東京学芸大学教育学部 教授附属教育実践総合センター長 小澤 紀美子(こざわ・きみこ)

環境教育の基礎は、1970年代に行われた一連の国際会議を通して築かれましたが、なかでも環境教育のねらいを明確にし、その理念が準拠すべき枠組として用いられているのが75年のベオグラード憲章です。この憲章では、個人および社会集団が具体的に身につけ、実際に行動を起こすために必要な目標として、「関心」「知識」「態度」「技能」「評価能力」「参加」の6項目が示され、これが世界共通の認識となっています。

ここ数年日本人の環境問題への意識は高まってきていると言われていますが、実際にはごく限られた問題に対して「関心」を示したり、「知識」を得るだけにとどまり、ライフスタイルや社会経済システムを変えるための行動や実践にまで至っていないという現状にあります。こうした実態からも、これからの環境教育・環境学習は、まず「関心の喚起」「理解の深化」「参加する態度・問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促すという流れの中に国の施策を位置づけること。そして、私たち一人ひとりが「持続可能な社会とは、どのような世界なのだろう」と社会のあり方や仕組みを考え、それに至る道筋について議論を交わし、合意点を見いだし、お互いに手を結んで、より大きな効果が発揮できるように、学校や家庭、地域社会などの「場をつなぎ」、行政や国民などの「主体つなぎ」、行政同士の「施策をつなぐ」というコラボレーション(協働)の意識や能力を持つことが極めて重要であると考えます。

現在の環境問題は、物質循環やエネルギー、食料、人口問題などさまざまな要素が相互に関連しあって環境に影響を与えた結果起こっており、それを理解するためには問題をホリスティック(全体的)に捉える必要があります。ただし学校教育で考えれば、小学校低学年なら「気づき」を促し、高学年なら社会の仕組みを「学び」「分析する」能力を育てるというように、子どもたちの発達に応じて段階的に行われていくことが求められます。そういう意味で「総合的な学習の時間」によって、学校教育がこれまでの教科書に答えが用意されている知識伝達型の教育から、体験による探究活動をしながら創造し表現していくプロセス重視型の学習へと変わっていくことに期待を寄せています。そして、環境教育・環境学習が学校教育としてだけ行われるのではなく、子どもたちが大人になってからも生涯学習として個人のライフステージに応じて、適切な場と施策が組み合わされて実施され、地域に根ざした活動として広がって持続可能な社会の形成に発展していくことを願っています。(談)