NPO法人iPledge(アイプレッジ)は、フジロックフェスティバルなど日本の野外音楽イベントで24年間にわたり、来場者が自らごみを分別することで資源化やリサイクルへの意識を促す「ごみゼロナビゲーション」を実施してきた。その理念に共鳴した中国のMTA天漠音楽フェスティバル2018で、中国の若者たちにクリーンな音楽フェス魂を伝えた。

ごみ拾いではなく、意識を変えてもらう

MTA天漠音楽フェスティバルは2018年で3回目を迎えた新興の国際的な野外音楽イベントだ。音楽、テクノロジー、芸術を融合させ、ミュージシャンが演奏する隣のホールではIT事業者が研究発表をするなど、これまでの中国の音楽イベント形式を打ち破る新たな音楽フェスして注目を集めている。2018年も北京市から北西90キロ離れた黄砂が降り積もって形成された砂丘にステージを出現させ、開放的で幻想的な雰囲気のなかで6万人の若者たちが音楽に酔いしれた。

主催者の北京夏季之声文化発展有限公司は、以前より環境問題に対する取り組みを考えていた。こうしたなか、世界で最もクリーンなフェスと名高い日本のフジロックの環境対策を担ってきたiPledgeのごみゼロナビゲーションを知った。

「ごみゼロナビゲーションは、誰かがポイ捨てしたごみをボランティアが拾う活動ではありません。会場内に設置したごみ分別ステーションで、ボランティアが来場者にごみ分別を誘導する呼びかけを行ったり、分けられたごみが最終的にどうなるのかを説明してリサイクルの大切さを訴えます。あくまで来場者が主体的に動くことを求めています。一人でも意識が変われば、この活動に意味があると思うんです」(iPledge代表・羽仁カンタさん)

中国側の要請に羽仁さんは当初、企画ノウハウを知りたいだけなのではないかと懐疑的だったという。しかしMTA 2017に招待され、ごみ問題が取り残されている現状を目の当たりにした。中国側もフジロックを視察し、お互いに考え方のすり合わせを重ねていくなかで信頼関係が芽生えた。そして日本で培ったごみゼロ活動の技術を2018で実践することを決意した。

地球をきれいにしたいという思いは万国共通

MTA 2018では事前にiPledgeメンバーがコアメンバーとなり、ごみゼロナビゲーションの極意について、中国最大の国際環境NGO自然之友のメンバーや中国人ボランティアら約70人を指導した。そして2018年5月18~20日の開催当日、金属缶、ペットボトル、びん、生ごみ、その他(割りばしや使い捨て容器など)の5種類に分けられたごみ分別ステーションを設置し、分別を促すメッセージを発信した。

「主催者とは意識を一致させていたのですが、地元政府との行き違いがありました。例えば会場には分別ステーションのほか、観光客用のために普段から地元政府が使っている分別指定のないごみ箱も設置されました。分別しないでポイポイ捨てられるのも悔しいので、分別ステーションを政府のごみ箱近くに移動させて、こちらに捨てるよう参加者に促しました。また透明ごみ袋を準備してもらう予定でしたが、実際は薄い真っ黒なごみ袋でした。回収したごみは次々と収集されてしまい、内容物を分析できなかったことも残念でした」(羽仁さん)

中国では大気汚染への関心があっても、ごみ分別意識はまだまだ進んでいるとは言えないという。これまで飲食後の使い捨て容器がテーブルに散乱している風景が当たり前だったが、ごみゼロナビゲーションの実施によってそんな風景も消え、マナー意識は向上した。

「中国の皆さんの意識と行動力が素晴らしかった。日本が中国より優れているわけじゃなくて、先に取り組んだだけ。地球をきれいにしたいという思いはどこへ行っても同じだと思いました。現実は少しずつしか変わらないのですが、決して無駄ではありません。これからもクリーンな音楽フェスの定着を目指して、ごみゼロナビゲーションの挑戦を続けていきます」(羽仁さん)