文化と芸術の杜・上野公園、庶民的な商店が軒を連ねるアメ横、古いまち並みが残る谷中、浅草寺や仲見世通りを中心とした国際観光地の浅草。東京・台東区にはさまざまな見どころがあり、年間約4,000万人が観光や買い物に訪れる。大江戸清掃隊は、こうした来訪者をもてなす心でまち美化を行っている。

江戸っ子の粋な心意気

昔、江戸っ子たちは「江戸しぐさ」という、日常の立ち居ふるまいから言葉づかいまで、人とのつきあい全般にわたる知恵を持っていた。その江戸しぐさの一つに「のばし箒」がある。のばし箒とは、自分の家の前だけでなく、お隣やお向かいの門前まで掃き清めるというもの。今も江戸の情緒が色濃く残る台東区では、のばし箒という粋な心意気を胸に、区内在住・在勤者によって大江戸清掃隊が2001年に結成された。

大江戸清掃隊は地域や道路、公園などを月1回以上自主的に清掃するとともに、区や地域の美化向上キャンペーンに参加し環境美化活動を行っている。発足当初は商店街や町会などを中心に活動が始まり、その後は清掃協力会や老人クラブ、地元の企業や学校など、さまざまな団体が加わった。登録者数は発足時86団体780人から、現在では267団体3,645人にまで増えている。

まちに広がる信頼の輪

蔵前に本社を置く婦人バッグメーカーの(株)ヤマト屋では、毎週月曜日の朝、大江戸清掃隊の半てんを身にまとった従業員が総出で周辺地域の道路や植樹帯、側溝の清掃を行っている。大江戸清掃隊は台東区が隊員登録認定を行っており、ユニフォームの半てん、ごみ袋を配布するほか、チリ取りや竹箒から路上に吐き捨てられたガムを除去する機器、落書きを落とすジェル状の消し材まで、さまざまな清掃用具を貸し出しているが、同社では自前で清掃用具一式を取り揃えるほどの熱の入れようだ。正田誠社長はまち美化への想いを次のように語る。

「2010年にお隣の墨田区から引っ越してきたのですが、まち美化を通じて蔵前の皆さんに『ご苦労様』と親しく声をかけていただくようになり、信頼が生まれました。実は当社のまち美化歴は30年になります。いつお客様がいらっしゃってもいいように、整理整頓と掃除の徹底を心がける"会社磨き"の一環として始めたのがきっかけでした。まちは企業を育ててくれます。だからこそ地域を大切にしていきたいと考えています」

感謝の想いを込めて

浅草雷門の観光人力車えびす屋では、毎日就業前の朝と日没就業後、車夫たちが各自担当する観光案内コースの道路清掃を行っている。コースは最長で5キロに及び、隅田川を越えて東京スカイツリー®周辺まで案内していることから、清掃範囲は大江戸清掃隊を支援する台東区だけでなく墨田区にも広がっている。 小川勝規店長は次のように語る。

「まちを走るとポイ捨てごみが気になります。花火大会など大きなイベントの翌朝は大変な量のごみが散乱しています。観光客の皆さんは、どこにごみ箱や喫煙所があるのかわからないこともあり、ちょっとくらいと捨ててしまうのでしょうね。最近ではスカイツリーのビューポイントにポイ捨てが目立ってきました。私たちは下町風情を案内し、まちを使わせてもらっていますから、これからもまちへの感謝の想いを込めて清掃活動を続けていきます」

熱心な活動を台東区が支える

発足10周年を迎えた今年、3月17日に「東京スカイツリー®開業記念in台東 大江戸クリーン大作戦」が開催され、大江戸清掃隊をはじめ約800人のボランティアが結集し、スチール缶リサイクル協会も協力参加した。

当日、台東区は永年ボランティア清掃を続ける大江戸清掃隊への感謝状贈呈式を行い、吉住弘区長が賞状を授与した。贈呈式後は隅田公園を中心に6班に分かれて、各ルートのスカイツリービューポイントを経由した周辺の道路の清掃を行う予定であったが、悪天候のため中止となった。その中で隅田川の春の風物詩「早慶レガッタ」で台東区と縁のある早稲田大学と慶応義塾大学の学生95人は、まち美化の新たな担い手として、浅草駅界隈で清掃活動を行った。台東区では大江戸清掃隊の活動への期待とまち美化の展望を語る。

「東京スカイツリー®の開業に伴い来訪者が増えています。来訪者への『もてなしの気持ち』を高めるために環境美化活動は欠かせません。まちをきれいにし、地域に愛着や誇りを感じることができる大江戸清掃隊の活動は、観光面からも重要な役割を担っています」(吉田正博係長)

「隊員の皆さんの意欲を維持し高めていく仕組みが課題になっています。熱心に週1回以上清掃活動しているまちの美化里親団体の方々に対しては、ボランティア保険の保険料負担や加入手続きなど区が支援しています。今後さまざまな媒体を通して活動情報を発信し、地域の皆さんの連携を深める支援も行っていきたいと考えています」(柳原知子主任)