人は体内の20%の水分を失うと、生命の維持に支障をきたすと言われている。震災時における飲料確保の重要性は、今回の東日本大震災でも浮き彫りになった。その中で清涼飲料自販機は、被災者や帰宅困難者の水分補給を担うライフラインとして重要な機能を果たした。

被災者や帰宅困難者の水分補給拠点

2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生した。この地震で場所によっては高さ10メートル以上に及ぶ大津波が押し寄せ、東北地方の太平洋沿岸部に甚大な被害をもたらした。さらに断続的な余震や液状化現象、地盤沈下などによって、北海道から関東地方に至るまでの広い範囲で被害が発生し、各地で鉄道や道路、電気、ガス、水道、通信など各種ライフラインが寸断された。

こうした震災直後の混乱下、被災地に設置されている災害対応自販機で商品の無償提供が行われた。さらに救援物資が到着するまでの間、清涼飲料自販機は缶飲料などの供給を通じて被災者の水分補給を担うライフラインとしての機能を果たすとともに、首都圏においても帰宅困難者に対しての水分供給拠点として大活躍した。今回の東日本大震災における清涼飲料自販機の概況について、(社)全国清涼飲料工業会※の公文正人専務理事は次のように語る。

「震災当日、首都圏では交通機関が一斉に停止し、遠距離を徒歩で帰宅された方は600万人にも及んだと言われています。帰宅ルートに設置されていた自販機の商品は軒並み売り切れ、貴重な水分補給拠点として機能しました。また被災地では災害対応自販機が稼働し有効活用されましたが、その一方で津波により1万台以上の自販機が流出し、がれきや海の中から多数見つかっています。自販機の冷媒として使用されているフロンは、漏出すると地球環境に大きな影響をもたらすため、当工業会では自治体と連携し確実な処理を行うべく、自治体が回収・集積している自販機をメーカー各社が自主的に回収し処分する活動を開始しています」

一刻も早く被災地に届けたい飲料400万リットルを無償提供

震災後、食品と共に飲料不足が一時深刻化した。これは飲料を供給するメーカー各社の工場や事業所なども被災したためだった。4月上旬の状況を見ると、津波被害で1階部分が冠水し製造機械が水没したA社仙台工場では、ライフラインが次第に復旧したものの、依然として製造再開の見通しは立っていなかった。飲料ライン・倉庫とも一部損壊したB社茨城工場では、製造ラインは再開したものの、自動出荷倉庫が完全復旧しておらず、部分出荷を余儀なくされていた。また各社工場が設備的に生産できる状態であっても、包装資材不足や計画停電の影響で操業に支障をきたしていた。

こうした中、飲料メーカー各社は一刻も早く被災地へ飲料を届けるため、工場や事業所などの早期復旧に努める一方、被災地に向け飲料400万リットルの無償提供を独自に行った。さらに義援金については、業界(系列社を含む)全体で、今年4月上旬までに32億円、その後さらに135億円という規模で、総額167億円となる見込み。

 

災害対応自販機は、内蔵バッテリーで停電になった場合でも使用できるように工夫され、管理者の簡単な操作や遠隔操作によって、自販機内の在庫商品を無償提供するシステムになっている。飲料メーカー各社は各地の地方自治体と「災害時における飲料の提供協力に関する協定」を締結しており、庁舎や病院など公共施設を中心に全国で1万6千台が設置されている。2004年10月の新潟県中越地震や2007年4月の能登半島地震などの際にも被災地で稼働した。

清涼飲料自販機の節電最大使用電力の25%以上を削減

飲料メーカー各社は、震災後の電力不足への対応もいち早く行ってきた。3月13日から東京電力管内全域と東北電力管内計画停電実施地域で清涼飲料自販機照明の24時間消灯を実施。さらに4月15日には夏季ピーク時における清涼飲料自販機の最大使用電力を前年比で25%削減すると全国清涼飲料工業会が表明した。

「政府は7月1日から9月22日までの平日午前9時から午後8時まで、最大使用電力を前年比で15%程度削減することを求めています。清涼飲料自販機は、これまでも7月から9月については最も電力消費の多い時間帯である午後1時から午後4時には冷却機能を停止し、積極的な節電協力を行ってきました。しかし、さらに政府が新たに策定したピーク時間帯に基づいて、設置先であるお客様のご理解を前提に、時間帯グループ輪番制などによる冷却機能停止や一部自販機の販売休止によって、東京電力管内で25%以上、東北電力管内で15%以上の電力削減を実施しています。暑い時期に冷たい清涼飲料を必ずしも提供できない可能性があり断腸の思いですが、さらなる電力削減という社会的要請に各社が最大限の努力で応えています」(公文専務理事)。

東京電力管内に設置されている全国清涼飲料工業会会員社の飲料自販機は約87万台で、使用電力は最大約26万キロワットにのぼる。これは東京電力の2011年度電力供給目標5,500万キロワットの0.5%に相当する。清涼飲料自販機の夏場の1台当たり最大消費電力は、24時間消灯を行うことで299ワットとなり、家庭用冷蔵庫(内容積415リットル)291ワットとほぼ同等に抑えている。

一方、東北電力管内では、被災地を除く地域には東北電力管内の清涼飲料自販機の約60%が設置されており、この地域で25%以上削減することで、全体として政府が求めている15%を超える最大使用電力削減を実施している。ただし被災地では、避難所暮らしや冷蔵庫などの家財を失った被災者が多く、ライフラインとして清涼飲料自販機が求められている。また清涼飲料自販機業界関係者も同様に被災し事業活動に支障をきたしていることから、電力削減対象から除外している。

絶え間ない技術革新で社会的要請に応える

 

飲料メーカー各社が、さらなる電力削減という社会的要請への対応を可能にした背景には、清涼飲料自販機の絶え間ない技術革新の歴史があった。1995年から最も電力消費の多い時間帯である午後1時から午後4時に冷却機能を停止する「ピークカット機能」を導入。さらには、外気に放出される熱をホット飲料加熱の熱源として使う「ヒートポンプ方式」、販売する直前の飲料だけを冷却・加熱する「部分冷却・加温システム」、庫内の冷たさや温かさをできるだけ逃がさないでエネルギー効率を高める「真空断熱材」などを導入することで、省エネルギーを推進してきた。その結果、2010年には缶・ボトル飲料自販機1台あたりの年間消費電力量を1991年比で64%削減している(上図)。

自販機での売上は飲料全体の30%以上を占めており、購入手段として消費者からの支持を得ている。清涼飲料自販機は利便性に加え、東日本大震災では帰宅困難時の飲料販売の役割や被災時のライフラインとしての機能を果たした。110番や119番通報時に役立つ住所表示をはじめ、災害時情報発信機能などを備えた自販機も多数あり、飲料提供以外の面でも社会に貢献している。