一人ひとりの自主性から生まれる
“福岡式循環型社会”

ごみ減量・リサイクル率アップに挑戦する福岡市

いま時代は「後始末のリサイクル」から「モノづくりと、モノの使い方に光を当てたリサイクル」へ。10年先の姿を見据え、“元気が持続するまち”を将来像として描く福岡市は、市民・事業者・行政がそれぞれの役割を果たしながら連携し、「ごみの発生を回避し、モノを循環利用するまち」づくりを目指している。
今回は、“福岡らしさ”を共通の視点として、“一人ひとり身近でできる小さな取り組み”が着実に実を結びつつある、同市の取り組みを紹介する。

スチール缶は不燃ごみからリサイクル

「1986年、市独自に資源化センターを設置し、不燃性ごみから鉄とアルミの回収を始めました。

このシステムを活かしながら家庭ごみの分別収集を、1997年12月に可燃性ごみと不燃性ごみの2分別から粗大ごみを加えた3分別へ、2000年4月には3分別からあきびん・ペットボトルを加えた4分別へと移行させました。

その中で、“分別しなきゃいけない、ごみを減らさなきゃいけない、リサイクルしよう”という意識を持つ市民の動きが福岡でも始まっています」(福岡市環境局管理部ごみ減量・美化推進課の光来真弓係長)

現在、福岡市で1年間に排出されているごみの量は71万3,600tにのぼる。これは福岡ドーム2杯分に相当する。市民の生活水準の向上や生活様式の変化、事業活動の拡大により、ごみ量は人口増加のペースを上回る勢いで増えている(図1)。

家庭から排出されるごみ量の推移を組成別に見ると、増え方が大きいのは紙類、プラスチック類、あきびん・われ物類である(図2)。

こうした情勢を踏まえていま、あきびん・ペットボトルは分別収集を実施しているが、紙類およびトレイなどのプラスチック類についても、資源集団回収の奨励や回収拠点の整備など、複数のリサイクルルートを構築することで補完し、ごみの減量化に取り組んでいる。

一方、スチール缶を含むあき缶・金物類は、長年安定して大量に排出されてはいるものの、市内2ヵ所に設置された資源化センターで、不燃性ごみの中から鉄が回収され(2000年度実績=1万6,580t)、新たな資源として生まれ変わっている。

スチール缶は福岡市でもまた、循環利用できるシステムがしっかりと確立されており、長年にわたって特に個別のルートをつくることなく、不燃性ごみとして分別排出することで、気軽に、無理なく、リサイクルが実践されてきたのである。

 

都市化の波の中で市民・事業者・行政の連携を模索

「分別する品目を増やしたとき、収集・運搬のシステムはどうするのか。品目を増やしたぶんのコストはどうするのか。再資源化するための安定的なルートをどのように確保したらいいのか。こうした市民の意識は少しずつ高まっていても、年間8万人が入れ代わってしまうほど人口の流動性が高い福岡で、どのように意識の定着を図っていけばよいのか。課題は数多くあるわけですが、三つ巴、四つ巴の政策で補完しながら、多様な地域特性を持つ福岡に合った循環型社会の構築に取り組んでいます」(福岡市環境局管理部ごみ減量・美化推進課の蓑毛邦昭課長)

人口134万人を超える福岡市は、流通などの商業を中心として、国の出先機関や企業の支店・支社が集積した日本を代表する大都市の一つ。

総務省の2000年度国勢調査によれば、単身世帯が43.1%を占め、15~64歳の割合が全国に比べて高い。支店経済都市であることから単身赴任者が多いことや、政令都市では京都、横浜に次いで三番目に大学生が多い(約78,000人)ことを反映して、市内外への転出・転入者数は毎年およそ7万~8万人に達している。

地域の状況は、公民館など公共施設を核に144ヵ所の小学校区がコミュニティとして形成されてはいるものの、都市化の波で地域によってはコミュニティ意識が希薄になっているという。

ごみの発生抑制やリサイクル推進のため、市民・事業者・行政が連携し、それぞれ具体的にどのような役割を担い、行動すればいいのか。福岡市が目指すべき方向性を検討するため、1999年8月「福岡市循環型システム研究会」(会長・松藤康司福岡大学工学部教授)が設置され、2001年12月に最終報告書が提出された。

身近でできる小さな取り組みを一つひとつ実行

学識経験者や市民代表などで構成される「福岡市循環型システム研究会」では、ごみの発生抑制やリサイクル推進のための具体的施策、および市民・事業者・行政各主体の行動指針などを循環型システムとして体系化し、向かうべき方向性を指し示している。

基本的なあり方としては、1.発生回避、2.循環利用、3.適正処理の優先順位をつけたうえで、市民や事業者が、行政との連携の中で「活力と責任」「自発性と参加」といった理念に基づき、身近でできる小さな取り組みを一つひとつ実行するというものだ。

具体的な取り組みとして、市民は、例えば紙ごみ対策として、資源回収拠点の増設や単身世帯が多い地域における紙リサイクルボックスの設置など、地域発意による仕組みづくりを行う。また、昔の生活慣習や伝統行事、子供会での集団回収の充実など、さまざまな場で学ぶことを通して環境に対する意識と行動を広げる。

事業者は、製造・流通での環境配慮やISO14001の取得などの事業活動はもちろん、消費者や社員への情報やサービスの提供を通して環境への配慮を誘発する。プラスチックごみ対策としてのトレイ・発砲スチロールの店頭回収などはその一例だ。

一方、行政は地域のリーダーとして率先した取り組みを進めるとともに、環境努力を支える仕組みをつくる。また、「家庭ごみの有料化」で得られた財源を基に「環境市民ファンド」を創設し、循環利用促進の支援に充てることも検討している。さらには、環境学習プログラムの充実を図り、学校教育や生涯学習などを通じた環境教育を実践しようとしている。

“福岡らしさ”が見える循環型社会づくりを目指す

こうした3者の行動と連携の基盤には、“福岡らしい循環型社会をいかにつくるのか”という共通の思いがある。

その“福岡方式”の一つ目のキーワードは、「地域・事業者発意」だ。これまで行政がつくってきた4分別収集を基本的な仕組みとして、各地域・事業者が自主的にそれぞれの特性に応じた仕組みづくりを進め、行政がそれを支援しようというもの。それぞれの地域に応じた人的資源や拠点などの活用がポイントとなる。

二つ目は「合理性」、つまり“努力している人が報われる仕組みづくり”をしようというものである。責任の公平性を確保するために、努力した人が満足や経済的なインセンティブを得られる仕組みを構築することが重要だ。

そして最後は、特に“福岡らしさ”が目に見えてわかる「季節性」である。季節感のあるイベントを、より身近な学びの機会として活かすというものだ。地域で取り組んだ意識と行動を浸透・拡大させ子供たちに継承し、さらに未来の大人たちが次世代につなげていくといった願いが込められている。

例えば、日本有数の祭りとして知られる「博多どんたく」。ゴールデンウィークの催しの中でも日本一の人出があり、全国各地から観光客が訪れる福岡市の一大イベントである。

「博多どんたくが開催される地域では、きれいな町・博多を印象づけ、来訪者の美化に対する気持ちを変えてもらおうということで、開催時期に合わせて“大名クリーン作戦”を行っています。ここ大名小学校の生徒と地域住民、区役所の方々、大学生などが一緒に会場周辺の空き缶・ごみ拾いをしています。昨年で6回目となったこの試みを、大名小学校では感想文づくりまでの総合的な体験学習としてカリキュラムに取り入れています。また、学校内に手作りの分別排出用ボックスを設置してありますが、生徒たちは通学途中のごみ拾いを含めて、日頃から学校生活の中で分別排出をしっかり学んでいます」(福岡市立大名小学校の金子武俊校長)

さまざまな取り組みの中で独自の視点を模索し実践している福岡市。その多彩な活動を束ねる言葉は「自主性」に他ならない。決められたからやるのではなく、地域を愛し、環境への心を育みながら、一人ひとりが身近な小さなことから主体的に行動することが基本となる。

「福岡式循環型社会づくり」はいま、平成22年度までにごみ量10%削減、リサイクル率30%以上引き上げ(共に平成12年度比)、という大きな目標に向かって着実に歩み続けている。