追跡!スチール缶がリサイクルされるまで
震災を乗り越え“杜の都”の資源循環を守る

広瀬川や青葉山の豊かな緑が街全体を囲む美しい景観から“杜の都”と呼ばれる宮城県仙台市。東日本大震災の混乱を乗り越えて、市民一人ひとりがごみの分別意識を高め、自治体・事業者と共に、さらなるごみの減量・資源化に取り組み、杜の都の資源循環を守っている現状と、スチール缶がリサイクルされるルートを追跡した。

分別の大切さを呼びかける

仙台市では東日本大震災後、家庭ごみに混入する資源物の割合が急増している。その割合は震災前の2009年度が38%だったのに対し、2013年度には47%に悪化した。なかでも紙類やプラスチック製容器包装の混入が目立っている。

2011年3月11日の震災直後、仙台市にある3つの清掃工場すべてが運転不能となった。しかし3 月14日には葛岡工場が一部運転を再開すると同時に避難所のごみ収集を開始し、翌15日には家庭ごみ収集も再開した。缶・びん・ペットボトルの資源化施設の復旧は早かったが、腐敗や悪臭が懸念されるごみの収集を優先し、資源物収集は3月29日から再開された。ただしプラスチック製容器包装の資源化施設は津波被害のため4月25日まで収集できず、市は家庭での保管の協力を呼びかけた。4月中は指定袋の入手が困難だったため、さまざまな形でごみが排出されたが、5月2日以降は指定袋での通常収集に戻った。

2008年の指定袋による有料化以降、家庭ごみの総量は減少傾向にあったが、震災の影響から2011 年度は前年度比12%増となった。2013年度は前年度より0.9%減の39万tで、市民1人1日当たりのごみ排出量は前年度より16g減少し1,001gとなるなど、震災発生後の急増から減少に転じてきた。しかし震災前の水準(2009年度のごみ総量36万7,000t、1人1日当たりのごみ排出量972g)に戻っていない現状について、市環境局ごみ減量推進課の岩渕千代子参事兼課長は次のように分析している。

「未曾有の被害を受け、市民の皆さんは不安定な生活環境を強いられ、生活の再建に追われました。したがって震災直後の家庭ごみ総量と資源物混入率の増加は、やむを得ない現象ではありました。しかし、いまだ震災前の水準に戻っていないのは、分別意識が希薄化してしまったことや、ごみ排出ルールの異なる他地域からの転入者の増加が原因の一つになっているのではと考えられます」

こうしたなか、市環境局ではきめ細かい広報・啓発によって、改めてごみ減量・資源化の取り組みを進めている。2014年5月30日から2015年3月31日の間には「緊急分別宣言!!みなさん、きちんとワケてますか?」キャンペーンを展開し、市民に分別の大切さを呼びかけている。

ごみ集積所は生活の質を映す“鏡”

仙台市泉区は都心の北部に位置する人口約21万人のベッドタウン。丘陵地帯を中心に1980年代初めから住宅が形成され始め、仙台駅へのアクセスが良好なことから、近年急激に人口が増加した地域だ。その泉区で戸建住宅が建ち並ぶ高森6丁目の町内会が管理するごみ集積所は、「五つ星集積所」に認定されている。

五つ星集積所とは、ごみ集積所に出されているごみの分別状況や排出ルールが守られているか、ごみ集積所が清潔に保たれているかなどを、市環境局の職員が診断して、優秀な成績をあげたごみ集積所を認定し、オリジナル認定証を贈呈する制度だ。「緊急分別宣言!! みなさん、きちんとワケてますか?」キャンペーンの一環として平成26年度に初めて実施され、市内約2万ヵ所中99ヵ所が応募し68ヵ所が認定された。診断の結果は診断書形式で集積所を管理する町内会に通知された。採点結果のほか改善ポイントなども記載されており、町内会で回覧するなどして活用されている。

五つ星に認定された高森6丁目町内会のごみ集積所では、町内住民が輪番制で清掃管理している。各世帯が1週間の管理当番を年1回程度の頻度で担当することによって、負担を感じることなく、自分の集積所という愛着が自然に形成された。当番できれいに掃除をすることで、使う人にも汚すことなく利用する意識が芽生え、みんながきれいに利用するという好循環が生まれた。町内会の内山克会長は「ごみ集積所はその地域の人たちの生活の質を映す“鏡”であり、“顔”であると感じるようになり、住民の間でさまざまな創意工夫が行われるようになりました」と話す。

ごみ集積所管理で大きな問題となるのは、カラスやハクビシンなどの鳥獣対策だ。ごみ袋の中身を荒らされる被害を防ぐため、まず収集日前日のごみ出しを禁止し、当日の早朝から朝8時30分までの排出を周知徹底した。さらに住民のアイデアで、防除ネットを集積所の金属かご外側から覆い被せるだけでなく、くちばしや足が入らないように内側からも透明なシートを貼りめぐらせた。また資源物は収集日前日に市から集積所に配送される黄色の回収容器に直接排出するルールになっているなかで、スチール缶・アルミ缶・びん・ペットボトルごとに回収容器に排出したらよいのではないかという声があがった。しかし資源化センターでは、ベルトコンベアに流れてくる資源物を順次一斉に手作業で選別するシステムになっているため、資源物に偏りがあるとむしろ作業効率が大幅に低下してしまう。その事情を知り、回収ボックスにバランスよく容器包装を入れるようにした。リサイクル意識の高さがうかがわれるエピソードだ。

五つ星認定地域の市民がこうした体験談などを発表する場として、市環境局は2014年11月30日、「五つ星☆集積所サミットin環境フォーラム」を開催した。ごみ集積所の管理ノウハウや取り組みの苦労話を共有化することによって、市民のごみ分別意識のさらなる醸成を促した。

回収容器で運び資源化センターで分別

泉区高森6丁目ごみ集積所など市北東部地域で排出された、スチール缶をはじめとする資源物は、松森資源化センターへ運び込まれる。回収容器から廃蛍光管類を取り除いたあと資源物をベルトコンベアに流し、まず廃乾電池類や再使用びん、ペットボトルを次々に手作業で選別していく。その後、スチール缶などの鉄類は磁石にくっつくという特性を活かし磁力選別機で人手をかけることなく取り出され、びん、アルミ缶の順に手作業で選別され資源化されている。

松森資源化センターでは1日当たり約30tの資源物が処理されている。このうち容器包装はスチール缶2.6t、アルミ缶2.8t、ペットボトル5.2t、びん14tを占めている。また資源化できない燃えるごみ1.5t、燃えないごみ2tが排出されている。これは家庭ごみが混入するからだけでない。例えばビニール袋に入れて排出されていると、破袋機が設置されていないため人手で取り除かなければならず、袋から取り出せないものはごみとなってしまう。また飲み残しや異物が入っているなどの場合も、そのままでは資源化できず、ごみになってしまう。「地域のごみ出しルールは、資源化センターで効率よく処理できるように決められています。ルールどおりに分別されていれば必ず資源化されます。引き続き市民の皆さんに分別排出へのご協力をお願いします」と、松森資源化センターの中村昭一技術管理者は呼びかけた。

何にでも何度でも生まれ変わる鉄

松森資源化センターから資源業者に引き渡されたスチール缶の鉄スクラップは、JFE条鋼(株)仙台製造所が鉄鋼原料として購入している。仙台市の良好な港湾に面し、東京ドーム12個分の広大な敷地を持つ仙台製造所に、東日本大震災から約50分後に大津波が押し寄せた。多くの設備が冠水し、岸壁に大型船舶が乗り上げるなど甚大な被害を受け、復旧のめどが立たない状況に陥った。しかし東北復興を誓い、7月の東北電力による電力供給再開に合わせて生産を一部再開し、9月末に完全復旧を果たした製鉄工場だ。

仙台製造所で購入している鉄スクラップには、橋やビル、自動車などが解体されて発生する市中スクラップと、自動車や造船などの生産工場から発生する加工スクラップがある。加工スクラップは東北3県の工場が操業を停止し完全復旧までに時間がかかったため、需給が一時ひっ迫した。市中スクラップについても、震災後の混乱の影響で一部に銅や鉛などが混在しているケースも見受けられた。一方、スチール缶の鉄スクラップは分別排出の徹底、自治体の分別収集システムの完備、資源化センターやスクラップ加工業者の選別・加工精度が維持され、需給や品質は比較的安定していたという。

仙台製造所では鉄スクラップからビル、橋、トンネルなど東北復興に欠かせない建築・土木用鋼材、車の性能や安全性を支える自動車部品用鋼材といった鉄鋼製品を生産し、資源循環型社会に貢献するとともに、製造工程においても環境調和型の鉄鋼生産を実現している。例えば、電気を使って鉄スクラップを溶かす電気炉は、これまで原料装入のたびに炉のふたを全開にするため、エネルギー効率や生産性で不利な面があった。そこで環境調和型高効率電気炉(エコアーク)を2008年 9月に導入した。電気炉の上部にあるシャフト(筒状の炉)へ炉蓋を開閉することなく、原料を炉内に連続装入することで連続予熱を図り、エネルギー効率や生産性などを画期的に改善した。その結果、使用電力量を大幅に削減した。またスチール缶のふたに使われているアルミが効果的に鉄スクラップを溶かすための昇熱材や、加工性が良く粘り強い鉄鋼製品をつくるための脱酸剤の役割を果たすとともに、製造過程で発生する副産物のスラグは路盤材などに使用され、ダストから亜鉛を回収して再資源化するなど、省エネ・省資源を心がけた持続可能なリサイクルを実現してきた。

スチール缶のスクラップは、この事例のように全国78カ所の製鉄工場で原料として使用されている。スチール缶は家庭で分別排出されると、自治体が分別収集し、資源化センターで鉄スクラップとなり、資源業者を通じて最寄りの製鉄工場に回収されている。そしてスチール缶をはじめ自動車や家電製品、鉄道、船の材料、ビルや橋、トンネルといった建設資材など、「何にでも」「何度でも」さまざまな鉄鋼製品に生まれ変わり、東北復興をはじめとする社会インフラ整備に貢献している。スチール缶はこのように市民・自治体・事業者が三位一体となってリサイクルを確立している優れた容器包装なのだ。