いま日本では、「容器包装リサイクル法」の回収対象がガラスびん・ペットボトルだけでなく、紙製容器包装、プラスチック製容器包装にまで広げられるとともに、「循環型社会形成推進基本法」をはじめとする一連の法案が出揃い、21世紀の循環型社会形成へ向けて大きく動き出している。一方で、循環型社会を構築するうえで欠かせない「美化・清掃活動」については、各企業・団体やボランティアによる活動が積極的に進められてはいるものの、現段階で国全体としての大きな動きになっているとは言い難い。「環境先進エリア・ヨーロッパの取り組み(下)」では、前回のドイツを中心とする「ヨーロッパの再資源化策」に引き続き、『第6回あき缶問題訪欧調査団報告書』をもとに、イギリス・フランスの「美化・清掃活動」の事例をご紹介する。

40年以上の歴史を誇るナショナルレベルの美化団体
 ■TBG(TIDY BRITAIN GROUP)

まず初めにご紹介するのは、「英国をきれいでエレガントな土地にするための活動」を目指し、1954年に設立されたイギリスの美化団体「TBG」。数十名で構成される運営委員会を中心に活動するこの団体は、政府と賛助企業のバックアップ、および各種アドバイス・コンサルタントの収益で運営されている。

エレガントな英国をつくる活動とは、簡単に言うと、道路をきれいにし、ごみを適正に捨てることを通して街や田舎の風景を保全することである。同団体ではこれらの活動を実施するために、例えば、花などを植栽する地域のグループと協力するといった具合に、加入団体や各種グループ、ボランティアなどと連携している。これらの活動の根底には「街や環境をきれいにすると、人もごみを捨てたり、汚したりしない」という信念がある。

キャンペーン活動を大別すると、大掃除と広告。特に「春の全国大掃除」には、子供からお年寄り、学校、企業まで幅広い参加者があり、その数は数百万人にも及ぶという。コミュニティや海岸沿いの清掃活動、植栽活動などの各種プラグラムも充実している。

また同団体では、一般ごみ、産業廃棄物、エネルギーなど多岐にわたる環境教育を行うエコスクールなどの活動にも熱心に取り組んでおり、イギリス中で行われているスクールのカリキュラムには、学生はもとより、教師、家族、地域代表者などが参加し、各スクールで環境問題に対するアクションプランを立てる。TBGはエコスクールにおいて授業教材を提供して、1年間でまとめた各スクールのレポートの評価を行い、優秀成績を表彰している。ヨーロッパではイギリスだけでなく各国でエコスクールが実施されているが、TBGでは他国の団体とも協力してこの活動を推進している。一方、こうした授業以外にも、各種展示会への参加によるパンフレット配布や情報発信、地方行政や企業家向けのセミナーなども開催している。

さらに、環境保護法への地方行政の対応調査や、都市部、30以上の行政区で構成されるロンドン自治区を対象とした清掃評価、コミュニティ法の実施で病人の在宅看護が多いことを背景に増加する医療ごみや、大型ごみ、タバコの吸殻ごみの調査、紙オムツの収集方法の研究などその活動は多岐にわたる。

このようにTBGでは、40年以上にわたる歴史の中で、キャンペーン、教育、各種プログラムを通じて、イギリス国民一人ひとりの環境に対する意識を着実に高めている。

トップレベルの清掃評価を得るロンドンを代表する行政区
 ■ウエストミンスター区

次に紹介するのは、TBGが実施する30以上の行政区で構成されるロンドン自治区を対象とした清掃評価の中で、トップレベルの評価を得ているロンドン自治区のウエストミンスター区の事例。同行政区はロンドンを代表する行政区だ。

イギリスでは一般的にごみの収集とごみの廃棄を2区で分担しているが、ウエストミンスター区は1行政区でそれらを行う珍しい行政区である。わずか14~15km2というエリアには約17万人の住民がおり、昼間は職場に通う人々によって人口が100万人にまでに達する。さらに同行政区にはバッキンガム宮殿があり観光客も多いことが、美化・清掃に注力する大きな理由となっている。

道路清掃で収集されるごみの量は1日100t近く、年間数万tのごみが集められているが、道路清掃の実施に際して、重要な道路の順に赤、紫、住宅地を黄色に色分けし、環境保護法による基準を踏まえて同行政区でさらに強化したクリーニング基準を、「A.非常にきれい」「B.小さなごみ(吸殻等)がある」「C.缶・ファーストフードのごみが散らかっている」「D.ありとあらゆるごみが散らかっている」に分類し、「どこを」「何時間」「どのように清掃するのか」を表にしている。ちなみにA~Dの基準は、TBGが実施する地方行政の評価基準と同じものである。

具体的な清掃事例として、例えば、首相官邸のあるダウニングストリートでは、ごみをハンドバロウというちりとりで収集し、ごみ箱のごみもごみ袋に一括収集している。行政区内の道路際に数千個設置されているごみ箱はテロリストの爆弾対策も考慮して、外見の良い鍵のかかるごみ箱を使用している。オックスフォードストリートなど人通りの多い道路では、回転ブラシの付いた電気掃除自動車を使い、またシュミッツ道路洗浄機という水を流す機械で、人通りの少ない早朝や深夜に道路洗浄が行われている。さらに、ロンドンマラソンなどの特殊な行事、公衆電話の張り紙、犬の糞、チューインガムなどへの対応まで含めて、きめ細かく清掃活動を行っている。

多くの作業員と充実した清掃機械が歴史的遺産の美化を守る
 ■パリの清掃作業

数多くの歴史的遺産を持ち、世界各国から観光客が絶えず訪れるパリでは、毎日、自治体による街の清掃が行われ、地下鉄においても1日数回の清掃が行われている。清掃は、いくつかのディビジョンに分けられ、さらにその下のサブディビジョンがあり、各々が1~2区を担当している。例えば、パリ市5区・6区(人口11万人)の場合、サブディビジョン組織は総指揮を行うエンジニア1名、10名近くの作業長、現場での指揮に当たる30名程のグループ長、そして280名に及ぶ現場作業者で構成される。パリ市5区・6区には11カ所の作業所があり、道路地下には「アトリエ」と呼ばれる作業所もある。

ちなみに、パリ市には約4,500名の清掃作業員が在籍しており、特殊自動車の取り扱いなどの特別な教育を受けている。通常は早朝のごみ回収後に道路清掃を行うが、日曜日には観光地専門の清掃も実施する。

道路清掃においては、各種の清掃作業機械が活躍する。まずパリ市6区に2台配置されている吸引機は、回転腕を動かし箒で機体中央にごみを集めて吸引するもので、アルミ缶や小さなボトルまで吸い込むことができる。7台配置されている清掃車は、大型車両のため広い車道や歩道に限られるが、公害・騒音対策として電気自動車が採用されるケースが多い。そして道路の回転洗浄機「ジロラーブ」(ジロ:回転、ラーブ:洗う)は1日数回、温水(70~80℃)を高圧で路面にぶつけることで舗道などの清掃を行う。さらには「カニネット」と呼ばれる犬の糞を吸引するオートバイもある。

ただ、先に紹介したロンドンのウエストミンスター区も同様であるが、特にパリ市の場合、ジロラーブを使用しても取れないガムの食べかすが問題になったり、犬の糞の吸引作業が必要であるなど、市民が自治体による道路清掃作業に依存し過ぎているという声もある。

美化・清掃についてもリサイクルと同様に、市民と行政が一体となって取り組むことが必要なことは言うまでもないが、今回ご紹介したヨーロッパの美化・清掃のいくつかの事例は、特にTBGのようなナショナルワイズな活動を行う、総合的な美化活動が貧弱だと言われる日本にとって示唆に富むものではないだろうか。

あき缶処理対策協会では、海外調査を重要な事業と位置づけ、調査団を派遣してきました(アメリカ6回、ヨーロッパ6回)。派遣毎にまとめられる調査報告は、欧米のリサイクル事情の紹介として各方面の方々にご活用いただいています。