東京大学 生産技術研究所 教授 山本 良一 氏

持続可能な文明社会を構築するため、2009年7月に主要国首脳会議(G8)と新興・途上国を加えた主要経済国フォーラムの首脳が、地球の表面温度の上昇を産業革命前と比べ2℃以下に抑制することに言及しました。この合意は大量生産・使い捨ての物質社会から循環型の低炭素社会に大転換することを、初めて国際社会が具体的に受け入れたことを意味します。

地球の表面温度が数℃上昇するだけで、国際社会は大変な被害を受けます。降雨量の減少や氷河の消失などによる水不足は食料生産を低下させ、食糧不足は“環境移民”を生み出し、それが紛争の原因となる恐れもあります。しかし、世界中で温室効果ガスの排出が年々増加している現状では、近い将来2℃を超えることは確実です。2℃突破のポイント・オブ・ノーリターンは、約20年後と推定されています。残された時間はわずかなのです。

2°Cターゲットを守るためには、温室効果ガスの排出を21世紀中に世界で80%削減しなければなりません。特にCO2排出量はできる限り早い時期にほぼゼロにする必要があり、G8は2050年までにCO2排出量を1990年比80%以上削減することで合意しています。

CO2排出量を80%削減するためには、資源エネルギー使用量も削減する必要があります。日本の場合、年間1人当たりのCO2排出量を10tから2t、資源エネルギー使用量を15tから6tに減らさなければなりません。脱炭素・脱物質社会を実現するためには、何度でも資源循環できるリサイクルは不可欠です。バージンマテリアルの使用と廃棄物の排出に対して制約を設けることが可能であれば、リサイクル社会は定着します。しかし、それでも資源を捨てる不心得者はいます。そこでデポジットを行えば、ほぼ100%のリサイクル率を達成できるはずです。

私は20年前に環境負荷を最小に抑え、リサイクル率を最大にできる環境調和型材料「エコマテリアル」という概念を提唱しました。さまざまな材料がある中、鉄は資源として大量にあり、多様な用途に使われ、リサイクルシステムも構築されています。まさに優れたエコマテリアルです。スチール缶は製造・使用・廃棄・リサイクルに至る全段階において、資源エネルギー消費量をできる限り小さくするLCA(ライフサイクルアセスメント)の理念に基づいてエコデザインされており、環境負荷が少ない、よりベターな容器包装であると評価できます。容器に、高価で枯渇する恐れのある資源を使うべきではありません。

今後、実績のあるスチール缶リサイクル協会が、容器包装の視点から資源循環政策に関して積極的に提言し、低炭素社会の実現に貢献していただくことを期待しています。