中野浩一(元競輪選手)

NHKの「ひるどき日本列島」というテレビ番組にレギュラー出演していた頃、必ず取材先のまちを1時間程度走っていました。その中で最も印象深かったのは、樹齢400年を超える杉の恵みを活かした木材のまち・鳥取県智頭(ちず)町です。私はいつものようにまちを走っているうち、智頭町の人たちがみんな自分の家のまわり200メートルぐらいを掃除していることに気づきました。お婆ちゃんに声をかけたら、「これは当たり前のことで、別にまちの決まりになってるわけではないのよ」とのことでした。智頭町の道にはごみは落ちていませんし、道のわきにある水路にも澄んだ水が流れていました。こうした美しい風景に導かれて、気づいたら90分も走っていました。

現役の時には、トレーニングで1日100キロを目標に一般道路も走っていましたが、結構不用意に投げ捨てられたガラスびんのかけらが散らばっていて、よくパンクして泣かされました。でも、中央分離帯とか歩道沿いにポイ捨てされたあき缶が気になるようになったのは、実は公共広告機構のCM「もっとマナー、もっとリサイクル」のイメージキャラクターを務めてからなんです。CMが阪神大震災の直後、頻繁に放映されたこともあって、顔を見られるたび「あっ、ポイ捨てだ」とよく言われましたから、逆に自分自身かなり意識するようになりましたね。例えば、空港の搭乗待ちロビーで、飲み終わったコーヒーの紙コップを、無意識にイスの下にポイ捨てしようとしていた手が止まって、ごみ箱を探すようになり、いまではごみが落ちていると拾うようになった。

ポイ捨て防止策のひとつとして、公共の場所にごみ箱がたくさん設置されているとイイのではないかと思うんですよ。それは釣りをやっていると、とくに痛感します。というのは、釣り場にはごみ箱がないからです。

1年半前から釣り番組に出演しているんですが、番組で絶好のフィッシング・ポイントとして紹介した釣り場には、放送翌日、視聴者たちがたくさんやって来ます。でもマナーが悪いと、波止場とかにいっぱいごみが残って、地元の漁協の人たちから「もうテレビでは紹介しないでくれ」というクレームが寄せられます。釣り場に結構ごみを置いていく人たちがいるんですよ。基本的なルールとしては、「持ってきたごみはみんな持って帰ろう」「釣り場をきれいにしよう」が合言葉となっていて、本当はごみは落ちていないはずなんですが、たまに缶とかペットボトルが落ちていたり、海や川に流れていたりする。

だから番組内で、スタッフと一緒にごみを拾って、「こういう所にごみが落ちているのはおかしい。釣り人のマナーとして、ごみは絶対持ち帰りましょう」と、いま呼びかけています。何となく「オレくらいイイじゃない」という気持ちがみんなにあると、すごい量になってしまう。人がたくさん集まる公共の場では、とくに気をつけたいものですね。