カーボンニュートラルに向けて
スチール缶をもっとエコに
つくるときのエコ
さらなる軽量化と製造工程の見直し

図1.最軽量スチール缶の開発 資料提供:東洋製罐(株)
鉄鋼メーカーと製缶メーカーは長年、スチール缶をつくるときのCO2排出量削減を極限まで追求してきた。例えば日本製鉄(株)と東洋製罐(株)が2018年に共同開発したTULC(※1)の低陽圧缶(※2)は、容器の強度はそのままで、これまでの低陽圧缶仕様に対して約6%、広く使用されている陰圧缶(※3)に対して約40%の軽量化を実現した(図1)。缶の加工前の板厚はこれまでの低陽圧缶が0.185mm、陰圧缶が0.225mmだったが、開発缶用は0.170mm。板厚が薄くなると鋼板中の介在物の影響を受けやすく、缶が破断しやすくなる。しかし、介在物を極力低減する技術を高めた極薄鋼板を開発することで、スチール缶をつくるときに使用する資源量を減らすリデュースを加速させ、CO₂排出量など環境負荷の低減に貢献している。
また、スチール缶をつくるときに排出されるCO₂の大半は、塗装・印刷後のオーブン工程で生じている。そこで、製缶メーカーはオーブン工程をなくし、印刷済PETフィルムのラミネート工程に置き換えた。内外面にPETフィルムをラミネートしているため、飲料などの内容物の品質を担保する上で不可欠だった内面塗装が不要になり、CO2排出量を大幅に削減している。例えば大和製罐(株)ではCO2排出量を、フィルムラミネート化によって15%削減するともに、缶胴板厚の薄肉化を可能にしたECOビード化によって缶重量を10%軽量化してCO2排出量をさらに3%削減し、合計で18%削減に成功している(図2)。

図2.フィルムラミネート化と軽量化でCO2排出量削減 資料提供:大和製罐(株)
(脚注)
※1.TULC(Toyo Ultimate Can):材料・生産プロセスを根本から見直し、加工時にクーラント(潤滑・冷却剤)不要、廃水処理不要、内面塗装不要な環境保全性を飛躍的に高めた。
※2.低陽圧缶:缶の内圧が外気圧より高い(陽圧)状態のため、缶胴が薄くても強度を保持。缶底がフラットな形状で、陰圧缶詰用の品質検査の打検システム(音波を利用した検査方法で、缶底を叩いてその音の振動数を解析し、製品の内圧を判別)を使用できる。
※3.陰圧缶:缶の内圧が外気圧より低い(陰圧)状態のため、缶の剛性により強度を保持。
使い終わってもエコ
何にでも、何度でも生まれ変わる
スチール缶はつくるときだけでなく、使い終わったあとリサイクルされているため、さらなるCO2排出量の削減に寄与している。スチール缶のリサイクル率は2024年度現在94.4%を達成している。これは欧米諸国などと比べても極めて高い値だ。
スチール缶のリサイクル率が非常に高い理由は、各家庭からの分別排出から始まり、市町村による分別収集、資源化センターや廃棄物処理場での磁力選別、そして製鉄工場で全量が製品に再利用されるリサイクルルートがしっかりと確立されているからだ。具体的に見てみると、家庭などから集められたスチール缶は、まず自治体の資源化センターなどに運ばれる。スチール缶の素材である鉄は磁石にくっつくため、磁力選別機でスチール缶などの鉄だけを容易に集めることができ、そのまま圧縮されて他素材の混入の少ない高品質の鉄スクラップになる。鉄スクラップは全国75カ所にある最寄りの製鉄工場(図3)に運ばれ、他の鉄スクラップや、銑鉄と呼ばれる鉄鉱石からつくらた新鉄と一緒に混ぜて溶かされ、全量が新たな鉄(粗鋼)に再生される。そこから、スチール缶や自動車、家電、鉄道、船舶の材料、ビルや橋梁といった建設資材など、さまざまな鉄鋼製品に「何にでも」「何度でも」生まれ変わっている。
こうして使い終わったスチール缶をリサイクルして鉄をつくることにより、天然資源から鉄をつくるときと比べてCO2排出量を約4分の1に減らすことができ、エネルギー消費量も約70%削減している。
環境負荷の見える化
エコアクションへとつなげる
スチール缶がCO2排出量削減など環境適性の高い容器包装であることを、もっと多くの消費者に知ってもらうため、鉄鋼メーカーではスチール缶の飲料容器や缶詰容器などに用いられる鋼板製品で「エコリーフ環境ラベル」(2025年4月からSuMPO EPD環境ラベルに移行)の認証を取得し、環境負荷の見える化に取り組んでいる。
エコリーフ環境ラベルとは、製品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体における環境負荷の定量的開示を行う制度で、日本では一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が環境ラベルプログラムを運営している。スチール缶素材をつくっている日本製鉄(株)、JFEスチール(株)、東洋鋼鈑(株)は、地球温暖化へ影響を及ぼすCO2などの温室効果ガスの排出量をエコリーフ環境ラベルやSuMPO EPD環境ラベルで積極的に公表。その鉄でつくられているスチール缶を容器に使用している、缶コーヒーなどの最終商品に環境ラベルが掲載されている。
未来が今よりも、もっと地球にやさしい世界になるために。スチール缶で包装された商品を選択するエコアクションへとつなげる行動の証として環境ラベルを活用し、環境情報を見える化することにより、事業者と消費者との間で環境負荷削減努力のための相互理解とコミュニケーションの促進を図っている。
これからの挑戦
GXスチールの利用
各地で異常気象が発生するなか、気候変動という地球規模の課題の解決に向けて、日本は2050年までに温室効果ガスの排出をネットゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言している。スチール缶も環境価値をさらに高めるため、GXスチールを使った飲料容器や缶詰容器がつくられ始めている。
GXスチールとは、鉄鋼メーカーが自らコストを負担して実施したプロジェクトによって実際に削減されたCO2などの温室効果ガス排出削減実績量を、任意の製品に配分して証書とともに供給する鉄鋼製品だ。鉄鋼製品の性能や品質を維持しながら、GXスチールを購入した企業のスコープ3(※4)やカーボンフットプリント(※5)の削減に寄与することができる。製缶メーカーがGXスチールを採用することで、原材料の製造や調達などのバリューチェーンにおける温室効果ガス排出量を削減できるとともに、カーボンニュートラルへの移行(グリーントラジション=GX)を推進することにつながる。
例えば日本製鉄(株)が供給する温室効果ガスを削減した鋼材「NSCarbolex® Neutral(エヌエスカーボレックス ニュートラル)」というGXスチールは、これまで側島製罐(株)製の洋菓子缶(写真1)や、大和製罐(株)製の門司港レトロビール(株)のクラフトビール缶(写真2)に使われてきた。さらに2025年10月には日本相撲協会設立100周年を記念して、米菓メーカーとして全国的に有名な(株)もち吉が販売する「決まり手煎餅」缶(写真3)にも採用されている。またJFEスチール(株)が供給するGXスチール「JGreeX®(ジェイグリークス)」は(株)モノファクトリーの缶バッチ(写真4)に採用され、スチール缶と同じ素材が使われている。こうしたカーボンニュートラルへのグリーントラジションにつながるGXスチールの普及拡大を鉄鋼業全体で取り組んでおり、社会における脱炭素化ニーズにいち早く対応する製缶メーカーをはじめ、さまざまな業界でGXスチールの利用が進んでいる。
スチール缶をもっとエコに。カーボンニュートラル社会の実現に向けたスチール缶の挑戦はこれからも続く。
(脚注)
※4.スコープ3(Scope3):自社の事業活動に関係するあらゆるサプライヤーからの温室効果ガスの排出。Scope1(自社の燃料の燃焼や工業プロセスに伴う直接排出)、Scope2(他社から供給された電気・熱・蒸気などのエネルギー使用に伴う間接排出)以外の間接排出。
※5.カーボンフットプリント(CFP):製品・サービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通した温室効果ガス排出量を、CO2排出量に換算した値。

写真1.Canday(キャンディ)缶
写真提供:側島製罐(株)

写真2.門司港ビール
写真提供:門司港レトロビール(株)

写真3.決まり手煎餅
写真提供:(株)もち吉

写真4.缶バッチ
写真提供:(株)モノファクトリー
