東京大学サステイナビリティ学連携研究機構副機構長・教授
国際連合大学上級副学長 武内 和彦氏

循環型社会形成推進基本計画では、階層的な循環圏の考え方に基づいて、「地域循環圏」の形成を促進することが掲げられています。ものにはふさわしい循環の広がりがあります。例えばレアメタルを家電製品から回収するとき、市町村で循環することは資源利用の効率性からするとふさわしくありません。日本全体で、場合によっては東アジアという視野で、希少金属の再生利用を図る仕組みが必要です。

しかし地域にある資源を大事に活かしていく意味では、どの資源が重要だとか、重要でないということは言えません。地域をトータルな循環圏の対象にした場合、循環を支えている人は地域にいる人たちです。地域の人たちが、このものもあのものも全部もったいないという精神でまわし使いできる風土を持っていれば、それはどの物質に対しても適用可能です。私は缶だけとか、私はびんだけとかということにはなりません。地域循環圏の形成が、循環型社会のより高次元な捉え方につながっていくのではないかと期待しています。

一方、2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、世界各国が協力して生物多様性と生態系サービス(生物多様性が人間に提供してくれる自然の恵み)の保全に努めるため、2020年までの短期目標と2050年までの長期目標を定めました。そして長期目標では日本が提案した「自然共生社会」の概念が取り入れられました。

COP10を受けて、2012年9月に生物多様性国家戦略が改定されました。改定ポイントの1つに「自然共生圏」があげられます。自然共生圏とは、循環型社会と自然共生社会の統合的な取り組みです。例えば都市と農村の関係では、都市は農村に対して、農村の自然を守り、農村の自然利用を支援する仕組みをつくっていく。農村は都市に対して、さまざまな恵みを供給していく。このように地域が双方向に連携し、地域の経済基盤が強化されることで、自然界における循環を取り戻し、生物多様性保全の達成につなげていくという考え方に基づいています。

低炭素、循環型、自然共生型の社会づくりを実践するため、「地域循環圏」と「自然共生圏」の考え方をどのように組み合わせていくべきか。持続可能な社会の実現に向け、今後大きなテーマになると考えています。