ものを大切にすることが難しい時代だからこそ。
高橋英樹(俳優)
一般の方の多くは、できれば面倒なことはやりたくない、ごみの分別や処理は国や市区町村にやってほしい、と思っています。でもそれは、どんなふうに処理されているかを知らないから。自分の手を離れたごみに膨大な金額がかかっていることやそれが自分たちの税金であること、多くの人の手と設備で処理されていることを知れば、少しはきれいに洗ってから捨てようとかごみを減らそうという気持ちになるのではないでしょうか。
また、例えば中央高速道路の中央分離帯は、車から捨てられたタバコの吸殻や飲み物のごみでひどく汚れています。自分の車はピカピカに磨いてごみは外に捨てる、そんな日本独特の恥ずべき感覚の象徴とも言えます。
他にも家庭ごみを捨てられてしまうという理由で、コンビニエンスストアや駅のごみ箱が消えたり、最近では、バーベキューを楽しんだあとの食べ残しや、ひどいときには道具一式を捨てる人が絶えないということで、東京都狛江市が多摩川河川敷でのバーベキューを禁止しました。残念ながら日本は、ものを大切にすることやごみに対する教育を怠ってきたようです。ごみを処理しなければ地球は滅びてしまう。そのことを子どもから大人まで全ての人に、しっかりと伝え、教育し続けることが必要な時代なのだと思います。
昭和40年代頃まではごみは有料だったらしいですね。でも「ごみを無料にします」という選挙の謳い文句に乗せられて、今では市区町村の多くでごみが無料になっています。でも結局は税金として徴収されているので、無料はタダではありません。みんな目の前の甘さに弱いんですね。もっとごみにかかる金額を明確にして、分別や減量をがんばれば使われる税金が減るということが目に見えてわかればいいですよね。そうすれば分別も楽しくなります。楽しさって大事。義務と感じると反発する人も増えますし、楽しくないことは耳に入りにくいですし。
ごみは増え資源が枯渇していく中で、スチール缶は使ったあとも鉄として再利用できる優秀な資源ですよね。しかも日本のリサイクル率が9割とは知りませんでした。ぼくらが子どもの頃は鉄がとても貴重で、小遣い稼ぎによく鉄くずを拾いました。一度、汽車の車輪を鉄くず屋に持っていったら、すぐに通報されて大目玉をくらったことがあります。車輪が落ちているわけがないだろうって(笑)。
あの頃は、生きることとものを大切にすることが直結していましたが、今はぼくも含め、ものを大切にする気持ちを持ちにくい時代です。だからこそ、国民全員がごみの知識を持てるように、伝え、教育することが必要だと思います。知れば日本のごみは圧倒的に少なくなるだろうと思います。
千葉県生まれ。高校在学中の1961年に日活ニューフェース5期生として日活入社、「高原児」で映画デビュー。「激流に生きる男」「男の紋章」シリーズで主演として活躍。以後「けんかえれじい」「戦争と人間」「伊豆の踊り子」など、映画黄金時代に多数出演し活躍する。その後、1976年には日本テレビの「桃太郎侍」で一世を風靡する。近年はバラエティー番組にも多数出演し、明るく気さくな人柄が幅広い年齢層に支持されている。