容器包装3R、ごみ問題に向けた協働のあるべき姿とは

将来の低炭素社会、循環型社会形成に向けて、3R(リデュース、リユース、リサイクル)はどのような役割を果たせるのか。今回は、長年ごみ、廃棄物問題などに携わる方々にお集まりいただきお話を伺った。またその中で、今後の取り組みにおいて鍵となる「協働」の意義、重要性について語り合っていただいた。

出席者(氏名五十音順)
江尻京子氏ごみ問題ジャーナリスト
杉山涼子氏(株)杉山・栗原環境事務所
藤波 博氏(財)廃棄物研究財団 調査部長
山本耕平氏(株)ダイナックス都市環境研究所 代表取締役所長
酒巻弘三 スチール缶リサイクル協会専務理事

近年のごみ、廃棄物問題

■酒巻 本日は、ごみ、廃棄物、3Rなどの分野を通じて環境問題に造詣の深い方々にお集まりいただきました。皆さまはごみ問題などに長年携わってこられましたが、現在までの歴史を振り返り、これまでの成果や継続して取り組むべき課題などについてお話しいただきたいと思います。

■藤波 1980年代後半から、私は川口市(埼玉県)環境部で廃棄物政策を担当していました。この時代は都市部で発生した廃棄物が増大し、地方で不法投棄、不適正処理される問題が相次ぎ発覚しました。また、行政としてごみ減量化のために広報活動を大々的にやったことを思い出します。その後個別のリサイクル法ができ、さらに循環型社会形成推進基本法が施行され、今では多くの関連法律が整備されていますが、自治体がリサイクルを始めた理由は、ごみの最終処分場、埋立地の残余期間を延ばすためということでした。

■山本 現在も多くの自治体が最終処分場についての問題を抱えていると思います。処分場建設の是非や、また建設することになった場合の立地などの問題がありますね。

■杉山 リサイクルにしてもごみ処理にしても、誰がお金を出しているのかという「コスト意識」があやふやになっている気がします。「お金を払っているんだ」という事実を市民が理解することが重要だと思います。家庭ごみの有料化を例に出せば、日本では“ごみ減量のための有料化”ということが強く認知されていますが、各自が責任を取る仕組みが定着していれば、毎月の光熱費や水道代と同じような感覚で料金を負担すると思います。

もう一つ、拡大生産者責任(EPR)により矛先が自治体から企業に変わり、消費者は企業が処理の責任を負うべきだと思い込んでしまう傾向があります。最終的に誰がどういう形で負担するのが最も良いのかを冷静に議論していく必要がありますね。

■山本 容器で言えば、中身メーカーが容器を決めるのだから一義的に中身メーカーに責任を負わせ、市場原理を通してリユースあるいはリサイクルしやすい容器に転換していこうというのが、EPRの本来の狙いですよね。

容器包装リサイクル法(容リ法)の検討過程では、旧厚生省も当初はそのような考え方に立っていたと聞いています。しかし容器メーカーと中身メーカーが責任をシェアするという形になった。関係する企業がごみ問題の責任をシェアするということ自体は悪い考え方ではないと思うし、容器メーカーも中身メーカーもそれぞれの立場で容器の問題を考え、取り組むようになったことは評価できると思います。しかし一方では、なあなあの関係を引きずり責任をあやふやなままにしていると言えないこともない。あやふやな部分をもう少し明確にして、その上で適切な責任の分担と協力関係を考えていくことが次のステップでは重要になってくるでしょう。

■藤波 EPRの導入については、消費者と自治体の関係に事業者を結びつける狙いもあったと思います。この概念により問題を各主体間でシェアするという考え方が出てきましたし、製品のライフサイクルの最適化が図られるようになってきました。法整備も一巡し、最終処分量も安定してきている今の日本では、発生抑制・再利用・リサイクルの3Rを中心に循環型社会の構築に向けて動いていくでしょう。さらに「低炭素社会」というキーワードに対して、私たちはどのような役割を果たせるのかを考え、評価していかなければならない時代に来ていると思います。

 

容リ法から十数年。大きな成果をあげたリサイクル

■酒巻 ごみ、廃棄物問題は「3Rが中心」というお話でしたが、その中でリサイクルについてはどのようにお考えでしょうか?

■藤波 1995年に容リ法が制定されてから十数年が経ちました。リサイクルは安定してきたと評価していますが、自治体の分別収集によっては異物混入量に差があります。原因を分析してみますと、自治体の分別精度は、排出する側、つまり市民への啓発レベルの差にあることが分かりました。今後もリサイクルをきちんと評価した上で、強みと弱みを整理しながら、リサイクルのレベル、効率を上げていくことが必要だと思います。そのためには容リ法の見直しも必要でしょうね。

■江尻 私が活動している多摩地域(東京都)では、最終処分場の問題もあり、自治体が処分場へ運ぶごみの量をいかに減らすか注力してきました。そのおかげで早期から高いリサイクル率を維持していますね。

最近市民の皆さんから分別排出に関する初歩的な質問を受けることがよくあります。市民に対してもう少し“分かりやすい”啓発が必要だと感じます。行政は制度や仕組みを作るのと並行して、市民レベルでの情報提供も強化していかないといけない。いざ事が動き始めたときに市民が付いていけないということは避けたい事態です。

■杉山 ヨーロッパでよく見られる資源回収で、街頭に設置した大きなコンテナに、いつでも好きなときに入れるという方法があります。新聞、雑誌、段ボールにそれぞれ分別してひもで縛って…… という日本のスタイルを見慣れているので、正直違和感がありますね。日本の集団回収もそうですが、決まった日の決まった時間にきちんと排出するというのはみんなが協力しないとできないこと。その蓄積された結束力は、社会の力として非常に大きいものだと思います。

■酒巻 藤波さんが自治体によるレベルの差を指摘されましたが、スチール缶スクラップに関しても、質の良い所と悪い所の差があり、受け皿となる鉄鋼メーカーでも苦慮しています。これは自治体と事業者が一緒になって、市民に向けて普及啓発していく必要があります。

■藤波 確かに自治体だけでやるのは難しいですね。自治体がモデルケース的に実施するにはうまくいくかもしれませんが、社会全体でやったときに色々な問題が出てきます。スチール缶リサイクル協会は自治体との連携も強いですね。そこでこの強みを活かして、今後も自治体・市民とのパイプ役になっていくことをお願いしたいですね。

■江尻 最近の若い人たちを見ていて思うのですが、今の若年層はリサイクルの仕組みができ上がった中で生まれ育ってきています。自分たちの親が分別排出やリサイクルなどをやっているのを間近に見ていることや、初等教育でも環境問題を授業に取り入れているため、これらの重要性を何となくではあるけれど分かってはいるんです。この子たちが大人になるころにはかなり状況は変わってくるかなと期待しています。

幅広く奥深い、リデュースの定義と概念

■山本 リサイクルがある程度進み、最近は3Rからリサイクルを除いた「2R」という言葉をよく聞きます。次のステップとして、製造から販売、購入、廃棄までの段階で取り組むリデュースがあります。先日私もある自治体からリデュースについて相談を受けたのですが、リデュースに関しては主立った政策がない。行政がいくらリデュースを提唱してもその定義が明確になっていませんね。

■杉山 リデュースをどう評価していくかは今後の課題ですね。この評価は難しい。

■藤波 今全国で取り組んでいる「マイバッグ持参運動」がリデュース政策の一つですね。「レジ袋を削減すればCO2削減につながります」と消費者にPRすることは、リサイクルと同じで“分かりやすい”手法なんです。リデュース政策にも、具体策を提示して、例えばマイバッグ持参運動のようなキャンペーンを浸透させていけば、おのずと効果が表れてくると思います。まずは一つ一つ形になって目に見えるものを定着・実行させていくことが大切です。そのためには、今後研究会などで大いに議論を深めていかなければなりません。

■江尻 消費者の中には、物を買わない、もらわないことがリデュースだと解釈している方々も多くいて、市場の中に物が入ってくることが大前提の事業者と、市場の中に物が少ないことこそリデュースだと主張している消費者との間にギャップが生まれています。リサイクルは「みんなで資源を集めよう」という方向なので分かりやすいのですが、このギャップがリデュースをより分かりにくいものにしているのではないでしょうか。

マイバッグのように、行政は市民に対してさまざまな啓発活動を実施しているとは思います。ただなかなか事業者と連携できない。社会の仕組み全体としてどのようにしていくべきかの議論がもっと必要です。現状では各々が勝手な解釈のもとにやってきているように感じます。

■酒巻 容器包装のリデュースで言えば、スチール缶は省資源の観点から薄肉化、軽量化を実現してきましたし、目に見える分かりやすい形でリデュースを実施しています。しかし薄肉化などにより、製造工程でCO2やランニングコストが増えてしまっては意味がありません。全てにおいて“上がる”ことがないようにすることが、事業者が行うべきリデュースだと思います。

■山本 水筒を持ち歩いたりマイカップを常備する人が増えているようですが、これも容器包装のリデュースの一環ですね。しかしカップはどこにでも持ち歩けるわけでなく、缶やペットボトルなどの容器が必要になる場合もあります。ですから消費者は、TPOに応じてマイカップがいいか缶がいいか、マイバッグにするかレジ袋にするかという具合に容器包装を選び使い分ける必要があると考えています。

それにリデュースは対象物によって手法が違ってきます。例えば家電製品などは、修理して長く使うことはリデュースにつながるが、一方で省エネルギータイプに買い換えればCO2の削減につながる。リデュースについて言えることは、CO2削減という大きな目標に向けて、上手な資源の使い方をしていくことです。

循環型社会に根ざした「協働」の重要性

■山本 リサイクル、リデュースについて、今後より発展・継続していくためのキーワードは「協働」だと思います。日本のごみ問題については分別収集、集団回収ともに、行政の中で比較的に自治体と市民が対等にやってきた分野だろうと思いますが。

■藤波 川口市には「エコリサイクル推進委員会」という制度があります。委員会のメンバーが将来のあるべき姿を協議をして報告書に取りまとめ、それを受けた市は政策づくりの参考にしています。この委員会はもともと市民中心なので、行政では思いつかないような、市民の皆さんが思い描いている自由な考え方が取り入れられています。「市民の声イコール政策」ということでしょうか。

■杉山 前に江尻さんが雑誌のコラムで、「『協働』という言葉が独り歩きしてしまい、それぞれの立場を考慮せずに使われている」ということを述べられていましたよね? まずは各々の責任と役割を果たした上で、協力し合うことによりうまくいく部分、いかない部分などを見極めていかないといけない。そうでないと、みんなが手をつないだところで、「じゃあ、手をつないで何をするの?」というような状況に陥るのではないでしょうか。

■山本 熊本県立大学の荒木昭次郎教授が協働の定義について述べた言葉があります。そこでは「協働とは、公共の福祉を実現するために行政と市民が、心を合わせ、力を合わせて共に汗を流しながら活動する体系」と説明しています。私は「心を合わせて力を合わせて共に汗を流す」部分がないと真の協働だとは思いません。つまり目的とか志を共有することが非常に大事で、お互いの持分をこなしながらお互いに補完し合う。これにより連帯感が生まれる気がするんですね。

ごみの分野ではこうした協働で取り組んできた活動が多い。スチール缶リサイクル協会と一緒に集団回収を再評価すべきではないかという観点から、全国の都市の調査をしていますが、最近では行政の集団回収への関わり方もかなり違ってきています。単に奨励金を出すというような支援にとどまらず、情報や人的な面からも関わりを深めています。このような集団回収を「協働型集団回収」と名付けました。

■江尻 私はもう一つ集団回収に期待している部分があります。それは「コミュニティーの醸成」です。同じ地域の中でばらばらになって顔も合わせなくなっているような人たちが、もう一度集団回収を機につながっていくことができるのかなと思います。

■酒巻 集団回収は、行政と市民とが切磋琢磨しているところは一様に活発です。実際に活動を目の当たりにして、地域コミュニティーが良くなっていると実感していますが、今後も少しでも地域のために協力していきたいと思います。そういう意味では自治体にも当協会を活用してもらいたいですし、自治体にとってもさまざまなメリットがあることがわかれば、より市民とも協力して取り組んでくれると思います。

■山本 市民・行政・事業者という関係において、業界団体の果たす役割はすごく重要ですね。スチール缶リサイクル協会は、発足当時の散乱防止対策に始まり、再資源化、3Rまで多方面で色々なノウハウを有しています。今後も3Rの推進や協働の醸成に向けて取り組んでくれるよう期待しています。

■酒巻 本日は多くの貴重なお話をお伺いできました。引き続き当協会も循環型社会の形成に向けて取り組んでいく所存です。皆さまの今後ますますのご健勝を祈念しております。本日はありがとうございました。