“いつも歩いている道は自分の庭”という思いがあれば、 ごみを拾おうと手が伸びますよね。
増田明美(スポーツライター)
NHKの「ひるどき日本列島」というテレビ番組にレギュラー出演していた頃、必ず取材先のまちを1時間程度走っていました。その中で最も印象深かったのは、樹齢400年を超える杉の恵みを活かした木材のまち・鳥取県智頭(ちず)町です。私はいつものようにまちを走っているうち、智頭町の人たちがみんな自分の家のまわり200メートルぐらいを掃除していることに気づきました。お婆ちゃんに声をかけたら、「これは当たり前のことで、別にまちの決まりになってるわけではないのよ」とのことでした。智頭町の道にはごみは落ちていませんし、道のわきにある水路にも澄んだ水が流れていました。こうした美しい風景に導かれて、気づいたら90分も走っていました。
智頭町のように、まちを美しくしようと努力されている人たちは、たくさんいらっしゃると思います。でも、東京のような都会では、どうしてもポイ捨てされた吸い殻やあき缶、カラスやネコに食い散らかされたごみが目立ちますよね。”自分がいつも歩いている道は自分の庭だ いう思いがあれば、ごみを拾おうと手が伸びるものです。そういう意味で、元プロボクサー世界チャンピオンの輪島功一さんにとても感動しました。ある日、公園をジョギングしていると、私の前をイヌを連れてガニ股で走っているオジサンが、なぜか時々しゃがむんです。気味が悪いのでサッーと追い抜こうとしたら、その人が輪島さんだったんです。わけを聞いてみると、「散らかっているごみを拾えば公園はきれいになるし、しゃがむことで足腰がさらに鍛えられる。それにイヌを散歩させてるんだから”一石三鳥 だよ」と教えてくれました。なるほど!と感心しましたね。
みなさんも時間に余裕があるとき、朝の20~30分間まちを散歩してみてください。歩くことは全身運動で、体内の脂肪を燃焼させ肥満防止に役立ちます。それに朝の清々しいまちを歩けば、季節の変化を素直に感じ取れたり、景観を損ねている散乱ごみについて考えたりで、知らず知らずのうちに自分の体や心だけではなく、まちの環境についてもきっと意識するようになるはず。自分やまちがリフレッシュされていくのを目の当たりにするのは楽しいものです。さあ〜みなさん!ウォーキングで美しいプロポーションづくりにチャレンジしてはいかがでしょう。(談)
増田明美(ますだ・あけみ)1964 年千葉県生まれ。元マラソン選手。84 年ロス五輪に出場。92 年引退後はテレビ・ラジオでのマラソン解説をはじめ、スポーツライターとしてエッセイを多数寄稿、タレントとしても活躍中。その一方、日本各地の市民ランナーへのマラソン指導や講演活動を通して、走る楽しさを伝えている。著書に『さあ走りましょう』(毎日新聞社)『おしゃべりランナー』(リヨン社)など。
Hair & Make-up:川村朋子(表紙ともに)