JR東日本あき缶リサイクルの事業系ルートを確立

厚生省の調べによれば、ごみ最終処分場の残余年数は全国平均で8.5年分、首都圏に至っては4.8年分と非常に逼迫した状況にある。元来、国土が狭く埋立用地の確保が難しい日本では、ごみの減量化が急務となっており、リサイクルの重要性が改めてクローズアップされている。
とくに都市部では、活発な事業活動に伴って大量に排出される事業系ごみ(紙ごみ・生ごみ・缶・ビンなど)が一般廃棄物の40~60%という大きなウエイトを占めていると言われており、各事業所におけるリサイクルの促進が、ごみの減量化・適正処理実現のカギを握っている。
本誌では今回、関東甲信越・東北地方と広域的な事業展開で私たちの暮らしを支えているJR東日本にスポットをあて、駅や列車で大量に発生するごみの減量化と資源化を推進するために確立した、缶・ビン類のリサイクルルートについてレポートする。

ゼロエミッション化作戦

年間7万トン発生する駅列車ごみの減量化目指して

JR東日本の利用者1日およそ1,637万人が1日平均1万2,305本運行されている列車内と1,706駅構内で排出するごみは、年間7万tに達している。この数字は東京都全体で発生するごみの約1%に相当する量であり、しかもその大半はスチール・アルミ缶や新聞・雑誌など、分別すればリサイクル可能なもので占められている。

そこで、JR東日本はスチールやアルミ、古紙などを極力リサイクルルートに乗せるため、クリーンボックスを設置して利用者に協力を求め分別回収に取り組むとともに、独自にリサイクルのための分別設備を整備し、駅列車ごみの減量化と再資源化を積極的に推進している。

駅列車ごみの減量化と再資源化の意義について、JR東日本総合企画本部経営管理部の奥野剛司エコロジーグループリーダーは「鉄道は旅客輸送1人あたりのエネルギー使用量が小さく、エネルギー効率が高い“環境にやさしい交通機関”と評価されています。しかし、そうした鉄道の特性を最大限に発揮するためには、多くのお客様にご利用いただいて大量輸送機関としての利便性や安全性を高める使命を全うしていく中で、地球環境への負荷低減を追求していくことが不可欠となります。つまり、《事業活動と環境保護の両立》が大きなテーマとなります。そのため、当社では、利用しやすい鉄道づくりによる環境への貢献とあわせて、自らの事業活動による環境負荷を最小限にしていくため、関係する法令を遵守することはもとより、さらに自主的な目標を設けて、継続的な改善に努めています。駅や列車での廃棄物削減に向けた取り組みはまさに、こうした当社の基本理念に基づいて展開しているもので、最終的にはゼロエミッションの実現を目指しています」と説明する。

捨てればごみ、分ければ資源

徹底した分別回収システムの試行

JR東日本は1980年代まで、駅列車ごみをすべて1つのクリーンボックスで回収し、集積所で選別を行った後、その地区の自治体へと運び込んで処理していたが、利用者や駅構内の売店・自動販売機の増加、減らない家庭ごみの持ち込みを反映して増え続けるごみ処理に頭を抱えていた。

こうした情勢を解消する新たなごみ処理体制を構築するため、JR東日本では、92年4月に発足したエコロジー推進委員会を中心に、駅列車ごみの減量化と再資源化を本格的に推進することになった。

その第1弾として同年8月、山手線巣鴨駅を環境対策のモデル駅に指定し、駅ごみを「燃えるゴミ」「燃えないゴミ(カン・ビン用)」「新聞・雑誌」の3つに分けて回収する試みを実施し、まず徹底した分別回収のシステム化を模索した。その結果、投入口の形状をごみの種類毎に変えるなどの工夫で分別率80%を達成する成果をあげ、さらにモデル駅を山手線内8駅へと拡大した。この8駅では、3種類のクリーンボックスをホームやコンコースにそれぞれひとまとめに配置するとともに、「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」とあいまいだった表示を「新聞・雑誌」「カン・ビン」「その他のゴミ」に改善することで、分別回収の精度がより高まることを実証した。

また、列車内で発生するごみについても、93年3月から東北・上越・山形新幹線のすべての列車で順次、分別回収をスタートした。列車内の分別は「あきカン・ビン」専用と「その他のゴミ」専用に区分し、車両基地でさらに分別処理するという回収システムとした。

こうした試みは、駅構内や列車内におけるあき缶などのポイ捨て防止につながり、美化に対しても大きな波及効果をあげている。

再資源化工場・上野駅リサイクルセンター

1日平均13トンの缶・ビン類を再生

JR東日本は94年2月、これまで積み重ねてきたノウハウに基づいて、中央線東京‐新宿間を含む山手線内36各駅でごみの分別回収に乗り出すとともに、上野駅リサイクルセンターを開設して缶・ビン類を再資源化するリサイクルルートを確立した。

現在、このリサイクルルートの分別回収エリアは東京23区内74各駅に広がり、1日平均13t(最も量の多い夏季には1日25t)の缶・ビン類がこのリサイクルセンターで処理され、リサイクル製品として蘇っている。これによって、一般廃棄物として東京都や民間の処分場で埋め立て処理されていた駅列車ごみは大幅に減少した。

ここでリサイクルルートの流れを簡単にご紹介すると、駅列車毎に分別回収されたごみは一度集積所に集められ、一般ごみはその地区の自治体のごみ処分場へ、あき缶やあきビンなどは上野駅リサイクルセンターへ、新聞・雑誌は新木場リサイクルセンターへトラックで運び込まれている。そして、上野駅リサイクルセンターでは、下図のような工程で缶やビンを選別し、スチール・アルミ缶はそれぞれブロック状にプレスして再生業者に引き渡している。また、缶やビンに混ざっていたペットボトルについても手作業で選別した後、キャップやラベルを取り除いて洗浄してからフレーク状に粉砕して再生業者に引き渡している。

リサイクルの現状と課題について、上野駅リサイクルセンターの岡村文男所長は「開設時にはほとんどなかったペットボトルが増える傾向にあり、いま一番悩ましい問題となっています。処理する側としては、分別回収する段階でペットボトル専用のクリーンボックスを設置して効率化を図りたいところですが、ホームのスペースやお客様への負担を考えると、3分別が限界と考えています」と分析した上で、「ペットボトルは手作業で選別しているのですが、だいたい80%程度はキャップが固く閉まっているため、スタッフがこれを1つ1つ丹念に取っています。一般家庭では中身を洗い流して、ラベルやキャップを取ってから捨てていらっしゃることでしょうが、お客様にそこまでご協力していただくことはできません。せめてキャップだけでも、その他ゴミのクリーンボックスに捨てていただけると幸いです」と分別回収へのさらなる理解と協力を呼びかけている。

また今後の展開について、上野駅リサイクルセンターを管轄するJR東日本東京支社総務部環境課の長谷川博グループリーダーは「これまで駅構内や列車内に入っている各テナントは独自の方法でごみ処理を行ってきましたが、それらを含めてリサイクルルートに乗せることができれば、精度はもっと向上するものと思われます。そこで現在、当社とグループ各社が一体となった取り組みを始めています。例えば、駅や列車で販売する商品については、ごみを分別しやすくするためにお客様に渡すビニール袋を透明にしたり、簡単に缶類を取り出せるような形状にするなどの工夫をしています。また毎年10月には、東京・横浜・千葉支社が駅構内で営業するグループ会社と共同でリサイクルキャンペーンを実施し、イベントや車内放送などによるPR活動に力を入れています」と話しており、ハード・ソフト両面からの新たな試みもなされている。

上野駅リサイクルセンターの缶ビン・類自動分別処理システム

 

駅列車ごみのリサイクル率28%達成

リサイクルルートの拡充と多様化

JR東日本の駅列車ごみの減量化と再資源化への取り組みはさらに続き、リサイクルルートの拡充が図られている。

缶・ビン類については、97年に東京駅と長野・秋田・新潟の各車両基地や運転所でリサイクルのための設備を設置、今年4月には上野駅リサイクルセンターと同等の処理システムと能力を持つ大宮リサイクルセンターを新設している。

大宮リサイクルセンターでは、埼玉県内57各駅から排出される缶・ビン類年間1,200tを対象に分別処理しており、上野駅リサイクルセンターの処理能力を合わせると、東京支社で発生する缶・ビン類の90%を自社で処理できるようになった。

また、新聞・雑誌の再資源化施設として昨年11月に開設した新木場リサイクルセンターでは、機密保持のため焼却されることの多い文書などを社内外から受け入れており、これらをトイレットペーパーなどにリサイクルするルートに乗せているほか、通常駅列車から集積、分別処理した新聞の一部は製紙工場で再生された後、JR東日本の東京地区のオフィスでコピー用紙として使用するなど、リサイクルルートの多様化も同時に図っている。

JR東日本はこうしたリサイクルルートの拡充と多様化によって、駅列車ごみのリサイクル率を97年度には94年度比倍増の28%まで伸ばし、当初2001年度目標としていた30%の達成も間近という状況にある。この数字は、全国の市町村におけるリサイクル率を大きく上回っており、まさにJR東日本の真摯な取り組みを反映している。

日本のスチール缶リサイクル率が世界でもトップレベルを誇っている背景には、自治体の取り組みとともに、JR東日本に代表される事業系ルートの拡大が大きな原動力となっている。スチール缶のリサイクル促進は、こうして着実にごみ減量化に役立っており、今後さらなる事業系リサイクルルートのシステム化に期待が寄せられる。