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「STEEL CAN AGE」Vol.33 林家 たい平

Vol.33 林家 たい平号
2015年2月発行

「ポジティブ・リインフォースメント(正の強化)」がポイ捨てしない心を育む

どうしてポイ捨てはなくならないのでしょう? 人間の心のどのような動きがそうした行動につながるのか、またどのような対策が有効なのか、心理学者の富田先生に伺いました。

わが家の近くにある道路の植え込みにも、ごみをポイ捨てしている人がいて、そのなかにあき缶を見かけることもあります。きちんとごみを分別して捨てる、ごみ箱がなければ家に持ち帰る人は、環境あるいは社会に対する倫理観がある人です。この倫理観を共有していないと、ポイ捨てを平気でする人になってしまう。でもこの倫理観が揺れ動くグレーゾーンの人がいます。グレーゾーンの人のなかには、罪悪感はあっても人が見ていなければ、あるいは罰せられなければやってしまう人もいれば、悪気はないけれどもそれが行動の習慣になっている人がいます。先ほどの道路の植え込みにポイ捨てする例でも、交通量が多く見晴らしも良い直線の道路より、カーブになって見えにくい道路で多く見られました。

こうしたグレーゾーンの人に対する働きかけとして、2つの方法があります。よくありがちなのが、監視カメラの設置や罰金など、罰を与えることで行動を制限させるもの。面倒なことを避けたい心理がポイ捨てを抑制します。「ネガティブ・リインフォースメント(負の強化)」と言いますが、このやり方では徹底的な監視社会にしない限り、どこかに逃げ道が生まれ、そこからこぼれていってしまう。一方、「ポジティブ・リインフォースメント(正の強化)」というやり方は、褒められたり認められることで良い行いを強化・促進するもので、こちらのほうが内在化されやすい。内在化されるとそれが当たり前の行動心理になる。地球環境、社会に対して自分ができることだという納得感を持って行動できるようになります。これは小さい子どもだけではなく、大人にも有効です。スチール缶リサイクル協会が優れた集団回収を行っている学校に対して表彰する制度は非常に良いと思いますね。やったことがきちんと評価されることが大事です。現在は情報化が進んでいますから、自分たちのやったことが累積記録としてアプリなどで確認でき、達成感が持てるような新たな仕組み、システムなどもつくれると思います。

一方で、ポイ捨てを平気でする人、あるいはグレーゾーンの人の周りには、悪いお手本を広めている人もいますね。「観察学習」という分野になりますが、自分より少し年上のモデルになる人の行動を取り入れやすい。これは人間の優れた能力ですが、ときにネガティブな行動も取り入れてしまう。ただ全部真似するかというとそうではなく、「代理強化」と言って、例えばお兄ちゃんがポイ捨てしてお母さんに怒られれば、その行動をすると罰を与えられると認識されるので、そういう行動は取り入れない。一方周りの友だち皆でポイ捨てすると、仲間の一員として認識してもらえ、結果的に褒められたのと同じ「代理強化」をされてしまうんです。ですから仲間内のリーダー格がポイ捨てをしないという行動をとれば皆影響を受けます。広告や美化キャンペーンに憧れの著名人やカッコイイ大人が参加するなど、常にポジティブな見本が見られるような周知活動も必要だと思いますね。

●PROFILE とみた・たかし
1949年東京都生まれ。1977年、上智大学大学院文学研究科博士課程終了。1999年4月より現職。専門は「認知心理学」。「恋愛」「性」「流行」「夢」「超常現象」「文化現象」「教育問題」「ストレス」「やる気」など、あらゆる領域で人間の深層心理に鋭く明解な分析を加えている。TV、ラジオ、雑誌、新聞、講演など各メディアで活躍中。著書に『わたしのまわりの心理学』(大和書房)、『「ハナシ上手」になる心理術』(角川書店)、『なぜか「女子に好かれる女子」の共通点』(新講社)など多数。

 

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