健やかな子どもたちを育てることが、健やかな未来を作ることだと思います。
竹下景子(女優)
国連WFP協会やJCVのワクチン大使をさせていただいているのは、自分の子どもが健やかに育ってほしいと思う延長なんです。子どもを育てるまでは、仕事にしても自分のことにしても「一人で大きくなった」と思う気持ちがありました。でも自分で子どもを育ててみると、親がいないと育たないし、親だけでも育たない。私もこうしてまわりに育ててもらっているんだなと思えるようになりましたし、子どもを通して社会を見ると、世界のニュースが決して他人事ではないと感じるようにもなりました。
国連WFP協会に協力しようと思ったきっかけは「脱脂粉乳」なんです。小さい頃に給食で飲んでいた脱脂粉乳が、食糧事情の悪かった日本にユニセフが援助していたものだと知って、お世話になった恩返しをしたいと思いました。世界では常に8億人が飢え、5歳以下の子どもは5秒に1人が命を失っています。そして最低限の栄養が足りないために病気を予防するワクチンさえ打てない子どももいます。子どもは未来の希望のはずなのに・・・。環境問題もそうですが、世界で2番目に裕福で、海のもの山のものをいつでも食べられる日本は、他の国の海や山の犠牲の上で成り立っていること、世界と私たちはつながっていることを忘れないためにも、子どもたちのためにできることをしていきたいと思っています。
その豊かな日本の子どもたちは、最近メールに代表されるように、直接人と関わることが苦手な傾向にありますよね。でも一昨年、「愛・地球博」の日本館総館長を務めたときに出会ったアテンダントの若者たちを見て、とても嬉しくなりました。来場者のため、万博のために、みんなが一つになって涙ぐましいほどの熱意で取り組んでいました。生に人間と触れ合うことで、今の若者もこんなに熱くなれるのかと感動しましたし、閉会のときは、成功した喜びと終わってしまう寂しさに、みんなで一緒に泣いてしまいました。
私の仕事選びのポイントは「未知との遭遇」と「大切な仲間とのつながり」です。全員が一つのテーマに向かって全力を尽くすことを楽しむ現場で仕事をしたいと思っています。昨年の「吾輩は主婦である」も本当にチームワークのいい現場で、きっと見てくださった方にもその雰囲気が伝わったのではないかと思います。今までに経験したことがない役でしたので、お話をいただいたときはとてもビックリしましたが、こんなチャンスは二度とない!と思い、即お受けしました。振り返るとやりたくなかった仕事はなかったように思うんです。作品や仕事に恵まれているとも、苦にならないとも言えるけれど、根が気楽なのかもしれませんね(笑)。
環境も貧困の問題も、元になるのは、大自然を見て素直に感動できたり、人と直接関わることで熱て素直に感動できたり、人と直接関わることで熱意を持って行動できる、心と体を持った子どもたちを育てることだと思います。だから私は、子どもたちが健全に育つ社会づくりを、ずっと考え続けていきたいと思います。
1953年愛知県出身。1973年ドラマ『波の塔』でデビュー。『北の国から』、大河ドラマなど多数のテレビ番組や、『男はつらいよ』(1983、87、89)など映画にも多数出演。『学校』(1993)で第17回日本アカデミー賞優秀助演女優賞など受賞も多数。テレビ、映画、舞台に活躍中。2004年よりJCVのワクチン大使、2005年より国連WFP協会顧問、2005年『愛・地球博』の日本館総館長など、世界や社会の今を伝える活動も行なっている。