富山県は、全国で初めて、2008年4月1日から県内全域でスーパーマーケットなど小売業においてレジ袋の無料配布取り止めを実施している。開始から約1年が経過した現在、大きな混乱もなく、順調にその成果をあげている。レジ袋の枚数削減に寄与するだけではなく、温暖化防止やごみ減量化など消費者の環境配慮への意識向上にもつながっている。
今回はレジ袋の無料配布取り止めを実現した「富山県レジ袋削減推進協議会」の活動を中心に、これまでの取り組みを紹介する。

市民団体の熱意と行動

今、全国各地でレジ袋の有料化に伴うマイバッグ推進運動が展開されている。富山県では10年以上前から、省資源・省エネルギーなどを推進するため、県内の婦人団体、消費者団体などの市民団体によりマイバッグの持参運動が行われてきたものの、普及率は10~20%に過ぎなかった。

こうした中、京都議定書の議決以降、富山県でも民生分野でのCO2排出増加に対する問題意識が高まり、レジ袋の削減を求める声が上がってきた。レジ袋の削減を進めていくためには、商品を販売する事業者(以下事業者)と行政の協力が不可欠だ。熱意ある市民団体から県に対し、話し合いの場を設けてほしいとの要請があり、県が県内で食品などを販売するスーパーマーケットに参加を呼びかけ、2007年6月「富山県レジ袋削減推進協議会」が発足した。

事業者の英断と行政のフォローアップ

同月に第1回協議会が開かれ、事業者10社、1協同組合、6消費者団体と行政が参加し、今後の協議事項や進め方などについて議論した。富山県環境審議会会長で協議会の会長を務める富山大学の宮下尚名誉教授は当時を振り返る。

「第1回目の協議会は、石井隆一県知事をはじめ環境問題に関心のある関係部署の方々にも参加いただき活発な議論を行うことができました。また、以後の協議会においてその様子は終始マスコミを通じて県民に知らされ、一人ひとりのこれら活動の理解の促進や環境保全意識の向上につながったのではないかと思います」

1回目の協議会では、できるだけ早期の無料配布取り止めを事業者に訴えたが、事業者からは売り上げ減少や店舗の負担増などを心配する声が相次いだ。しかし、その後の協議会で議論を重ねる中で、事業者の発案により、県民へ向け、「なぜレジ袋を削減する必要があるのか」など根本的な考え方を明文化し、県民へのメッセージとした「レジ袋削減の理念」を取りまとめた。さらに、消費者団体と行政がレジ袋の無料配布取り止めを粘り強く事業者に要請し、次第に理解が得られ、機運の高まりとともに自ら参加を希望する事業者も増え、11月に開かれた第4回協議会で事業者は無料配布取り止めを実施する意向を表明した。

これを受けて行政は、翌2008年1月から3月までを普及啓発期間とし、レジ袋削減の意義などを幅広く県民にPRした。内容は

  • 1.シンポジウムの開催(県内4会場で実施、約800人が参加)、
  • 2.テレビ、ラジオなどによる広報活動、
  • 3.各種団体の会合での出前講座(約40回、約1,500人)、
  • 4.普及啓発資材の作成・提供など。

資材に関しては、チラシ・ポスター・店頭にディスプレイするのぼり旗などを作成し、事業者へ提供した。またチラシは県内約37万2,000世帯に全戸配布された。無料配布取り止め当初から、これらの活動に携わってきた県生活環境文化部環境政策課の藤谷亮一さんは語る。

「市民団体の強い熱意に始まり、大きな決断をされた事業者、そして市民への普及啓発など、徹底したフォローアップに努めた行政。これら活動を進める上で大切なのは“一緒にやりましょう”という雰囲気で、ともに実行していくことだと思います。こうした『協働』の意識づけがこの種の取り組みには大切なのではないかと思います」

2008年4月1日、ついに全国で初めて富山県全域でレジ袋無料配布取り止めがスタートした(写真1)。レジ袋削減推進協議会では、4~5月の各店舗での取り組み成果をまとめ、6月には、実践事例発表の場を設けるなど、ここでも迅速なフォローアップを行った。さらにマイバッグ持参を子どもたちなど幅広い年齢層にも定着させるため、翌7月にはマイバッグデザイン・アイデアコンテストを開催したところ、3,500点を超える作品が寄せられ、県民の環境意識の高まりが見られた。

 

環境意識の高い事業者の活動例  「ボランタス協同組合」

多くの事業者が無料配布取り止めに慎重だったころ、富山県内の16企業55店舗で結成する「ボランタス協同組合」は、第1回協議会から積極的だった。この組合では加盟店のレジ袋の配布を前年度比で15%削減するという目標を掲げて独自のレジ袋削減運動「Yes Mottainaiプロジェクト」を2007年から展開しており、オリジナルのマイバッグを製造し、その販売数やそのディスプレイ方法、レジ袋の削減率などを競うコンペを実施している。プロジェクトリーダーの山岸さんは語る。

「最初に確固たる理念を持つことが重要です。レジ袋は有料化ではなく無料配布の取り止めを目指しました。それが消費者からも理解を得られたように思います。プロジェクトは一昨年からスタートしましたが、まずは全企業・全店舗の意識統一を図る仕組みづくりに注力し、その情報や成功事例を共有できるようにコンペの形態にしました」

富山が誇る活動の輪を全国に

レジ袋無料配布取り止めをスタートしてから約1年が経った現在、富山県のマイバッグ持参率は92%にまで達し、レジ袋1億3,000万枚、ドラム缶約1万2,000本に相当する石油を節約したことになる。2008年6月に実施した、消費者を対象とするスーパー店頭でのアンケートによると、レジ袋無料配布取り止めに賛成と答えた人は70%、また、「今後、環境にやさしい行動に取り組もうと思うか」という質問には、「思う」と答えた人が80%で、取り止め以前に行ったアンケート結果の数字を上回った。

「マイバッグ持参の定着化は、県民一人ひとりに着実に浸透してきていると感じますが、未実施の事業者があるのも現状です。今後はそのような事業者への参加の呼びかけと合わせ、コンビニエンスストアなど他業種にまで取り組みの輪を広めていきたいと思います(図)」(藤谷さん)。

 

一方で、消費者のお買い物マナーの向上にも取り組んでおり、「マイバッグは折りたたんだままお買物をしましょう」、「マイバッグを使うのはレジを通ってから」などお買い物マナーの心得を明記したチラシを作成している(写真2)。マイバッグ持参が当たり前の社会の実現に向け、消費者、事業者ともに気持ちよく買い物ができる環境の整備が必要となる。

こうした取り組みは、他の自治体への先進的事例として大きな注目を集めている。最後に宮下会長は今後の抱負を語る。

「富山県民の真摯な取り組みの輪が全国へと波及し、潮流となっていくことは大変喜ばしいことと思っています。ただ本来の目的はレジ袋を減らすことではなく、地球温暖化防止のため温室効果ガスを減らすことです。レジ袋の削減をきっかけに、生活スタイルを環境にやさしいエコライフスタイルに変えていく。全県民が一致して環境意識をさらに高め、この大きな目標に向かっていけるよう引き続き活動してまいります」