしない、ポイ捨てされたあき缶などのごみを拾って街をきれいに保つ。こうした社会をつくることが、子供たちへの教育にもなるし、大事じゃないかな。僕も小学生と中学生の子供を持つ親として、だんだん身に染みてくる。10個落ちていたあき缶が、ある日突然5個になる。すると、ポイ捨てしようとした人も、「オッ」と躊躇するようになる。こうして街がきれいになっていくとイイよね。(談)