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STEEL CAN AGE

MY ANGLE

ロボットと一緒にビーチクリーン
海をきれいにする社会づくり

四方を海に囲まれている日本では、海流などの影響を受けて、海ごみが海岸に漂着しています。私たちが海水浴やフィッシング、キャンプなどを楽しんでいる海は、ビーチクリーン活動によって支えられています。しかし大量に打ち寄せる海ごみによって、ビーチクリーン活動の負担が大きくなっています。九州大学准教授の清野聡子さんは、ロボットを活用することで、楽しく効率的な清掃活動に転換し、海をきれいにする社会づくりに挑戦しています。

徒労感や負担を解消したい

九州大学大学院工学研究院環境社会部門
准教授
一般社団法人BC-ROBOP海岸工学会 理事長
清野 聡子さん

清野さんは福岡県内をはじめ長崎県の対馬や壱岐、五島列島などを研究フィールドとして、海洋環境を守る地域づくりをテーマに長年研究に取り組んできました。
「東シナ海や日本海に面した九州西部の海岸には、トン単位のごみが打ち寄せてきます。それらの海ごみは地元住民の皆さんが主体となって清掃しているのですが、すぐにまた海ごみが堆積してしまいます。拾っても、拾っても、また元通りという状況が続き、徒労感が増大しています」(清野さん)

九州西部の沿岸各地では、集落や町内会で海岸の清掃活動(浜掃除)が伝統的に行われてきました。例えば長崎県五島市の福江島では、ウニの解禁日に近い4月に集落で一斉に海藻を拾う祭事が行われるのに合わせて、冬の季節風と海流によって打ち寄せられた海ごみの清掃活動が行われていました。
「福江島の浜には発砲スチロール、漁具、ビン、スチール缶、アルミ缶、ペットボトルなどが大量に漂着します。そのなかでペットボトルの製造国別の組成を調べたところ、日本だけでなく中国や韓国、ベトナム、マレーシアなど多様な近隣諸国からの漂着現象が見られました。国際的な取り組みが必要な問題になってきています。海と日常生活とのつながりがあれば、地域住民は清掃活動を行う動機があるのですが、高齢化や人口減少によって漁村が衰退したため、福江島では海ごみの清掃活動自体が廃止されてしまいました。人手不足は離島だけに限ったことではありません。漁具のロープが砂の中に埋もれていたら人力では対応できませんし、大量に堆積する海ごみを人力で回収することにも限界を感じていました。そのような状況を少しでも改善するため、ロボットに着目し、ビーチクリーンロボットプロジェクト(BC-ROBOP)の活動を福岡県宗像市の市民団体や九州工業大学の研究者と協働して2017年4月にスタートし、2018年6月には一般社団法人BC-ROBOP海岸工学会を設立しました」(清野さん)

清掃活動の次代を担う
子どもたちや若者を育てる

ビーチクリーンロボット

ビーチクリーンロボットの開発は、九州工業大学の社会ロボット具現化センターが担い、林業用ロボット製作で得た知識と技術を活かして、砂浜で自走移動しながらごみを運搬するロボットを完成させました。このビーチクリーンロボットは90ccガソリンエンジンを搭載し、後ろに取り付けた海ごみ回収ボックスをけん引。人が歩きながら海ごみを拾うことができる速度で、50~60メートルほどの海岸を2時間走ることができます。世界文化遺産に登録された宗像大社の大島沖津宮遥拝所海岸で、ビーチクリーンロボットを使って清掃活動を行ったところ、最大で1袋60リットル60~80袋分の海ごみを回収できることがわかりました。
「ロボットが登場しますと、清掃ボランティアに多くの子どもたちが参加してくれます。掃除後はロボットを操作してもらうなど、遊びを交えながら積極的に接しています。子どもたちに評判がとても良いです。海は楽しいということを伝えていきたいと思います。また現在、ビーチクリーンロボットプロジェクトは学生たちが中心となって技術交流ミーティングが行われ、ロボット技術の向上を図っています。海岸環境とロボット工学に興味を持つ若者を育てる場になっています。学生たちは大学枠を超えて火星探査機開発の世界大会にもチャレンジし、宇宙開発で培った技術の地球環境への還元を目指しています」(清野さん)

海ごみは近年、発泡スチロールの破片が問題となっています。発泡スチロールは梱包資材や断熱材として主に使われているプラスチックです。生態系に大きな影響を与えているマイクロプラスチックの大半が、発泡スチロールの破片で占められていると分析されています。
「海岸に漂着し散乱する発泡スチロールの破片は、人体にも悪い影響を与えます。粉吹雪のように発泡スチロールの破片が舞うような海岸の清掃で、人が立ち入ることは大きなリスクを伴うことになります。ロボットが自動で海ごみを回収できるような技術の開発が進むことに期待を寄せています。そうすると過疎化した集落や、人が立ち入るのが危険な険しく複雑な地形の海岸にも活用できます。これからも海ごみ問題の解決に向けた新しいモデルを提案し、持続可能な社会の形成に寄与することを目指します」(清野さん)

清掃後、ビーチクリーンロボットと触れ合う参加者たち