斉藤慶子(女優)

10歳になる娘さんを育てる毎日の中で、エコロジーにつながる気持ちや体験を、次世代に伝える責任を感じるという斉藤さん。ご自身の子どもの頃の思い出などを交えながら、その思いをうかがいました。

子どもと接していると「全ては限りあるものだ」ということを、大人の責任として子どもに伝える大切さを感じます。今の子どもたちは「もったいない」という感覚が本当に乏しい。産まれたときから、ひねれば水やお湯が出て、明るく暖かい部屋で育ち、この満たされた生活が普通だと思っているんですよね。

娘は学校で「ごみはどのように処理・再生されるか」とか「エコカーの種類」など、エコロジーについていろいろと教わってくるので私よりも詳しく知っていることもあります。でも、この恵まれた生活のありがたみを体で感じる経験が少ないと、知識だけの厚みのない人間になってしまわないかと心配です。

私が産まれ育った宮崎県の小林市は、南国のイメージとは違って"霧島おろし"と呼ばれる寒風が吹き、冬は寒く夏は暑い土地です。子どもの頃は冬の歯磨きが大嫌いで、暗くて寒い廊下を歩いて洗面所に行き、蛇口をひねると氷のように冷たい水が跳ねるのが嫌で仕方がありませんでした。今はなんでも快適になって、あの頃のような体験をすることは少なくなりました。

実家の宮崎に娘を連れて行くのは、五感で感じる体験をさせたいという思いもあります。太陽が照りつける畑でトマトをとったり、汗をかいた後、井戸水で冷やしたスイカを食べたり、土のにおいや月明かりを感じたり。そういう経験をして東京に戻ってくると、娘がグンと成長していることを感じます。一歩外に出ればカブトムシがいるような場所なので、娘は「キャー虫嫌いー!」などと言っていますが、ゲームなどのバーチャルな世界では味わえない体験を彼女も楽しんでいるようです。

人間は、夏は暑くてあたりまえ、冬は寒くてあたりまえという感覚を、基本として持っていたほうがいいと思います。そうすれば、例えば東日本大震災による節電もそれほど苦にならないと思うんです。特別なことはしていませんが、私は子どもの頃から水と電気にはケチで(笑)。きっと親の影響ですね。だから、物を大切にする姿を子どもに見せたり、話をしたり、意図的に体験させたり、いろいろな形でエコロジーに対する考えや思いを次の世代に伝えていきたいと思います。

スチール缶というと、子どもの頃、風邪をひくとみかんの缶詰を食べさせてもらったことを思い出します。体調が悪くてもツルッと食べられますし娘も大好きなので、今は子どものために買ってきます。「この缶もまた新しい鉄に生まれ変わるんだよ」と話しながら食べると、もっとおいしく感じられそうですね。