繁華街でポイ捨てされたごみの大半は、ビラやチラシ、あき缶、タバコの吸い殻など、その街の活発な商業活動によって消費されたものが多い。24時間不特定多数の人々が集まる不夜城の東京・新宿もまた、早朝は宴の跡といった散乱状況に頭を抱えている。繁華街での美化をどう進めるべきか。新宿駅周辺地区では、この命題に対して、行政と事業者、地域住民が一体となって、清潔で快適な街を取り戻す活動を繰り広げている。

駅周辺129カ所に新宿型ごみ入れを設置

ポイ捨てごみの散乱を防止するには、モラルの向上が不可欠である。しかし、新宿駅周辺の状況は、単にモラルの向上を訴えるだけで改善していくことは難しいのが実情だ。

そのような状況の中、新宿区では、1973年から土木部に道路美化係を設置して、道路や広場の清掃、ごみ入れの設置・収集を行ってきた。そして、さらにポイ捨て行為への意識改革を促すため、1996年12月には「新宿区空き缶・吸い殻等の散乱防止に関する条例」を制定し、新宿駅周辺地区の散乱防止計画を策定した。

その計画では、区が住民や事業者と協力しながら、(1)ごみ入れ・吸殻入れの整備、(2)美化意識の啓発、(3)美化・清掃活動の推進、(4)散乱防止のルール・仕組みづくり、という4つの側面からの対策が講じられることになった。

まず、ごみ入れ・吸殻入れの整備については、主要交差点や広場などの人待ちスポットのような設置需要が高く、効果が期待できる駅東口周辺地区93カ所、駅西口周辺地区36カ所に区が設置。容器は機能、容量、視認性を考慮するとともに、道路占用、収集コスト、回収効率の面から、ごみ入れ・吸殻入れ併用の「新宿型ごみ入れ」を開発した。

当初の計画では、区は設置容器の30%を商店会や企業からの寄付を受けたいと考えていたが、地元の美化意識への関心の高さを反映して、その大半が寄贈された容器となった。区では、寄贈を受けた容器を責任を持って10年間にわたり維持管理することを約束し、毎日1回ごみを回収・分別し資源化処理する他に、容器の清掃や修繕も行っている。

自分たちのまちは自分たちできれいにしていく

次に、散乱防止計画の柱である美化意識の啓発と美化・清掃活動の推進について紹介しよう。

美化意識の啓発について、区が「ポイ捨て防止街頭キャンペーン」を年4回程度実施し、毎回多くの住民やボランティア、商店会、事業者が参加している。また、ポイ捨て行為への意識改革を図るため、条例で定められた美化推進重点区域を示す標識を設置している。一方、商店会や事業者は、店頭による呼びかけや従業員へのポイ捨て禁止の周知徹底に努めている。

また、美化・清掃活動の推進については、車道や植裁、公園の清掃を区が担当し、歩道および車道と歩道の区別のない道路の清掃を事業者が担当するという責務と役割を明確化している。なかでも商店会による自主的な活動が、新宿のまち美化に大きな役割を果たしている。

その一例をあげると、新宿大通商店街振興組合では、啓発活動やごみ入れ設置に積極的に参加しながら、独自の活動として、新宿通りの清掃(毎日)、新宿東口駅前の清掃活動(月2回)を行っている。清掃活動は第2・第4月曜日14時~15時の1時間、毎回30人程の組合員が参加している。駅前の汚れはひどく、組合員の皆さんは、掃き掃除の後、水を流し、洗剤とデッキブラシを使って汚れを落としている。これはたいへんな作業である。

「活動当初は清掃をするのが嫌になるくらい汚れていましたが、自分たちのまちは自分たちできれいにしていかなければ変わっていきません。今では、ごみ入れの設置や啓発・清掃活動など、いろんな活動が相乗効果となり、大勢の方々が活動に関わるようになって、少しずつ新宿がきれいになってきましたよ」と同組合事務局長の秋山実さんは語ってくれた。

パートナーシップの輪が広がる

「新宿をきれいにしたい」という活動の輪は、新宿区全域へと広がりをみせている。

今年5月30日区内一斉道路美化清掃が実施されたが、日頃から自主的に清掃活動を行っている町会・商店会や企業、小中学生やボランティアなど総勢1,300人が参加した。

巨大都市・新宿のごみ問題は決して楽観視できる状態ではない。新宿区環境保全課の長野辨係長は次のように現状を分析し、今後の展望について語る。

「区では、年間億単位の巨費を投じて、道路の美化清掃事業を行っています。その効果は、地域での美化活動の活発化とあいまって着実に効果をあげています。

しかし、繁華街を中心にポイ捨て行為が後を絶たず、まだまだ汚れているというのが実情です。また、ごみ容器の設置がごみを呼ぶという側面もあり、1日1回の収集では不十分なところもあります。

街をきれいにしていくには、地域の皆さんの日頃からの地道な努力が不可欠です。今後とも、区民・事業者の皆さんとのパートナーシップを大切にし、来街者への効果的な美化意識の啓発方法など、新宿に合った散乱防止のルール・仕組みづくりを考えていきたいと思います」

事業者、住民、行政が力を合わせながら美化推進の体制を築き、地道な活動を続ける新宿。日本一の繁華街は今、清潔で快適な街に変貌を遂げようとしている。