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STEEL CAN AGE

MAIN REPORT

スチール缶の3R推進自主行動計画フォローアップ報告2009

容器包装のリサイクルにかかわる八団体で構成されている3R推進団体連絡会は、2009年12月16日に東京都千代田区の経団連会館で「容器包装の3R推進のための自主行動計画2009年フォローアップ報告会」を開催した。同報告会でスチール缶リサイクル協会は、リサイクル率88.5%達成やリデュース目標2%軽量化の実現、消費者・自治体・事業者との連携を深める取り組みを公表した。今回のメインレポートでは、スチール缶の3R推進自主行動計画フォローアップ報告を紹介する。

スチール缶リサイクル率88.5%
産構審ガイドライン目標を8年連続で達成

3R推進団体連絡会は、2006年3月に「容器包装の3R推進のための自主行動計画」を公表して以来、関係八団体ごとに2010年度を目標年次とした自主行動計画の取り組み結果を毎年報告している。

関係八団体の2008年度リサイクル率などの実績を見ると、景気変動の影響を受けて一部の容器包装で低下した(表1)。

スチール缶のリサイクル率については88.5%で、経済産業省産業構造審議会ガイドラインで掲げた目標85%以上を8年連続で達成した(図)。

スチール缶が高い水準でリサイクル率を維持している要因としては、消費者の分別排出への意識向上、自治体が実施する分別収集の徹底、鉄鋼メーカーが使用済みスチール缶を原料として再利用するシステムの定着が大きい。

スチール缶のリサイクルは、他の鉄スクラップに混入されて再資源化されているものを含めると、実質的なリサイクル率は100%に近い水準に達しているものと推定される。しかし、近年の鉄スクラップの高品位化ニーズに加え、自動車や家電のリサイクルの進展により、鉄スクラップ取扱事業者がシュレッダー設備を増強したことなどを背景に、高付加価値を付けた缶スクラップの一部が、缶スクラップ以外の規格として流通するようになり、そのスチール缶重量がリサイクル率に反映されていない実態があった。

スチール缶リサイクル協会では、リサイクル率を算出するための再資源化重量の精度をより上げるため、2008年度からシュレッダー処理され製鉄原料として再商品化されたスチール缶重量の調査を開始した。

調査は全国8ブロック(北海道、東北、北陸、関東、東海、近畿、中四国、九州)に分け、シュレッダー処理量の多い鉄スクラップ取扱事業者を個別訪問して実施。その結果、約30社で再資源化されていたスチール缶重量を把握した。スチール缶リサイクル協会は2009年度以降も調査を継続し、スチール缶リサイクル率の詳細な実態把握に努めていく。

スチール缶リデュース率2.01%
2010年度目標を2年前倒しで実現

極限への挑戦絶え間ないイノベーションで材料使用量を削減
容器包装3R推進の中でも、リデュースは地球資源保護の観点から優先的に取り組むべき事項として、循環型社会形成推進基本法に掲げられている。関係八団体は軽量化による素材使用量の削減に取り組んでおり、2008年度も多くの容器包装でリデュースが進展した(表2)。

スチール缶業界では、長年の材料・製缶技術の開発によって軽量化を推進してきた。例えば2004年度時点においても、1970年に比べ190g缶で約20%減、350g缶で約60%減という大幅な軽量化を実現していた。スチール缶は省資源・コスト削減のために軽量化が求められる一方で、安全性維持のための強度も必要なため、これ以上の材料の薄肉化は極めて困難な水準に達していた。

しかし、スチール缶業界は2006年6月、日本製缶協会内にスチール缶軽量化推進委員会を立ち上げ、容器包装関連団体の一員として自主行動計画の中で2%のさらなる軽量化を目標に掲げた。製缶メーカーは鉄鋼メーカー、飲料メーカーとともに技術開発への挑戦を続け、その結果、2008年度には飲料缶1缶あたりの平均重量で2.01%の軽量化(0.72g/缶)を成し遂げ、2010年度目標2%軽量化を2年前倒しで実現した。

次に2%軽量化に向けた製缶メーカー各社の取り組みを紹介しよう。

飲料メーカーの協力で安全性を維持する強度を確保

東洋製罐

東洋製罐(株)では、密封安全性という面で陰圧缶の2ピース化を実現しており、その190g缶胴では全体を薄肉化し、1缶あたり缶重量を28.7gから26.7gに削減し、約7%(2g)の軽量化を果たした。単に板厚を薄くしただけでは缶の強度が落ちるため、容器メーカー単独でのさらなる軽量化には限界があった。その中で今回の軽量化を可能にしたのは飲料メーカーの協力関係だったという。

「飲料の充填工程での負荷低減、衝撃緩和などを一緒になって考慮していただくことで、細かい確認をしながら製品設計を見直すことができました。従来のような充填方法では、軽量化した缶は大きくへこんでしまいますが、そうした悪影響が出ないように強度限界とのバランスを検証しながら、薄肉化と安全性を両立することができました」(同社環境部)

同社は従来缶に比べて環境負荷を大幅に削減した「TULC(タルク)」シリーズ製品について、資源の採掘から素材製造、流通、消費、リサイクル、廃棄までのライフサイクルにわたる環境負荷を定量的に計算し、結果を公表している。また、従来から(社)産業環境管理協会の環境ラベルプログラムによる検証を受け、「エコリーフ環境ラベル」を取得してきたが、今回軽量化を果たした製品についても同様にエコリーフ申請を行っている。

「エコリーフでは、今回の軽量化製品1缶あたりでCO2排出量を2g減らすことができることも検証されています。今後このほかの製品についても、さらなる軽量化を進めていきます」(同社環境部)

多額の設備投資をせず既存製造ラインで軽量化を実現

北海製罐

北海製罐(株)では、3ピース缶胴部の板厚を0.18mmから0.17mmへと薄肉化し、2%の軽量化を実現した。同社の主力製品「クリスタル缶」は、1990年代に板厚を0.20mmから0.18mmに薄肉化していたが、それ以降は軽量化に関してあまり進展がなかった。しかし、八団体によるリデュースの取り組みが追い風となり、鉄鋼メーカーの協力を得る中、鉄鉱石の価格が高騰した時期と重なったことで、材料節減の観点から薄肉化を加速化させることができたという。

「缶胴の強度をいかに維持していくかが技術的なポイントになりました。それをクリアするとともに、工場の機械設備に多額の投資をせず既存製造ラインで実現できたことが今回最大の成果でした。胴部だけでなく底部、蓋部すべてが薄肉化できれば、5%まで軽量化が可能となります」(同社技術開発部)

同社の軽量化への挑戦はさらに続いている。2009年には板厚を0.17mmから0.15mmへと薄肉化することに成功した。

「ここまで進化すると、板材だけで強度を維持することは不可能です。当社独自のフォームパターン技術など、さまざまな加工技術を駆使することで課題となる強度を補完し、差別化商品を開発していきたいと考えています」(同社技術開発部)

環境問題に対する消費者への情報発信と食の安全・安心を追求

大和製罐

大和製罐(株)は2ピース缶を世界で初めてブリキで実用化し、薄肉化による軽量化実績を持っているが、今回3ピースのラミネート缶を対象に2%軽量化に取り組んだ。

「当社3ピース缶はコイルにグラビア印刷したフィルムを貼るラミネート技術を採用しています。この技術によって、印刷乾燥プロセスを省工程化するだけでなく、熱風乾燥時に必要とされた板厚の制限をなくし薄肉化が可能となります。また、薄肉化だけでなく製造時に極力スクラップを発生させない省資源性でも優れています」(同社技術管理部)

さらに同社は2009年、缶重量を10%削減し、CO2排出量も3%削減する「3ピース190g環境対応ラミネートスチール缶」を開発し、軽量化を加速させている。

「缶コーヒーは食の安心・安全を確保するため、充填の際にレトルト殺菌が行われます。レトルト殺菌では温度が125℃まで上昇し、缶胴に大きな圧力がかかります。薄肉化で低下する強度を確保するため、中央部に凹凸加工を施しました」(同社技術管理部)

缶胴中央部の凹凸加工を同社は「ECOビード」と名付け、さらなるリデュースに成功したスチール缶であることを“見える化”し、消費者に向けたPRを展開している。

「容器は飲料メーカーの商品を機能面で支える存在として貢献してきましたが、BtoBが主体で消費者に直接伝える活動はあまり行っていませんでした。しかし環境問題は食の安心・安全とともに、消費者にとって大きなメリットになります。ECOビードは消費者に訴求する情報発信であり、スチール缶の付加価値向上の試みなのです」(同社営業企画部)

 

取材MEMO>
製缶メーカー各社の取材を通じて、日々の創意工夫による技術開発や血のにじむような企業努力の数々によって、2%の軽量化が達成されたことを再認識した。厳しい経営環境の中にあっても、社会的使命を果たす製缶メーカーの底力を見た。その一方で、安全・安心や地球環境負荷軽減の観点から、これ以上の材料削減は難しいのではないかとも感じた。今後の展開が注目される。

 
 

連携を深める取り組み
消費者に対する普及啓発活動を展開

容器包装リサイクル法による分別排出の徹底は、消費者の環境意識を大きく変えた。しかし消費者の環境意識には温度差があり、容器包装の分別排出を熱心に取り組む消費者が増えた一方で、必ずしも意識の高くない消費者がいることも否定できない。消費者が分別排出し自治体で収集した資源物の品質や量にも、地域間で格差が生じている。

3R推進団体連絡会では、こうした実態を解消し、さらなる容器包装の3Rを推進するため、スチール缶リサイクル協会など八団体が共同で、消費者に対する普及啓発活動を展開している。消費者に対する普及啓発活動は「主体間の連携に資する事業者の取り組み」に位置づけられており、「事業者による3R推進に向けた自主行動計画」とともに活動の柱となっている。主な取り組みとしては、消費者・自治体・事業者との連携を促進するためのフォーラムの開催、啓発の場としてのセミナーの開催や展示会への共同出展などがある。

スチール缶リサイクル協会は、八団体共同の取り組みに加え、環境美化や3R推進に関して消費者に対する普及啓発活動を独自に展開している。2008年度には、(1) 協働型(実施団体・回収業者・自治体)集団回収調査、(2) 集団回収を通じて優れた環境学習に取り組む学校への環境学習支援、(3) スチール缶の集団回収を実施している団体への支援、(4) 国内スチール缶リサイクル量に応じたWFP国連世界食糧計画を通じた世界の貧しい子供たちへの食料支援(学校給食プログラム支援)、(5) スチール缶リサイクルを啓発するポスターコンクール、(6) 地域清掃・ポイ捨て散乱防止環境美化キャンペーンなどを実施し、2009年度も継続している。

スチール缶リサイクル協会は、今後とも消費者に向け環境美化や3R推進に関するさまざまな普及啓発活動を展開し、消費者・自治体・事業者の主体間の連携に資する取り組みを推進していく。

 
 

3R推進で循環型社会構築への貢献を目指す
スチール缶リサイクル協会 理事長 内田耕造(新日本製鉄(株)代表取締役副社長)


当協会は使用済みスチール缶の散乱防止や環境美化、再資源化を目的として、メーカーや商社などによって1973年に設立され、今年で38年目を迎えます。その間、資源化施設への支援やリサイクルルートづくりなど、自治体の分別収集システム構築をサポートするとともに、鉄鋼メーカーによるスチール缶スクラップの再利用など、将来の資源循環型社会を見据え活動してまいりました。その結果、地域や市町村でのスチール缶のリサイクル活動の輪が広がり、リデュースについても各事業者の企業努力により2%の軽量化目標を達成しました。今後も当協会は3R推進団体連絡会の一員として、使用済みスチール缶の散乱防止・環境美化推進、3R推進のための調査研究・指導・普及啓発広報活動を行うことで、循環型社会構築に貢献してまいります。