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「STEEL CAN AGE」Vol.10 吉田秀彦号

MY ANGLE

Vol.10 吉田秀彦号
2003年8月発行

−料理の鉄人が語る鉄鍋(中華鍋)の魅力−

鉄鍋の一番の特色は
自由自在です。

四川飯店オーナーシェフ
陳 建一さん
私は1956(昭和31)年生まれで、偶然ながら「鉄人28号」と同じです。子供時代に熱中して読んだのを覚えています。のちに「料理の鉄人」と言われるようになりましたが、「鉄人」とは不思議なご縁があるのかもしれません。

調理場は父の職場であり、子供時代から特別の場所でした。一歩調理場に入ると味と匂い、熱に加えて「音」の世界でもあります。炒める音のほか、今でも印象的なのは父がお玉で鍋をコンコンと独特のリズムで叩いている音です。実は音も味のうちで、要するに調理場は視・聴・臭・味・触の“五感の世界”です。私はそうした調理の世界に自然に引き込まれて父と同じ道に進みました。

陳建一さん 長年慣れ親しんでいる中華鍋は言うまでもなく鉄製で、その特色を私流に言うと、“自由自在”という表現が最も当たっています。最初に空焚きで熱してタイミングを見て油を入れると表面に膜がゆきわたって油のなじみがいい。適温の時に炒めるものを入れるといい音がして、おいしさにつながる。熱効率もよくて一度温まると冷めにくい。焦がす場合も、焦がす一歩手前も、その微妙な手加減が調整できます。耐久性もいい。うちの店では中華鍋が50〜60枚あり、毎日使い回して寿命はざっと10年程度です。自宅では1つの中華鍋を約30年使っています。四川料理は焦がす料理と言われて強火と関わりが深いのですが、その点でも鉄はもってこいです。

四川料理の中華鍋は直径39センチで、広東料理用の50センチより小さめです。これは四川料理が焦がす料理、広東料理が湯通しを多用するなどの違いから来ています。我々が使っている中華鍋は特別のものでなく市販されている中華鍋と同じです。一般の主婦の方などが中華鍋を使われる時のアドバイスをあえて一つ申し上げると、使い終わったあと、油分が残らないように丁寧に洗い、余熱で乾かして仕舞ってください。そうすれば長持ちします。

父の時代と違って、今は四川から香辛料など多くの食材が輸入できる時代となりました。その恵まれた条件を活かして日本にまだ伝えられていない古典的な四川料理を紹介していくことが今後の私の夢であり、課題です。

最後に、私の料理哲学は、お客様に喜んで召し上がって頂くことに尽きます。今後とも「心をこめて」をモットーにこの道を歩んでいきたいと思います。その時に思い通りに手足となって働いてくれるのが中華鍋であり鉄です。これは決して手放すことのできない大事なアイテムですね。(談)
「鉄鍋から溶け出す鉄分で夏を乗り切ろう」
鉄分は栄養要素として人体に欠かせないながら体内では生成できません。動物性および植物性食品にも含まれていますが、吸収率が比較的低い傾向にあります。そこで、ぜひ、おすすめなのが鉄鍋あるいは鉄のフライパンなどの利用です。これらで調理すれば、吸収のよい二価鉄が自然と溶け出すため、鉄分の摂取が容易となります。昔の人々が鉄分不足にならなかったのは、日常的に鉄鍋や鉄のフライパン、鉄瓶などを利用していたためであろうと言われています。特に鉄分が不足気味といわれる女性におすすめです。鉄鍋の利用で夏の暑さを乗り切ってください。
ちん・けんいち
1956(昭和31)年東京都生まれ。日本に初めて中国・四川料理を紹介しその普及に努めた父・建民氏と母・洋子さんの長男として誕生。東京中華学校、玉川学園(高校・大学)を経て、父が創業した四川飯店グループ入り。父の逝去後、四川飯店のオーナーシェフとなり、現在に至る。テレビ番組『料理の鉄人』『きょうの料理』をはじめ、CM、雑誌などマスコミ関係でも幅広く活躍。著書『中国野菜料理』『鉄人陳建一の中華料理』ほか。先般、NHKのテレビドラマで放映された「麻婆豆腐の女房」は陳さんのお母さんを主人公に、ご一家の実話をベースにしたストーリーで大きな評判を呼んだ。
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