1970年代、誰もが知るトップ・アイドルとしてお茶の間を席巻したアグネス・チャンさんは、長年にわたり日本ユニセフ協会大使として毎年世界各地への訪問を続け、さらに大学で教鞭もとるスーパーウーマンです。2018年には『究極の家庭教育 メソッド48』(扶桑社)を上梓。3人のお子さんをスタンフォード大学に入学させた母としても注目を集める彼女に、グローバル視点での環境問題について話を伺いました。

私が歌手として日本で活動を始めたのは、17歳のころです。さまざまな芸能活動をやっていましたが、あるとき、チャリティを募る番組で総合司会を務めることになりました。その年はちょうどエチオピアが干ばつと内戦で被災民がキャンプに避難している状況で、そこに私は取材に行きました。テレビ局からは反対されたのですが、頼み込んだのです。当時、日本は80年代でちょうどバブルの真っ最中、飽食の時代。一方、エチオピアのキャンプでは人がバタバタと死んでいました。とても同じ世界だとは思えず、本当に心が痛みました。

私が初めて「温暖化」という言葉を聞いたのは、このときです。エチオピアは「アフリカの角」といわれる場所にあり、もともと雨があまり降らない地域です。同行の専門家の方が「この干ばつは温暖化によるものだ」と言ったのをはっきりと覚えています。英語で「Global warming」という言葉です。私は「暖かくなって何が悪いんですか」と聞きました。すると「極端な天候が起きます」と言われました。雨が降るところは雨が降りすぎ、雨が降らないところはまったく降らなくなってしまう。降らなければ干ばつが起きて、人が飢えて死んでいく、と。

それから30年以上が経ちます。アフリカのサヘル地域は半乾燥地域ですがもともと雨が降るところで、そこに住む人々は長年「半農半牧」で暮らしてきました。ところが温暖化によって10年ほど前からまったく雨が降らなくなって農作物がつくれなくなりました。サヘル地域はいろんな国の北部に位置しています。ブルキナファソ、ナイジェリア、ソマリア、ニジェール、アルジェリア…どの国も内戦状態です。つまり、雨が降らない→干ばつが起こる→食べられなくなってくる→食べ物を盗む人が増加して治安が悪くなる→政府に対して暴動が起きる→反政府ゲリラが出てくる→内戦が起きる、といったような事態が起きているのです。地球温暖化は未来の問題ではありません。たくさんの人がすでに命を落としている、いま現在の問題なのです。

私たち一人ひとりができる地球温暖化対策は、化石燃料の消費を減らすこと=省エネルギー、リサイクルですね。私がアメリカに住み始めた1980年代後半、ごみの分別がとにかく細かく分かれている上にごみ収集自体が有料だということに驚きました。例えばガラス瓶であれば、瓶の本体を洗って出すのはもちろん、瓶の蓋、オイルを入れていたものかどうか細かく分けて、規定の箱に入れて出さなければならない。箱に入れられないほど多くなれば、さらにお金を追加で払って収集してもらわなければなりません。リサイクルに対する意識は自然と高まりました。

3人の息子たちも、日々の暮らしの中で「物を大切にすること」を自然に覚えてくれました。子どもが3歳のころ、置いてあるものを彼がおもちゃにしようとして取ろうとしたんですね。思わず「それはごみだから」と止めようとしたら、「これはママが捨てたからごみになるんだよ。捨てなかったらごみじゃない」とひとこと言われたんです。この言葉は心に刺さりましたね。彼らは大人になった今でも、本当に物を大切にします。靴なんて穴があくまで履いています。子どもは必ず親を超える、と実感しています。