近畿エリアの代表的な一級河川でありながら、一時期は全国水質ワーストワンになるほど汚染が進んだ大和川。国や地域の自治体では、下水道設備の拡充や地域住民への“減生活排水”への意識付けとあわせて、1997年から毎年3月、流域住民が一体となった2万人規模の一大河川清掃イベントを継続開催。地域住民の大和川への愛護精神を育むことで、現在はかつての清流を取り戻している。

汚染原因の7割を占める生活排水への配慮を呼びかける

1960年当時は天然アユが生息し、泳いで遊べるほどきれいだった大和川。高度経済成長での急激な都市化・人口増加に伴う生活環境の変化のなかで、生活排水が河川に流れ込み、70年代に汚染が進んだ。危機意識を持った国と自治体は下水道のさらなる整備に加えて、地域住民の生活排水への配慮を促すPR活動を展開し、その結果、2011年には一級河川のなかで、「過去10年間で水質が大幅に改善されている河川」全国第1位になった。国土交通省近畿地方整備局 大和川河川事務所の加藤敏夫副所長は取り組みについて語る。

「汚染が進んだ河川の水質検査を定期的に実施し、どの地点にどのような汚れが分布しているのかを掌握して、流域に位置する大阪府・奈良県と共有し対策を講じるとともに、広報媒体などを使って地域住民の生活排水への配慮を呼びかけてきました。地道なPR活動の結果、下水道施設の拡充とあわせて大和川の水質は年々改善され、近年はアユの産卵や遡上も確認されるようになりました」

現在、下水道普及率88.8%(18年度末)と、全国平均(79.3%)を上回ったことが水質改善の大きな要因。しかし、流域のなかには有機性汚濁の指標であるBOD75%値5.0mg/l(魚が住めるレベルの水質基準値)を超える地点もまだあるため、汚染要因の7割を占める生活排水について、「残さない」「ふき取る」「流さない」工夫など、引き続き住民意識の向上に取り組んでいる。

府県を跨る2万人規模の一大清掃イベントを継続開催

水質改善の取り組みに呼応して、1996年11月3日、大阪府・奈良県知事と国土交通省近畿地方整備局長が出席する「大和川水環境サミット」が開催された。「来年3月に1万人規模の大和川クリーン作戦を実施したい」という大阪府知事の発言をきっかけに、広域・大規模清掃活動の実現に踏み出す。97年3月2日に、84年から地域住民主催で行われていた「石川大清掃」とタイアップする形で、「第1回 大和川・石川クリーン作戦」が開催され、以後、毎年3月の第1日曜日の午前中に大規模な清掃活動が行われている。

一方、大和川上流側に位置する奈良県でも、上流域のごみが流下して大阪湾へ流れ込む問題認識のもと、同作戦の開催日に市町村ごとの河川清掃を行っていたが、2009年3月から大阪府域と連携を強め、一大清掃活動の一環として「大和川一斉清掃」を実施するようになり、全体で約2万人規模(大阪府約7割、奈良県約3割)の清掃イベントに進化した。

「同日開催のイベントとして2府県が協働する事例は全国でも珍しいと思います。両府県各自治体の100カ所を超える会場(メイン会場は両府県の2カ所)で行っていますが、大和川河川事務所は河川管理者として、メイン会場の現場運営や各会場の連携をバックアップしています。過去10年間の継続開催で累計約23万8,000人が参加し、累計1,876トンのごみを回収しています」と、国土交通省近畿地方整備局 大和川河川事務所の新井仁占用調整課長は言う。

活動の継続とさらなる対策を河川管理者として支援

毎年約2万人の参加者は、自治会の老若男女、地域住民の家族、毎週河川敷で練習をしている少年野球チームの子どもたちと父兄、地域事業所の社員など、多彩な顔触れが揃う。

「皆さん自然体で当たり前のように参加されているのは、継続開催の過程で地域の年間行事として定着し、生活に根付いている証です。毎年目新しいことをやるよりも、“変えずにこれからも続けていく”ことに大きな価値があると考えています」(加藤副所長)

「かつて清流だった河川がワーストワンになったことに対して、過去の美しい河川環境を取り戻そうという思いが地域の方々に強くあり、それが大規模な清掃活動を一斉かつ継続的に実施する原動力になっています。環境保全へのこうした思いの強さは他の河川と異なる特徴だと思います」(新井課長)

ここ10年の大規模清掃の継続開催により、河川環境の改善だけでなく、水質汚染の主原因である生活排水に配慮する意識が高まった一方で、いまだにごみのポイ捨てがなくならないのも現実だ。

「実際に清掃活動に参加すると、ごみを集める大変さがよくわかります。捨てる人が1人でも減るように、まだ参加されていない方もぜひ一度参加してほしいと思います。理想は清掃活動をしなくてもきれいな川であり続けることです」(新井課長)

「自転車や家電などの不法投棄も後を絶ちません。罰則を含めてそこに対する防止策を自治体や所轄の警察などと連携・協議していきたいと思います。今後も河川管理者として、自治体の取り組みを継続的に支援していきます」(加藤副所長)