有森 裕子(オリンピック女子マラソンメダリスト)

2007年に環境省3Rマイスターに就任、またスポーツを通して国内外の紛争や災害などで被害のあった方への自立支援を長年続けている有森裕子さん。これからの社会や地球にとって大切なことをうかがいました。

希望ある未来のために大切なことは「そうでありたいと思う気持ち」ではないでしょうか。そして、その気持ちを持てるかどうかは、家庭環境が大きく影響すると思っています。

例えば、生まれ育った家が日常的にリサイクルに取り組んでいれば、そのことを意識することや考えることは「特別なこと」ではなく「普通なこと」になります。

少し話はそれますが、家庭での手伝いがどれだけ大切かということをよく思います。大人になってからルールが増えると面倒だと思いがちですが、子どものころに覚えたことや行動は案外忘れないものです。私は洗濯物を畳む手伝いをしていました。イヤイヤしていたこともありましたが、大人になって洋服が片付いていないと、きちんと畳みたいよね、それが普通だよねという気持ちになります。ごみの分別も家庭で身についていれば、外に出ても捨てる場所を探すはずです。

家庭は社会の基本。子どもだから何もしなくていいのではなく、共に生活することは助け合うことですし、お手伝いは習慣が身につくだけでなく、効率のいい方法を考えたり、社会の仕組みを知るきっかけにもなります。家で何を教わったか、何を習慣としていたかがその人の価値観をつくります。家庭での環境への接し方はとても大事だと思います。

そして環境に配慮することが「大切に考えること」になればいいなと思います。「大切に考えること」と「特別に考えること」は違います。「特別」はいつまでも「特別」で、次第に考えることが嫌になってきます。でも「大切に考えること」はある意味自分と同等に考えることですし、持続してできることだと思います。

いずれにせよ「コツコツ」だと思います。極端に「こうしなければ!」と変えようとすると拒否反応を招くこともあります。マラソンは「こうしなければならない」では走れないスポーツです。コースも天気も選手も状況も違う中「どうしてこうならないの?」と思っていては一歩も進めません。どんな環境でも全てを力に変え、できるだけベストに近い方向に自分を持っていく。私たちNPOが行っている地雷による被害者支援もそうですが、"大海の一滴でもやらないよりはやったほうがいい"というスタンスで、環境への配慮も、家庭から楽しく無理なく取り組むことが継続につながるのではないでしょうか。

スチール缶のリサイクル率はとても高いんですね。私にとってスチール缶は、使った後、遊び道具になるというイメージです。穴を開けてぽっくりをつくったり、缶けり遊びをしたり。今で言うとリユースですね。今の子どもたちは、蹴ったら危ないとか切り口が危ないからと、缶では遊べないのかもしれません。個人的には多少危ないものがあったほうが、気をつけたり使い方を考えたりするのでは?と思うのですが、いろいろと難しいですね。