2015年度のスチール缶リサイクル率は92.9%に達し、さまざまな鉄鋼製品によみがえっている。なぜスチール缶の鉄スクラップは、しっかりリサイクルできるのだろうか。JFE条鋼(株)の小松喜美主監・技術部長に話を伺った。

海外から輸入した鉄鉱石を主な原料とし、一部鉄スクラップを使っている高炉メーカーに対して、当社のような電気炉メーカーは日本国内で発生する鉄スクラップを原料として、さまざまな鉄鋼製品をつくっています。当社は全国6ヵ所の製造所に電気炉を持っており、炉内に鉄スクラップを装入し、高電圧をかけてアークを発生させ、その熱で鉄スクラップを溶解し、鉄リサイクルに貢献しています。

鉄鋼製品をつくる際、強度を高めたり、加工しやすくするなど、使われ方に応じた特性を持たせるため、スクラップ溶解後に鋼中炭素調整、合金添加、溶鋼精錬などの作業を行います。ただし、スクラップに含まれるトランプエレメントが多過ぎると、鋼材品質を低下させることがあります。その代表的な成分は銅なので、製品用途の厳しさに応じて、銅含有量の少ない高級スクラップの配合率を上げていきます。この観点から、銅線やモーターなどの銅部材を含む回収屑は、精緻解体による銅の分別が必須です。

銅に次いで厄介なトランプエレメントとして、錫があります。錫は微量でも銅と同様に鋼材品質を低下させるからです。スチール缶の素材であるブリキは錫めっきされているので、その錫含有量は要注意ですが、昨今ではめっき法の改善やTFS化によりスチール缶に含まれる錫の量は減り、電気炉でのリサイクルがしやすくなりました。

では、スチール缶のプルタブに使われるアルミはリサイクル使用に支障はないのかという疑問が湧いてくると思います。アルミも大量に炉内に入ると、電気炉内でアルミ酸化物が生成することで炉内容積が減り、生産効率を低下させることがあります。しかしながら、現状の使用率程度であれば、その弊害はほとんどなく、むしろアルミの酸化発熱により電力使用量低減という省エネの役割を果たします。またスチール缶素材そのものは高炉製品なので銅含有率の低い高級屑です。

総合すると、スチール缶プレスは、若干量含まれる錫に注意すれば、銅含有は低く、発熱源を内在する優秀な鉄源と言えます。だから、一般的には供給量を増やしてほしいと考えている電炉会社は多いでしょう。

また、電気炉電極から発生するアークの温度は4,000℃に達し、スクラップ溶解してできる溶鋼温度の1,600℃を超えます。この超高温を利用すれば、現在処理に困っている難溶性の廃棄物などは完全に溶解処理ができるので、焼却灰も残さず埋立処分回避にも貢献できます。

日本は資源少国です。しかし社会インフラとして使われている鉄の蓄積量は13億トンにも上ります。これだけの鉄スクラップが“都市鉱山”として眠っています。電気炉の特性を活かして、社会に貢献しつつ鉄リサイクルを推進していきます。(談)