缶の履歴書

缶の蓋は、密封性を確保するだけではなく、腐食、変色、錆などから内容物の品質を守るために不可欠だ。缶詰が登場してから長らく缶切りや穴あけが必要だったが、その場ですぐにあけることができて飲んだり食べたりしやすく、安全かつ環境にも配慮した形状が開発されてきた。缶詰には食品用、飲料用とあるが、特に飲料缶の隆盛は、こうした蓋の発明によるところが大きい。今回は何気なくあけて飲んでいる飲料缶の蓋について紹介する。

穴あけ器具を不要にした「イージーオープン蓋」

1804年、缶詰製造の原理が発明され、1810年にはブリキ製の缶詰が登場した。缶詰は金属容器を使用しているため長い間、穴あけの器具が必要だった。

特にビール缶や炭酸飲料缶などは高い缶内圧に耐えるため、蓋には硬くて厚いブリキを使用しており、特別の穴あけ器具が必要だった(写真1,2)。飲料のような液体は、穴を一つだけ開けても液体が出てこない。注ぎ口の反対側にもう一つ空気用の穴をあけることで、空気に押し出されて飲料が出てくる。しかし缶切りの扱いに手こずり、うまくあけられない人もいて“液が噴き出す事件”がしばしば起きていた。

現在の飲料缶のように、蓋に「スコア」(切れ目)を入れて「タブ」(取っ手)を起こしてあける「イージーオープン蓋」は、1963年にアメリカのアルコア社で開発された。日本では、1965年にリップタブをつけたビール缶が登場した(写真3)。

「イージーオープン蓋」では穴が大きくあくため、穴の上部から空気が入り、下部から中身が注げる仕組みになっている。当初はリップ状だったタブも、1967年にリング型が登場すると、よりあけやすくなった(写真4)。

この方式の蓋では、飲料缶を開けた後に開口片が切り離され、ポイ捨てによる散乱を招き、砂浜で怪我をする人や鳥が飲み込むといった事態が発生した。その解決策として登場したのが開口片が切り離されないSOT(ステイオンタブ)蓋だ(写真5)。現在は飲料用のほとんどの缶に使用されている。SOT蓋は、1974年にアメリカで開発され、1990年に日本でも採用され始めた。日本では陽圧缶用(炭酸飲料缶やビール缶のように缶内圧が大気圧より大きい缶)をもとに、陰圧缶用(コーヒー缶やお茶缶のように缶内圧が大気圧より小さい缶)にも適用できるよう改良された。

このほか、1970年代には一時期、指で飲み口と空気用の2つの穴をあけるプッシュイン蓋が採用されたこともあった(写真6)。

可能性を高めるキャップ付きスチール缶

2004年、高温・高圧のレトルト殺菌と打検が可能なキャップ付きのスチール缶が登場した。陰圧缶を進化させ、先端の飲み口を曲げ加工することで口当たりがよく飲みやすくなっている。

現在、最先端にあるキャップ付きスチール缶だが、すべての缶がこれに置き換わるわけではなく、それぞれの飲料に適した缶、蓋が選択されている。

 

いろいろな形の食料缶

こうした飲料缶のほかにも食料缶には魚や果実の缶詰などさまざまな缶があり、蓋の形もバラエティに富んでいる。大きく分類すると「丸蓋」「角蓋」「異形蓋(オーバル缶)」などがある。食料缶用に採用されているのは蓋の全周にわたって開口するフルオープン蓋で、飲料缶のように蓋が部分的に開口するものは、パーシャルオープン蓋という。

蓋についてのお願い

「タブを切り離し集めて寄付をすると車椅子がもらえるという話がある」というお問い合わせがありますが、そういったことは全くありません。タブは散乱防止のため取れないようにしてあります。切り離さず缶ごと収集することが再資源化につながります。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。