吉田栄作(俳優)

子供の頃、自動販売機で缶ジュースを買ってよく飲んだ。飲み歩きして、ちょうど飲み終わるあたりの民家の塀には必ずあき缶が並べてあって、自分もジャンプして並べては無邪気に喜んでいた。今から考えると、とんでもないことですよね。ポイ捨てしたのだから。

そんな自分が大人になって、ポイ捨てはいけないことだと語り始めることは、都合がいいと思われるかも知れない。けれども、あの頃と今では状況がずいぶん違うと思う。

自分たちは今、さまざまなメディアを通じて、地球の環境が非常にシリアスな問題になっていると誰もが実感できるようになった。そんな時代に、あき缶といったリサイクルできる資源をポイ捨てすることほど、カッコ悪いものはないと思う。きっと子供たちの方が、時代の空気を敏感に感じ取っているんじゃないかな。自分も絶対にポイ捨てしないと心に誓っている。

先日クルマに乗っていて、あき缶やタバコの吸い殻をポイ捨てするドライバーを見かけた。自分の住んでいる街、自分の生まれ育ったふるさとの環境が悪くなっていく様子を目の当たりにするのは、とても寂しいことですよね。

こうした状況は何も日本に限ったことではなくて、アメリカでもよく目にした。その一方で、“きれいな国だな”と感じた所もある。それはシンガポールとイタリアのシチリー島です。

シンガポールは高層ビルが立ち並ぶ大都会なのに、ごみ一つ落ちていない。東京とは大違いだな、どうしてだろうと思ったら、その美しさは罰金という制度によって保たれていることを知った。なぜか少しがっかりした。

一方、シチリー島はリュック・ベンソンの映画『グラン・ブルー』の舞台そのまま、街全体がアートしていた。限りなく透明な海と青い空、白壁の家々を縫うように巡らされた石畳の路地と洗濯物。街の人たちが誰に言われたわけでもないのに、当たり前のように石畳を掃除している。どことなく洗練されたライフスタイルを垣間見て、これだなと思った。

日本には“粋”という素晴らしい文化があります。3年間のアメリカ生活で、客観的に自分自身や自分を取り巻く環境を見つめ直したとき、改めてふるさとの大切さやありがたみに気づいた。そして、日本人である自分のアイデンティティーとは何かと考えていたとき、NHKの大河ドラマに出演して“粋”というキーワードに出会いました。

きっと日本の場合、“粋”な心がポイ捨てをなくし、街を美しく変えていく原動力になるんじゃないかな。(談)