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「STEEL CAN AGE」Vol.19 白井貴子号

Vol.19 白井貴子号
2008年2月発行

売れるものばかりを追い続けていたら、
人間の心や体が貧しくなるし、
地球も傷ついてしまう。

白井貴子(ミュージシャン)

現在、神奈川県の環境大使、環境省の3R推進マイスターにも就任されているミュージシャンの白井貴子さん。白井さんが環境のことを考えるようになったのは、自分の生活を足元から見直そうと思ったことがきっかけだったそうです。

白井貴子さん 環境大使にまで選んでもらったのは、ひょうたんからコマみたいなお話しで(笑)。身近なことをチョコチョコやっていただけなんです。環境を意識し始めたのは、生活を見直そうとロンドンに行ったことがきっかけです。20代後半の頃、自分の作る音が受け入れられず、ビジネス優先の音楽に疑問を感じたりもして、自分を責めたり他人のせいにしたり、心も体もボロボロになった時期がありました。そんなとき、レコーディングで訪れたロンドンで、野生のマーガレットが目に止まったんです。葉はギザギザでワイルドなんだけど、花は可憐で凛と空を見上げていて。なんだか、本当の自分が咲いているような気がしました。売れることばかりを考えて疲れ果てている私の音楽をみんなが聴いてくれるわけがない。私や私の音楽を育てるのは消費文化じゃなくて、大地に根をはって健康で豊かに生きることじゃないかって。それで音楽活動を停止して、足元から生活を見直そうとロンドンで暮らし始めました。

イギリスは大好きなビートルズの国、ポール・マッカートニーの奥さんの亡きリンダさんが自然を愛して暮らした緑豊かな国、そんなイメージを持っていました。でも、かつては産業革命で自然が破壊し尽くされた場所なんですよね。ロンドンのハイドパークは森を壊した後に作ったものだし、広大な牧場は、定期的に牛肉を消費できるように雑木林を開拓したものだし。でもだからこそ、自然を壊してしまったという意識や自然を大切にしようという思いが根付いていて、ロンドンにはオーガニックの野菜もたくさんあり、古着やアンティークが大事に使われていました。食べるものや着るものなど、自分を大切にするようになったら、身の回りの環境や地球環境のことを自然に考えるようになりました。

白井さんデザインのリサイクル陶器 そんな生活から日本に戻ってきたら、まだ着られそうな服が大量にごみの日に捨ててあるし、引越しセンターにはお客さんが置いていったたくさんの机や棚が不要品として置いてあるし、「この国はおかしいんじゃないの!」って怒りの気持ちが込み上げてきました。それからですね、意識してごみを拾ったり、移動に自転車を使うようになったのは。でも私がやっているロックミュージックは、自然よりも都会、素朴よりもかっこいいもの、社会的よりも反社会的なイメージがあるので、初めは「どうして貴子が環境活動なんてやっているの」と言われ、やってもやっても焼け石に水、全然伝わりませんでした。けれど、私が大好きな海外の偉大なミュージシャンたちは、自然の恵みの大切さや愛と平和を伝えてくれました。だから私は、エコはロックの魂の一部だと思っているし、私もミュージシャンの一人としてできることをやり続けたい、伝え続けたいと思っているんです。

ここ1〜2年で、社会的な流れもあって、ロックと環境問題は少しずつつながってきました。目に見えるところでは、野外ライブでごみを出さないようにしたり、CDを包む袋に再分解性のビニールを使うことができたり。ここまで来るのに時間はかかったけれど、でも、私は人間の知恵や意志に可能性を感じています。そして、今こそロックサウンドに乗せて地球の素晴らしさを伝えていくぞと、思いを新たにしています。
: PROFILE :
1981年デビュー。「CHANCE」のヒットから女性ポップ・ロックシンガーの先駆者的存在に。1988年ロンドンへ移住。2003年TBSラジオ環境キャンペーンテーマソング「美しい地球」を発表。2004年、外務省主催イベント「アフリカンフェスタ」をプロデュース、テーマソング「BAOBAB」を作曲、後に愛・地球博市民パビリオンのテーマソングとなる。その他、多くの環境活動に携わる。2006年、デビュー25周年を機にTAKAKO&THE CRAZY BOYSの活動再開。2007年2月、神奈川県初の環境大使に就任。5月、環境省「3R推進マイスター」就任。環境問題や国際交流イベントにも多数出演。常に新しい世界へとリードするメッセージを投げかけ続けている。
●白井貴子&THE CRAZY BOYS 復活第1弾ニューアルバム「地球-HOSHI-」2月6日発売
http://www.takako-shirai.jp
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