分別収集の事例
親子でいきいきと参加する学校での取り組み
【千葉県市原市】(平成18年9月)人口:280,327人、世帯数:110,108世帯
子ども育成活動の財源と環境学習としての両面を重視
市原市では昭和54年から「資源回収推進事業」(団体回収)の名称で地域住民と資源回収業者の民間取引である集団回収を推奨し、支援しています。市内では、自治会、PTA、子供会等現在約240団体が回収を実施し、市人口の50%以上の市民が参加しています。特にPTAによる回収が多いのが特徴で、財源の足しとすると同時に子供にとっての環境学習としての側面も大切にし、コミュニティ活動として実施しているケースもあります。回収品目はスチール缶・アルミ缶・びん・古紙・故繊維ですが、一部の団体ではペットボトルも含まれます。平成17年度で全資源5,077t(うちスチール缶を中心とする鉄類317t)が回収されています。
自治会と連携して回収量を増やす
市内のT中学校では年4回、休日に回収が行われています。実施団体は学校のPTAですが、事前に学区内の自治会を通じて回覧板を回し、住民一般に排出を呼び掛けています。午前中、班に分かれて生徒(美化委員・生徒会役員)、保護者(PTA)が軽トラックで学区内を回り、各家庭の門前に排出された資源を校庭に搬入します。スチール缶とアルミ缶は混ざっているものもあるので、識別表示マークを見ながら再度分別します。
分別収集の約1/3の費用で資源化実現
市では実施団体に対し4円/kg(ペットボトルは10円/kg)の助成金を支給しています。また資源回収業者には、回収品目の市況が悪い場合でも取引が成立するよう助成金を支給していますが、水準を適正にするため再生資源相場を考慮して単価を毎年検討しています。現在鉄類では回収業者に4円/kgの助成金を支給しています。また市では市民に対し収益金やコミュニティづくりへのメリットの他に、ごみ処理費の削減に寄与することを強調、集団回収は分別収集の費用の約1/3(分別収集30円/kgに対し集団回収10円/kg)で資源化が可能なことをアピールしています。
親子で参加するにぎやかな回収
保護者の立ち会い当番は厳密には決めておらず、生徒たちも一緒に都合のつくメンバーがにぎやかに参加するスタイルです。生徒達のいきいきとした動きと保護者の方の「活動資金の足しにもなるし、子供達にも環境の大切さや分別の仕方を学んでもらえるので、『この子達のために』という気持ちで取り組んでいます」という一言が印象に残りました。
大規模集合住宅のコミュニティ活動としての取り組み
【兵庫県明石市】(平成18年9月)人口:290,990人、世帯数:112,813世帯
ごみ処分場の確保とコミュニティ活動推進を目的に
ごみ処分場の残余容量確保がさし迫った明石市では、平成3年7月からごみ減量、コミュニティ活動推進の2点を目標に集団回収支援に乗り出しました。当初は、古紙・リターナブルびん・アルミ缶が対象でしたがその後ワンウェイびん・スチール缶も対象となりました。
大規模集合住宅で自治会主体の回収を実現
数年前からワークショップ形式で集団回収のモデル事業を行ってきました。成果を収めた事例に分譲マンションFハイツ(約600世帯1800人が居住)があります。以前から子ども会が古紙・アルミ缶の集団回収を実施していましたが、アルミ缶の半数はもやせないごみに出しスチール缶・びん類は未回収でした。住民による検討の結果、自治会が主体となりスチール缶・びん類・ペットボトルをも含めた回収を実施しています。
戦略的に学校や集合住宅での取り組みを推進
参加団体数は当初336団体でスタートし、現在は469団体にまで増加しました。全市的な団体数は増加していますが、自治会・町内会・子ども会の数は微減傾向にあります。そこで16年度から環境学習と将来への布石として全市の幼稚園から高校まで約60校に働きかけ集団回収を実施しています。また今後は戦略的に集合住宅での取り組み推進に力を入れていく予定です。
「立ち会いボランティアは無理なく」が継続の秘訣
コンテナや袋のセットは前日の夜に行い、早朝からの出勤者も排出可能な体制をとっています。子供を幼稚園・学校へ送る途中の排出も多く環境学習効果もあります。自治会長及び会員から募集したボランティアが世話人となり現場に立ち会い、排出住民への分別指導(アルミとスチールの区分、びんの色分け等)、リターナブルびんの抜き取り、資源の整理等を行います。ボランティアは1時間15分刻みで6時30分から3シフトがあり、途中で切り上げるケースも認めるなど無理のない選択を願っています。当番制でないので負担感がないのが続けられる秘訣ともなっています。
実施団体には一定の助成金を維持業者には相場を考慮しながら調整
市では、集団回収のコミュニティ行政上の意義を認め実施団体へは一律5円/kgの助成金、コンテナや袋等の物品交付を継続していますが、回収業者への支援は相場を考慮し適宜調整するという方針をとっています。スチール缶は当初逆有償品目だったので15円/kgの回収協力金を支給していましたが、再生資源相場がその後回復してきたので現在では付けていません。
1000回以上の住民説明会により、ごみの減量を
【長野県長野市】(平成17年6月)人口:383,221人、世帯数:144,147世帯
昭和57年から可燃・不燃・資源ごみの3分別収集を開始、その後、資源対象物を拡大し、現在は全域で7分別収集を実施しています。平成16年から始まったプラスチック製容器包装の分別には、市が約1100回の住民説明会を行い、市民の理解のもとスタートしました。 ごみの減量と分別を図ること及び公平な負担を目的に、平成8年から家庭ごみ指定袋実費負担制度(※)が導入されています。このような取り組みにより、全国平均15.9%を上回る23.4%のリサイクル率(平成16年度)を達成しています。
「サンデーリサイクル」など市民・事業者・行政の協働で効率的な仕組みを構築
参加団体数は当初336団体でスタートし、現在は469団体にまで増加しました。全市的な団体数は増加していますが、自治会・町内会・子ども会の数は微減傾向にあります。そこで16年度から環境学習と将来への布石として全市の幼稚園から高校まで約60校に働きかけ集団回収を実施しています。また今後は戦略的に集合住宅での取り組み推進に力を入れていく予定です。
市では、昭和40年代の長野市大合併にともない、収集体制の見直しを行い、委託体制を大幅に拡充し、直営体制を削減しました。このことで収集コストの低減化が図れるとともに、委託業者による組合が昭和61年に設立されたことで安定的な収集体制が維持されています。 缶などの資源物の選別は、市民の意識が高いことにより排出段階での分別の徹底がなされており手選別はまったく行われずに中間処理されています。また、スチール缶の収集は4週に1回となっています。それを補完するために、市民と事業者(スーパー)の協力のもと、週1回の拠点回収を平成7年8月から始めています。毎週日曜日に「サンデーリサイクル」と名を打って、スーパーなど14カ所の駐車場に収集車両が派遣され、市民が買い物ついでに資源物を排出する場所が確保されています。 このように、地道に市全体として効率的な仕組みを、市民・事業者・行政の協働で構築されています。ステーションでのごみ当番制などコミュニティが存在することによる効果といえますが、今後は単身者などの増加による対策が課題とのことでした。
※(1世帯につき指定袋200枚/年までの購入チケット配布、それ以上はごみ処理手数料含み30円/枚)
民・事業者・行政のパートナーシップによりリサイクル率30%以上をめざす
【宮城県仙台市】(平成17年6月)人口:1,027,034人、世帯数:144,088世帯
仙台市では、昭和59年度から缶・びんの分別収集をスタートし、平成9年度からはペットボトル、平成14年度からはプラスチック製容器包装も全市域を対象にして、資源化事業を進めています。スチール缶などの金属類は、家庭ごみへの混入は非常に少なく、分別排出のルールがしっかりと市民に根付いています。 平成16年度に見直された「仙台市一般廃棄処理基本計画]では、平成16年度のリサイクル率22.8%から、平成22年度までには30%に向上させる事を目標としさらなる減量リサイクルを推進することとしています。
[100万人のごみ減量大作戦」~「ワケルくん」が子供たちに大人気
平成11年度から「100万人のごみ減量大作戦」キャンペーンを毎年実施しています。平成14年度からはメインキャラクターとして「ワケルくん」が登場し、分別の徹底を呼びかけています。専用Webサイトは当初180万人ものアクセスがあるなど、大きな反響がありました。さらに「ワケミちゃん」が紙類分別を、「セツコさん」が3Rの推進を呼びかけるなど、ワケル君の家族も登場し、若者や子どもたちに親しみやすいキャラクターとして定着しています。 さらに紙類のリサイクル推進のため、仙台市では集団資源回収を柱として取り組んでいますが、市民の皆さんが参加しやすいよう公共施設やスーパー、資源回収業者のヤードを紙類回収拠点として位置づけ、リサイクルに取り組んでいます。
民間委託によりごみ処理費用を大幅に削減
仙台市の市民1人当たりのごみ処理費用(資源か処理費含む)は1人当たり約12,000円/年で、市が収集費用のコスト削減のため、7カ年計画で収集部門の民間委託を進めた事などにより、大都市の中で割合コストが低く抑えられています。今後は、資源化センターの更新時期を迎え、建設費用などが課題となるほか、センターに搬入される資源化物の品質のばらつきが大きいことも指摘されています。
”ごみ非常事態宣言”と共にゴミ減量・資源か率アップを達成
【愛知県名古屋市】(平成16年5月)人口:2,198,633人、世帯数:941,830世帯
名古屋市は、本州中央部の濃尾平野に位置し、全国で4番目の人口を誇る有数の大都市であり、中部地方の経済の中心でもあります。 この名古屋市では、平成11年1月に、藤前干潟でのごみ埋立計画を断念した後、「ごみ非常事態」を宣言し、ごみ減量と資源化の促進に取り組んできました。その結果、ごみの量は平成10年度と比較して4分の3に激減し、反対に資源化量は倍増しています。この資源化量は、住民一人あたりに換算すると、大都市の中でもトップクラスの値になります。
資源化事業の拡大と市民の努力が成功のカギ
「非常事態宣言」後、市は同年にびん・缶収集を全市に拡大し、また紙製容器包装、プラスチック製容器包装の収集もスタートさせました。平成13年にはペットボトルを含めた資源5品目の収集を週1回に増やしています。新聞・雑誌等の古紙は集団回収や「リサイクルステーション」という市民団体の資源回収のしくみが広がっており、高い資源化率を達成・維持しています。また、びん・缶も資源収集量が増加しています。これらは、市と市民及び事業者が共にごみ減量や資源化に努力した結果です。 スチール缶の収集量は平成15年度の実績で年間4,937トンで、平成10年度の4,113トンと比較して20%増えています。さらに、破砕工場では不燃ごみの中からも金属資源が回収され、資源化されています。
名古屋市のスチール缶の資源収集の流れ
”混ぜればごみ、分ければ資源” 資源ごみの分別を続けて四半世紀
静岡県沼津市
可燃ごみ、不燃ごみ、そして資源ごみ。市町村によるごみの分別収集は、いまや当たり前となったが、このシステムを考案し、全国に先駆けて1975年4月全市一斉に始めたのが、静岡県沼津市でした。70年代に入ると、埋立地の確保や完全焼却ができる清掃工場の整備が急務となり、74年6月に不燃ごみステーションの分類調査を行なった結果は、不燃ごみの3分の2はあき缶などの有価物でした。
市民に一定の役割を担ってもらいたい。これが分別排出の発想の原点となったわけですが、ここで市職員の意見は“できる”“できない”“?”の3つに分かれました。それは分別排出という発想が、納税者である市民に手間をかけさせないのが理想的な住民サービスである、という行政思想と全く異なるものだったからです。 果たして市民の協力が得られるだろうか。もちろん批判の声はありました。しかし、“なぜもっと早く言ってくれなかったんだ ”“それくらいは市民の義務だ”など、予想外に多くの温かい励ましを受けました。こうして多くの自治会が、率先して資源ごみ収集に協力してくれるようになったのです。 清掃行政を市に任せるのではなく、市民自らが社会的責任を自覚し、一体となってごみの減量・資源化を図る。この沼津市での分別収集システムは、「沼津方式」と呼ばれるようになり、その後全国各地へと広まりました。
沼津市では、99年4月からプラスチックごみも加わり、現在4分別収集が行われている。99年度の資源化量は1万2,210t、資源化率は22.6%におよび、さすがに市民のごみ問題に対する意識は非常に高い。