ごみ資源化・減量化先進都市北九州市

都市は増え続けるごみに埋もれてしまうのだろうか?深刻化するごみ問題に対して、日本各地の自治体では、総合的なごみ減量・リサイクル促進策のあり方が模索されてきたが、現在、いくつかの中小都市や大都市では、着実に成果をあげ始めている。人口100万人を超える大都市・福岡県北九州市もまた、市民・事業者・市が一体となって、ごみの資源化・減量化に取り組む先進都市である。

もっと減量、もっとリサイクル
[ごみダイエット作戦]展開中【市民×市】

缶・びん・ペットボトルの分別収集を全市一斉に推進
■“大都市困難”神話を打ち破る

北九州市では、1993 年を“ 環境元年”と位置づけ、「ごみ処理の基本をそれまでの処理重視型からリサイクル型」へと転換し、大都市では困難と言われていた缶・びんの分別収集を93 年7月から政令指定都市で初めて全市一斉に開始するなど、ごみの適正処理を推進するとともに、資源化・減量化の施策を市民と事業者の協力を得ながら展開している。

同市環境局によれば、97年度に分別収集された缶・びんはおよそ1万6,000t (スチール缶9,500万本・アルミ缶4,500万本・ガラスびん1,100万本)で、リサイクルによる省エネ効果は一般家庭22 万世帯が1カ月に使用する電力量6,600 万kW/hに相当する。また、再生工場への缶・びん売却収益およそ2 億円は資源化センターの運営費に充てられているが、このセンターでは知的障害者50人が働いており、障害者の雇用確保と社会参加を促す福祉工場としての役割も果たしている。

同市は缶・びんの分別収集が定着したことで、さらに97年11月からペットボトルの分別収集を新たに開始した。缶・びん・ペットボトルの分別収集によるごみの資源化・減量化が堅調に推移している現状について、同市環境局資源化推進課の中島千雅課長は「分別収集は何と言っても市民の協力をいかに得ることができるかが大きなカギを握ります。そこで、節目ごとに市内全町内会に市職員が出向いて、分別収集の重要性や方法などについて説明し協力をお願いするとともに、市政に対する市民の意見や要望をうかがう“ 出前トーク”を行ってきました。これによって、市と市民の信頼関係がより強まり、一般的には50%程度と言われている分別収集に対する市民協力度が、本市では70%という高い水準を維持できているものと考えています」と分析している。

集団資源回収による古紙リサイクルを促進
■再生古紙は樹木32万本分/年

同市では、缶・びん・ペットボトルの他に、再利用できる資源物の回収を町内会や子供会、自治会、PTAなどの団体に呼びかけ、「集団資源回収団体奨励金制度」や「資源回収用保管庫貸与制度」の施策を実施することによって、ごみの資源化・減量化を一層図っている。

「集団資源回収団体奨励金制度」では、市民団体が回収した古紙1kgに対して、新聞・チラシについては6円、その他の古紙については3円の奨励金を交付しており、98 年度には1,166 団体が1,645万3,129kg の古紙を回収している。これら回収された古紙を樹木に換算すると、直径14cm・高さ8mの木およそ32万本分に相当し、地球環境保全に欠かせない貴重な森林資源の保全に貢献している。

また、「資源回収用保管庫貸与制度」では、集団資源回収団体や新たに古紙回収活動を始める町内会などに対して、現在176基の保管庫を無料貸出しており、古紙リサイクルを一層促進している。古紙リサイクルの現状について、97年から古紙回収活動を行っている北九州市立西小倉市民福祉センターの寺崎潜館長は「当センターでは開館している時間帯なら持ち込みOKなので、たいてい2~3カ月毎に古紙回収を行っている町内会や子供会などの活動を補完する役割を果たしていると思います。オフィス街に近い立地ということもあり、通勤やショッピングのついでにクルマで古紙を持ってくるサラリーマンや主婦の利用が年々多くなっています」と話している。

一般ごみ収集の有料指定袋制度を導入
■一般ごみ12%減・再資源化13%増

市民ベースでの[ごみダイエット作戦]として、同市では生ごみのコンポスト化を促進する「家庭用生ごみコンポスト化容器設置助成制度」(容器の購入・設置について1 基当たり3,000円を助成)、トレーや牛乳パックの拠点回収を促進する「エコショップ制度」(99 年現在673 店を認定)、デパートやスーパーなど小売店での適正包装を促進するため簡易包装を呼びかける「簡易包装シールの作成」などの施策によって、ごみの資源化・減量化へのさらなる協力を求めてきた。

しかしながら、同市のごみ事情は依然として増加する傾向にあり、98年度には一般廃棄物排出量はおよそ49 万t、処理コストにおよそ153 億円(一世帯当たり3 万5,000円)の経費を要している。このままごみが増え続ければ、2004 年度には年間57 万tに達すると予想されるため、ごみ処理コストの節減や資源ごみ分別の徹底、ごみステーションの美観確保などの観点から、同市は98 年7月に定都市で初めて「一般ごみ収集の有料指定袋制度」の導入に踏み切った。これは一般ごみ収集を有料化する一方、資源物収集を無料とすることで市民のコスト意識の高揚を促し、ごみの資源化・減量化の充実強化を図ろうというもの。

「一般ごみ収集の有料指定袋制度」は、市民が週2回指定曜日の一般ごみ収集の際、ごみを有料指定袋に入れ、ごみステーションに排出するというもので、指定袋の販売代金そのものがごみ処理手数料としているが、実際には製造や販売代行料を除いた金額が同市に入るシステムとなっている。指定袋は99 年末現在、1 枚当たり大袋(45ℓ)15円・小袋(30ℓ)12 円・特小袋(20ℓ)8円の3 種類が、スーパーやコンビニエンスストアなどで販売されている。同市に入る益金は1 枚当たりおよそ2円で、98年度にはおよそ3 億円が市民のリサイクル活動を支援する同市環境保全基金に積み立てられ、町内清掃やまち美化活動のボランティア清掃時に無料配付されるごみ袋「まち美化ボランティア袋」の作成などに使われている。

同市はこれまで政令指定都市で唯一ごみ袋無料配布を実施していたが、一転して有料指定袋制度を導入することになった。しかし、有料化にあたっては“出前トーク”(98 年度は606 団体・2 万5,525人を対象に説明会)を開催することで、市民の理解を十分に得ることができた。指定袋制度がスタートして1年後の実施状況をみると、98 年7月~99 年6月には焼却・埋立される一般ごみ量は対前年比12%減少し、当初目標としていた10%減をクリアしている。その一方、再資源化された資源物(缶・びん・ペットボトル)量は13%増加、さらに指定袋制度への協力状況についても協力率99.9%と非常に高く、リサイクル率やごみ出しマナーが向上する相乗効果をあげている。

もっと減量、もっとリサイクル
[ごみダイエット作戦]展開中【事業者×市】

急増する事業系ごみの抑制がキーポイント
■自発的な環境保全活動を促す

同市では、93 年までの過去6 年間で家庭系ごみは年平均0.5%の微増にとどまったのに対して、事業系ごみは7.3%と急増、事業所におけるごみ排出抑制が資源化・減量化のカギを握っていることが改めて浮き彫りになった。そこで、同市は93 年10月に制定した「北九州市廃棄物の減量及び適正処理に関する条例」に基づいて、事業者に対し、ごみの資源化・減量化をより一層進める指導を徹底している。

なかでも、一般廃棄物の廃材木については、市内のチップ化工場に一般廃棄物中間処理業の許可を行うなど、リサイクルシステムの確立を市が支援し、古紙や缶・びん・ペットボトルとともに資源物のリサイクルを促進している。さらにオフィス町内会の組織化、事業者対象環境問題出前講習会やごみ資源化・減量化講習会の開催、積極的にごみ資源化・減量化に取り組んでいる優良事業所・団体の表彰などを行い、急増する事業系ごみの資源化・減量化への協力を求めている。

なお、同市では自らの活動から生じる環境負荷を率先して減らすための計画「北九州市役所の環境保全に向けた率先実行計画」を98 年6月に策定しており、市民や事業者に対して範を示し、自発的な環境保全活動を促している。

資源を生かす確かな仕分けサイクル率94%を実現
■東芝セミコンダクター社北九州工場

同市からごみ資源化・減量化優良事業所として表彰され、96 年には市内の事業所で初めて環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001を取得した東芝セミコンダクター社北九州工場では「資源を生かす確かな仕分け」を合い言葉に98 年度リサイクル率94%を実現している。

同工場は半導体の製造拠点として、従業員およそ2,000人が現在働いており、「環境保全基本方針」の中で環境保全を工場経営の最重要課題の一つとして位置づけ、継続的な改善に全従業員で取り組むことを社内外に宣言し、ごみ資源化・減量化の周知徹底を図っている。

同社では早い時期から全社的に環境保全の推進管理体制を整えており、すでに90~95 年度の間に50%の廃棄物削減を目指した独自のごみ資源化・減量化に取り組んできた。その一環として、同工場ではダンボール類や書類など古紙の資源回収、自動販売機の缶・びんの飲料・自販機メーカーによる資源回収、プロセスおよび装置改善による廃油削減などによって、95 年度には90 年度原単位比排出21%を達成した。その後、96~2000 年度にわたっては、製品梱包用の木屑や廃ポリ、蛍光灯や乾電池の再資源化、食堂生ごみの堆肥化などに取り組み、2000 年度に90 年度原単位比排出13.3%以下(全社的には20%以下)の達成を目指している。

今後の取り組みについて、同工場生産部環境保全課の牧野貴男課長は「原材料の調達・製造・流通・使用・廃棄といった製品のライフサイクルを通じて環境への影響をできる限り小さくし、ユーザーニーズに合った環境調和型製品の提供によって地球環境保全に貢献していくとともに、廃棄物の削減・再資源化をさらに推進して地域社会との協調連携を図りながらゼロ・エミッションを目指していきたいと考えています」と語っている。

もっと減量、もっとリサイクル
資源循環型[環境未来都市]めざして【市民×事業者×市】

リサイクルの受け皿となる環境産業の育成・振興
■北九州エコタウン事業

資源と環境の両面での負荷の大幅な削減を図り、持続可能な社会を形成するため、同市は市民・事業者・市が一体となって、ごみの資源化・減量化を推進していきたが、2000 年4月の容器包装リサイクル法全面施行や2001 年4月に予定されている家電リサイクル法施行に向けて、今後はリサイクルの受け皿となる環境産業の育成・振興も重要となってくる。

そのため、同市では、すべての廃棄物を新たに他の産業分野の原料として利用・減量し、あらゆる廃棄物をゼロにするゼロ・エミッション構想の実現を目指した「北九州エコタウン事業」を推進している。同事業は97 年7月に通商産業省「エコタウン事業」の地域承認を受けており、響灘沿岸の広大な埋立地の一角に、実証研究センターや総合環境コンビナートなどの環境産業・技術開発拠点づくりが進められている。

なかでも、総合環境コンビナートの初プロジェクトとして、98 年4月から営業を開始したペットボトルリサイクル事業は、同市と新日本製鉄(株)、三井物産(株)、日鉄運輸(株)、日本通運(株)、山九(株)が出資した第三セクター・西日本ペットボトルリサイクル(株)が事業主体となり、スーツや学生服、ボトルなどのリサイクル製品の原料となるPET樹脂を製造している。同市では、ペットボトルの分別収集開始によって安定した回収量を確保するとともに、再生製品の市場拡大を促すため、市職員の作業着に廃ペットボトル繊維を50%使用した製品を購入するなど、新しい資源循環型経済社会システムの構築を図っている。

その後、総合環境コンビナートでは、OA 機器リサイクル事業や使用済み自動車リサイクル事業が展開されており、2000年4月からは家電リサイクル事業も始まる予定となっている。一方、実証研究センターでも、都市ごみ焼却灰を適正処理しリサイクルする技術や、都市ごみの生分解性プラスチック化技術など、さまざまな実証研究が進んでいる。

ごみをつくらないライフスタイルづくり
■生活様式や産業構造の転換

同市では過去の公害問題を市民・事業者・市が一体となって克服し、その中で蓄積した環境保全技術を生かした国際協力は世界的な評価を受けている。そして、“ 環境の世紀”と言われる21 世紀に向けて、ごみの資源化・減量化の推進をはじめとする資源循環型社会の構築に努め、[環境未来都市]としての再生を図っている。

今後の展望について、同市環境局資源化推進課の中島課長は「廃棄物を貴重な資源ととらえ、生産の段階からリサイクルとごみの減量化を考慮した産業活動を行うこと、廃棄物は資源として再利用すること、環境にやさしいリサイクル製品を使うことなど、いまや循環型の生活様式や産業構造への転換が迫られています。ごみの資源化・減量化の手法はさまざまありますが、本市では、単に細かく分別して集めるだけではなく、リサイクル技術の開発や北九州という独自の都市形態に合った体制づくりを進めながら、市民や事業者の参加を呼びかけていきたいと考えています。究極の理想は“ごみをつくらないライフスタイルづくり”にあるのではないでしょうか。そのためには、人間と環境との関わりについて理解と認識を深める環境教育が重要になってくることでしょう」と話している。

環境教育について、同市はとくに小・中学生を対象にした「こどもエコクラブ」事業を積極的に推進している。98 年度には73 団体・1,531 人の子供たちが交流し、99 年3月に「99こどもエコクラブ全国フェスティバルin 北九州」を開催するなど、長期的な視野に立った総合的かつ体系的な事業を展開している。

日本各地では最終処分場の逼迫を背景に、多くの自治体で「ごみ非常事態」が宣言され、総合的なごみ減量・リサイクル促進策のあり方が模索されている。同市の取り組みは大都市における先進事例として、今後もその動向が大いに注目されている。