米村でんじろう(サイエンスプロデューサー)

例えば、命の大切さを訴える映画で、ストレートに「人間の命は大切なんだ!」と主人公が連呼していたら、嘘っぽくて見ていられません。感動を呼ぶ映画は、直接言わなくても、物語の面白さに引き込まれていく中で自然に伝わるものです。でも、環境保護を子供に伝える催しものの多くは、司会のお姉さんが「おうちに帰ったら、お父さんとお母さんと、地球のために何ができるか考えてみましょう!」と、ストレートで教育的過ぎます(笑)。子供心に最初から結論が見えてしらけてしまいます。

温室効果ガスを例にすると、いきなり「地球のために何ができる?じゃあ、電気を無駄遣いしないようにしよう!」と大人は言います。そう言われても興味が沸きませんし、強制的に言われたことは定着しません。遠回りに見えても、二酸化炭素は空気の一部だから、空気は何でできている?どれくらいある?重さは?など、まず空気そのものの面白さを知ることで、地球が微妙なバランスでなりたっていることがわかり、自分から環境を大切にする気持ちが沸いてきます。

スチール缶のリサイクルも子供の心を動かすのは、映画の『もののけ姫』に出てくる「たたら」のように、鉄を作らせてあげることが一番だと思います。鉄を作るのは難しくて大変なことですが、自分で体験すれば、鉄がどのように作られているか、人間がどんな苦労をして鉄を使えるようにしたか、薄いスチール缶を作る技術、再利用できることなど、いろんなことに興味が沸きます。

興味がないところに「缶のリサイクルに協力しましょう」と伝えるだけでは、ただのお説教になってしまいます。

子供の頃、学校の世界史で、鉄を手に入れた人間の文明はあっという間に青銅から鉄の時代になったと習ったとき「そんなに鉄が強いなら比べてみよう」と思い、青銅のナイフを作ってリンゴの皮をむいたり鉛筆を削ったりしました。青銅もよく切れましたが、もろくてすぐ欠けてしまい、鉄のように自由な形を作ることができないこと、強くないことを、楽しみながら知りました。

イソップ童話の『北風と太陽』の話と同じで、無理やり強制したり説教臭いことを言っても、人はまともに受け取りません。でも楽しませてあげることで自発的に行動してくれます。僕がやっている科学の楽しい実験も、環境やエネルギーなどの大切な問題に必ずつながると思っています。大上段に「環境問題」を述べるのでなく、楽しませてあげて身の回りの科学を体験することから、自然に環境を大切にする意識が育つと思います。

子供たちと一緒にスチールのあき缶をたくさん集めて銑鉄状態にして鐘を作るなど、スチール缶のリサイクルを体験できたらいいですね。スチール缶何万個で作った鐘の音が学校で時を知らせる。そんな鉄の楽しさを知るイベントをやってみたいです。(談)

●写真は、科学技術館(東京)5階ワークススペース「科学教室」での実験“空飛ぶ電気クラゲ”の様子。ビニールひもで作ったクラゲと風船に静電気を起こすと、マイナス電気同士が反発しあい、ビニールひもがまるでクラゲのよう宙に浮く。

 

●科学技術館とは、科学技術や産業技術を、見たり触ったりして楽しみながら体験できる施設。科学技術や産業技術を広く普及・啓発する目的で財団法人日本科学技術振興財団によって設立された。
http://www.jsf.or.jp/