環境学習の一環として集団回収に取り組む小学校
集団回収活動 最優秀校5校レポート

昨年、スチール缶リサイクル協会が募集した、「集団回収を通じて優れた環境学習に取り組む小学校」の継続活動最優秀校に5つの小学校が選ばれた。いずれの学校も、実践的な集団回収などを通じて、多角的な環境教育に熱心に取り組んでいる姿勢が伺え、環境教育を実践する先生とそれを積極的に取り組む児童の間に、「地球のためにできることをやろう」という思いが、徐々に芽生えてきている。今回のメイン・レポートでは、最優秀校に選ばれた5校の活動概要を紹介する。

緑いっぱいの自然を守るため、地域住民と一体となった活動を展開
—和歌山県有田川町立小川小学校

和歌山県有田郡有田川町。ミカン畑に囲まれた自然豊かな町に有田川町立小川小学校はある。小川小学校は1996年度より学習指導要領の履修内容を先取りし、各教科において環境教育を実践してきた。学校のすぐ横を流れる河川の汚濁が年々目立つようになったこともあり、学んだ知識を実践で活かす場として河川の清掃活動が行われるようになった。同時に集団回収も開始し、2006年度からスチール缶も回収品目に加えられている。

また、2004年度より児童会の呼びかけで各学期に1回(年3回)「クリーン大作戦」を展開し、学校、保護者、地域住民が一体となった美化活動を行うようになった。学校から地域住民へと広がった活動の輪について同校の内田敏夫校長は語る。

「夏休みに行われるラジオ体操が地域住民との連携意識を高める好機となっています。小川小学校は校区が広いため、校区内6カ所に会場が設けられていますが、夏休み中3回清掃活動が行われ、参加した児童と住民の交流によって美化意識への一体感が生まれています」

協会からの支援金で購入したあき缶の保管庫は校門近くに設置され、近隣住民からの排出も学校で受け入れている(写真1)。

さらに現在、児童と保護者、地域住民が主体となる取り組みとして、内田校長を発起人とする「緑いっぱい小川っ子推進団」を組織し、「緑育」に力を入れている。児童たちが苗を鉢で育て、校庭一面を芝生にする計画だ(写真2)。

「校庭一面を芝生にすると、散水などのメンテナンスだけでも多大な費用がかかります。しかし地域住民の協力を得て近くに井戸を掘削し、その水を使わせていただけることになりました。教員と児童だけの学校でなく、『地域コミュニティの基地』として今後展開していけたらと考えています」(内田校長)。

環境教育において、主導する教員の転任により活動が途絶えてしまうケースが少なくない。しかし校庭に生える芝生のように、地域ぐるみで環境教育を根付かせようとしている小川小学校ではその心配はなさそうだ。

集団回収を通じて「人の役に立つ」喜びを実感
—明石市立二見西小学校

兵庫県明石市の西部に位置する明石市立二見西小学校では、4年生の社会科でごみ問題を学び、市内の明石クリーンセンターを見学する。5、6年生では国語、理科、社会、家庭科などの各科目を通じて世界の環境問題や生物保護の事象を学んでいる。

同校では、福祉の総合学習で養護学校や老人養護施設を訪問した際、体の不自由な人のために車いすを寄贈したいという願いから、集団回収による資源売却金を車いすの購入費に充てる計画を立てた。その後学校はリサイクル委員会を設立し、委員会の児童が中心となり、全校生徒に資源回収の協力を呼びかけている。

集団回収の対象品目は多く、スチール缶、アルミ缶の他に、紙類は段ボール、新聞紙、雑誌、紙パックに分別されている。あき缶は今回の支援金で購入した金属製の回収ボックスで集められる(写真3)。それらの回収物は、月1回業者が引き取りに来るが、その際にはリサイクル委員会の児童を中心に、あき缶をボックスから移動し、体育館横の指定集積場所に多くの紙類とともに排出する。同委員会では、その他にも啓発用のポスターを作成したり、劇やクイズを通して分別回収の周知を促す取り組みも行っている。さらに各教室には明石市から支給されたリサイクルボックスが設置され、主に書道の時間で出た半紙などが回収されているが、こうした設備が児童の身近な場所に設置されていることもリサイクルや分別排出の意識を高める一助となっている。

集めた資源の売却金で車いすを購入したときのことを、集団回収担当の宮野奈津美先生は振り返る。

「福祉の総合学習の一環として、体の不自由な人たちのために車いすの購入を決めたとき、募金で費用を集める方法もありましたが、リサイクルで集めた資源の売却金で購入することにしました。実際に自分たちの集めたものが目に見えて人の役に立ったことを児童たちは実感でき、これは非常に大きな意義がありました」

最後に、同校谷口恵教頭は今後の環境教育への抱負を語った。
「環境保全のために、あれもダメこれもダメという考え方ではなく、こうしたらよりよい環境が生まれるというプラス志向が必要だと思います。未来のために新しい発見ができるような夢のある環境教育を実践していきたいと思います」

地道な活動が着実にリサイクル文化を醸成させる集団回収を通じて
「人の役に立つ」喜びを実感
—北九州市立中井小学校

北九州市立中井小学校は、今回最優秀校に選ばれた5校の中で最も早い時期(1990年)から集団回収に取り組んでいる。開始当時には教室1室を開放したリサイクルルームを設け、磁石によるスチール缶とアルミ缶の選別と、新日本製鉄(株)八幡製鉄所より贈呈されたあき缶プレス機での圧縮を行っていた。その後、児童数増加に伴う教室不足のためリサイクルルームは閉鎖されたが、磁力選別とプレス機での圧縮はその後も継続された。

現在のあき缶リサイクルの指導方針について同校の今泉義昭校長は語る。
「あき缶を分けて潰すだけではリサイクルの重要性を理解できません。環境ミュージアムやエコタウンなどの施設見学(写真4)を通じてリサイクルについて詳しく知ってもらうことが重要です」

中井小学校では5、6年生の児童たちでリサイクル委員会が結成されている。環境問題をどのように考えているか委員会の児童に話を聞いた。

「受賞してから、家族が『あき缶がたまっているから学校に持っていくね』とかちょっと協力的になったような気がします。また、身の回りにあるリサイクル製品を見て『こんなものに生まれ変わるんだ!』とびっくりすることもあります。これから大人になると買わなければいけないものが増えてくるけど、そのときに捨てるものが増えないように、ものを長く大事に使っていきたいです」(委員長 坂口由奈さん 6年)。

「受賞して、まわりでごみ拾いをする人が増えたと思います。ぼくは大人になってもごみ拾いを続けていきたいです」濱田達朗くん 6年)。

「ごみ拾いをすることで、ちょっとでも地球温暖化やごみ問題を防げると社会科の授業で教えてもらいました。ごみ拾いをしていて『これもなにかに使えるのかな?』と思うときもあります」(委員会書記 上村健太くん 6年)。

リサイクルが日常生活の一部となりつつある今、集団回収への思いを今泉校長は語る。
「本校では約20年もの間、決して大々的ではありませんでしたが集団回収を日常的に行ってきました。無理することなく地道に、しっかりと継続していくことが大切です。環境について考えるとき、私たちに何ができるかを語るのではなく、何をしたかが大切なのではないかと思います」(今泉校長)。

 

3Rに根ざした環境教育で住みやすい町づくりに貢献
—北九州市立八幡小学校

1878(明治11)年に創立された歴史ある北九州市立八幡小学校は高台に位置し、校庭からは同校の校区である東田地区を一望できる。

八幡小学校では3年生から、児童が育てた花を地域の公共施設に植える「花いっぱい活動」と称した環境教育がスタートする。そして4年生では「地球を守る3R大作戦」として年間46時間のカリキュラムを実践している。

リデュースでは校内の水道・電気の使用量や給食の残菜量を調べ、校内放送や新聞掲示により全校生徒に節約の呼びかけを行った。リユースでは使用済みのペットボトルやフィルムケースを、図画工作や理科の学習で再使用している。リサイクルに関しては、2006年6月に校外学習で訪れた市の環境局の処分場で、北九州市の最終処分場の残余期間が13年であることを知らされ、これを機にリサイクル運動を開始し、あき缶の集団回収を始めた。最も目立つ中央玄関に回収ケースを設置している(写真5)。

当初は校内だけの活動だったが、現在では地域を巻き込んだ大々的な活動に発展してきている。校区でのポスターの掲示から、児童が書いた手紙を回覧板で回すなど自主的な活動を展開するほか、近隣の大手コンビニエンスストアなどの賛同を得て店内に回収ボックスを設置している。同校教務主任の井津京香先生は八幡小学校の環境教育について語る。

「3年生からスタートした環境教育は、4年生で3Rを学び、5、6年生では学習したことを発展させ、環境と福祉両方の観点から、より住みやすい八幡の町づくりを目指して、学校での取り組みを地域に発信していきます」

1また理科専科の松村修治先生は児童への期待を次のように述べる。
「集団回収は資源を集めること自体が目的ではありません。その先にある目的を見据えて、環境教育から学んだことを生活の中で実践していってほしいですね」

八幡小学校はこれまでに4台の車いすを購入し、社会福祉協議会に寄贈している。昨年度、換金したお金で2台目を購入しようとした際、金額が足りず次年度に持ち越そうとしたが、「新品の必要はない。お金が足りないなら中古でもいいから1台でも多く寄贈したい」と言う児童の声を松村先生は聞いた。環境教育で培った“地球を思う気持ち”が、福祉の“人を思う気持ち”へと確実に結び付いている。

 

卒業生の思いを引き継ぎ、集団回収を牽引する先生と児童たち
—北九州市立鴨生田小学校

北九州市立鴨生田(かもうだ)小学校では、1年生から環境学習に関わっている。低学年時から校内ビオトープ(※)(写真6)を利用して生活科の授業を行い、その他も田植えやサツマイモ掘りなど6年間を通じて自然や生物と触れ合う環境を整えている。
※ビオトープ(Biotop):「生物の生息空間」を意味するドイツ語

2004年度に当時4年生だった児童が、エコタウンなどの社会見学を経て「何か自分の身近にあるものでできることはないか」とあき缶リサイクルを申し出た。その後この取り組みは3年間続いたが卒業と同時に後継者がいなくなったため、学校は「環境委員会」を設立。5、6年生の児童から委員を選ぶ仕組みで集団回収の灯を絶やさずにきた。

環境委員会を見てきた同校教務主任の永岡良介先生は語る。
「当時の4年生が卒業して、やや活動の熱が冷めていた感じがありましたが、今回の受賞で児童たちのモチベーションも上がっており、再びあき缶回収の熱意が高まってきたように思います」

環境委員会に所属する児童に話を聞いた。
「お昼の放送で呼びかけたりすることで、あき缶の回収量は増えてきています。今回受賞してさらにたくさん集まるようになりました」(小牟田涼くん 6年)。

「ペットボトルのごみを出さないように、水筒を持ち歩いたり、使わない電気は消したりと普段の生活でも気をつけていきたいです」(野口達矢くん 6年)。

鴨生田小学校では支援金であき缶を入れるカゴとプレス機を購入した(写真7)。児童たちにはスタンプカードが配られ、学校にあき缶を持っていくとスタンプを一つ捺印してくれる。これを規定数ためると児童手作りの賞状がプレゼントされ、特に低学年の児童の間で人気を呼んでいる。最後に同校古賀茂雄校長は児童たちに期待を寄せる。

「昨今、テレビでは環境に関する番組が多数放送されています。そういった膨大な情報の中から、まず自分の生活に関係のあるところをきちんと見つめて改善できる人になってほしいと願っています」