ドイツ、フランスのリサイクル事情

ドイツなど欧州各国が古い町並みや歴史的景観を保存したり、ものや自然を大切にする姿勢、哲学には学ぶべき点が多い。そのドイツの環境政策における近年の最も大きな出来事は、「デポジット制」発動(2003年1月~)だ。本号では、欧州のリサイクル先進国であるドイツ、フランスの動きを2004年末のスチール缶リサイクル協会の実態調査を踏まえながら改めて考察し、「容器包装リサイクル法」(施行後10年経過)の見直し時期を迎えた日本の今後の進路を考えてみたい。

 

デポジット制が議論を呼ぶドイツ

ドイツでは2003年1月から、使い捨て容器に対する「デポジット制」がスタートした。この制度は、廃棄物の増加による処分場の逼迫、減少するリターナブル容器の保護を背景として1991年に制定、98年に一部改正された「包装廃棄物政令」に基づくもの(リターナブルが市場で72%を下回った場合デポジット義務を課す)(図1)。2003年1月以降、ビール、ミネラルウォーター、炭酸入り飲料のワンウェイ容器(使い捨て容器)に対して、1本あたり25セント(約35円)、1.5Lを超える容器には50セントのデポジット(預かり金)が課せられることになった。

デポジット制の狙いと課題

デポジット制とは、消費者がデポジット込みの料金で飲料を購入し、空の容器を店に返却すると払い戻しを受けられる仕組みだ。日本ではビール瓶でこの制度が採用されている。ちなみにリターナブル容器のデポジットは従来通り8セント(約11円)となっている。散乱防止対策として有効な制度であり、ドイツにおいては再利用可能なリターナブル容器の比率を高めることを狙いとしたものであるが、運用システムの未整備や市場の混乱もあり問題点も多い。

まず、指摘されるのは消費者不在とも言える制度の未整備による混乱だ。飲料の内容物によってデポジットの対象・非対象が決められ(ミネラルウォーターはデポジット対象で果汁飲料は非対象。そのためデポジットフリーを売り物にする果汁入りミネラルウォーターが発売されている)、当初は買った店でしかデポジットの返金が受けられず、結果として消費者は容器を返却できないという問題が生じた。この点は、後に同一容器ならどの店でも返金できるように改善されたが、さらに大手流通による法の網の目を抜ける「アイランド方式」が出てくるなど、消費者に負荷を強いる側面があるのは事実だ。

デポジット制の発動以降、ワンウェイ容器は多くの店頭から消え、高齢者やエレベーターのない集合住宅の住民の中には、重量の重い容器の購入を強いられていることへの不満もある。

ドイツでは、1991年に飲料・容器・素材メーカーなどの事業者によって設立されたDSD社(Duales System Deutschland)によるガラス張り(リサイクル証明の義務づけ等)で高品質な回収・リサイクルシステムが確立されていた。デポジット導入によって登場した小売店経由での回収システムは、小売店の手間や保管スペース等の社会的コストの増大のみならず、回収後のルートが不透明であるために資源ごみが中国へ輸出されたり一部が東欧などで不法投棄されているとの指摘や、リターナブル容器の返却率が低下するという思わぬ副作用など、環境負荷の面からも改善すべき点が多い。

産業政策的側面を持つ制度

以上のように多くの課題を抱えながらも、現実にはデポジット制は社会に定着しつつあるのも事実である。この背景として、ドイツ特有の経済的・文化的事情を理解しておく必要がある。

すなわち、東西ドイツ統一やEU誕生によって急増した外国産大手メーカーの飲料から、全国各地にある地場の中小飲料メーカーを守るという産業保護政策の側面を持っていることである。ドイツでは生産・消費が200km圏内であればリターナブルの方が環境負荷的に有利とされており、中小飲料メーカーの多くは実際に200km圏内で消費されているのに対し、外国産は輸送距離が長くリターナブルには適していない。

ドイツでは昔から地元産のビール(約1,200社)やミネラルウォーター(源泉地充填会社約235箇所)を飲む習慣があり、これらのほとんどがリターナブル容器で供給されている。この背景には、かつて約300の領邦国家がようやく1871年に統一されたドイツ特有の文化的・歴史的背景がある。例えば、ドイツ最大の商業都市デュッセルドルフでさえ、30km離れたケルンの有名なケルッシュビアすら売っていないのが現状だ。都市国家の歴史が長く、地域内完結的経済構造のため、輸送距離の短いリターナブルを優先するという考え方が受け入れられやすい土壌がある。デポジット制が発動された文化的背景でもある。

合理的な?フランス

フランスでは、1992年4月に、ガラス、紙、鉄およびプラスチック包装材の75%を10年以内にリサイクルする(焼却を含む)ことなどを定めた「家庭容器廃棄物法」が制定された。地域事情に応じた作業効率の観点から、収集は一般ごみ・容器包装共に市町村(約3万)が行い、市町村のリサイクル量に応じた支援を、事業者が「エコ・アンバラージュ社(EE)」経由で市町村に行う。自治体が分別収集を実施しているという点では日本に近い。また、ドイツのようなリターナブル優先政策はとられていない。

フランスでは、事業者からの支援額を決める際に環境エネルギー庁が市町村の容器包装の収集・処理コストの実態調査を行い、そのコストを理論的に分析している。この仕組みについて、フランス環境エネルギー庁のパスカルさんは「市町村にはなるべく効率の高い収集をするよう動機づけを進めています。支援額ばかり増やしてしまうと経済的な採算が合わないものまで収集して処理する行動に走ってしまう。余計なごみまでリサイクルせずに、焼却するなり処分場に持っていくなりして均衡のとれた体制にするのです」と、合理的な考えを示す。

EE社による市町村への支援は、リサイクルの広報活動や分別収集作業をする若者の雇用対策など多方面に渡っており、環境だけでなく社会のさまざまな問題と関係しているのも特徴である。また、フランスは飲料メーカーが全国ネットで、リターナブルのメリットが少なく、リターナブルがワンウェイに比べて環境負荷的に有利とは言えないことから、ドイツのようにリターナブルを優先する政策は採用されていない。

また、フランスでは実際のリサイクルにおいて分別排出が徹底されておらず、ガラス瓶以外は一括焼却して金属はその後選別される方式が主流である。缶などは焼却すると金属として品質が低下し、プラスチックや紙はサーマルリサイクルが中心となるが、その場合のEE社から市町村への支援額は少なくなる。市町村は財政事情や各地域の人口密度や保有する設備、さらに住民の要望などを総合的に勘案してどのような分別収集が最適であるかを選択している。その結果、焼却が中心になっているのは、高品質のマテリアルリサイクルにこだわらず、ある意味で合理的に割り切った結果とも言える。

一言で言うと、回収およびリサイクルに関して、ドイツは「高質で高コスト」、フランスは「低質で低コスト」だ。ドイツとフランスは昔から国境を接しながら異なる考えや文化を持つと言われているが、リサイクルに対しても同様である。ドイツやフランスに限らず、容器包装やリサイクルをめぐる問題は消費者の生活に直結した問題である。環境的な効果に加え、食の安全や消費者ニーズの観点からどのようなシステムが最適であるかは、それぞれの国の社会的条件によって異なるのは言うまでもない。

 

日本独自の循環型社会を

スチール缶を筆頭に、世界に誇る高いリサイクル率(図2)と異物混入の少ない高品質の分別収集システムが確立されている日本。デポジットや、強制的な国による再商品化義務量の設定等なしに、優れた循環型社会を構築していることは世界に誇ることができる事実である。また、安全・衛生に関して極めて高い意識を持ち、消費者のニーズに応えた多種多様の容器で商品が提供されている。「容器包装リサイクル法」の改正期を迎えた今、今後の日本が進むべき道はどのようなものだろうか。

日本で高品質の分別収集システムが育ったのは、道路が狭く建物の構造上ごみ箱を常設できず、回収時まで廃棄物を家庭内で保管していることとも関係している。ドイツの都市で生ごみ混入率が半分以上のところが多い一方、日本では容器はきちんと洗浄・分別されて家庭内に保管され、専用回収コンテナに生ごみを入れるケースはほとんどなく、家庭系資源ごみの品質は高い。

また、ある地域内で生産された商品は全国で消費されており(薩摩焼酎や灘の日本酒は全国で飲まれている)、ドイツよりはフランスに近い全国ネットの消費構造だ。

このような日本独自の社会を前提として望ましいシステムはどのようなものか、高齢化や食の安全など多方面の問題を考慮に入れ、社会と消費者に受け入れられる仕組みはどのようなものか、日本独自の視点に立って冷静に考えることが必要だ。

まず、「容器包装リサイクル法」施行後10年間で、いかに循環型社会の構築に貢献できたかという検証が必要だ。そのためには自治体の行政コストの推移や、消費者の分別意識、事業者の再商品化義務などがどのようにリサイクルの効率化につながっているのかを把握しなければならない。その際、消費者の意識や行動、自治体のコスト負担等に関するデータを提示した上で議論されることが望ましい。改正にあたってはさらなる循環型社会構築に向け、さまざまな視点から検討されることを願いたい。

「アイランド方式」とは

他の店で販売された容器の引き取りや返金を回避するため、独自の形状のワンウェイ容器(PETボトル)で販売する方式。大手ビール会社ホルステンでは、スーパーのチェーン名を埋め込んで製造できるPETボトルのビールを売り出したが、同社では「PETが必要だと思わないし、消費者も好んでいないがデポジット制への対応によるもの」と言っている。実際、PETは缶より製造費が高く、泡が抜けやすいので味も落ちるという。また、アイランド方式にはないものの、そもそもリターナブルPETは数回使用すると外面の疵が目立つため、日本人の美的・衛生感覚からすれば抵抗があるかもしれない。

こうした状況を受けて、アイランド方式を制限する改正政令が連邦政府で承認されようとしている。

あるスーパーで、週末にデポジットを受け取る人々の長い行列を見かけた。これを見ると消費者が最大の“敗者”である気さえする。フランクフルト・ルンドシャウ新聞のコラムでは、「使い捨てという消費者の便利さを妨げ、市民の不便さと引き換えにエコロジーを実践しようとしている」という意見も掲載されていた。

 

ドイツの専門家に聞く「LCAは慎重に扱うべき」

大事な視点として、包装政令制定1991年のドイツでは72%の高いリターナブル率が存在していたことです。一般世論また政治的に明確であったことは、リターナブルのシステムが環境面でべストであるというものでした。その当時は今のようなLCAはなく、感覚としてリターナブルを30回も充填して使えば原材料も少ないし環境面でいいだろうと思われたのです。LCAの欠陥というのはいろいろな環境の問題、CO2などエミッション、エネルギーの問題、それらすべてを考慮して環境調和度という結論を得るのが非常に難しいということです。LCAは慎重に扱うべきです。新しいLCAの調査では牛乳は、ワンウェイの複合パックが非常に良かった。なぜなら牛乳瓶の場合は8回から10回しか使われないからです。あき瓶の回収、運搬は非常に負荷がかかります。ドイツではいいワインが南西ドイツにありますが、ベルリンまで運搬されるのならリターナブルよりワンウェイのほうが環境にいいでしょう。

日本の場合は環境政策でも豊富な経験があり、非常に効率的な社会を築き上げておられる。大切なことは(包装廃棄物が)埋め立て場にいくのではなくリサイクルにまわることです。