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STEEL CAN AGE

HAND IN HAND

地域力強化で美しいまちづくりを推進

神戸市
 

まちには一部の心ない人による、ごみのポイ捨てや落書き、放置自転車、貼り紙などが見受けられ、まちの美観を損ねる要因になっている。神戸市では、こうした課題に自ら取り組む地域と市がパートナー関係を築き、美しいまちづくりを推進している。

 

ともに考え、ともに汗を流すパートナーシップ関係を築く

地域コミュニティでは、子育て支援・高齢者見守りからごみ・ペット問題まで、地域が抱える身近な課題は複雑・多様化しているものの、地域活動に対する無関心層の増加などにより、課題を解決する地域力が低下している。神戸市では、「協働と参画による地域力強化プラン」を作成し、まちの美観を損ねる地域課題解決のためのモデル事業の一環として、「美しいまち神戸」の取り組みを2003年から開始した。美しいまち神戸の推進について、神戸市市民参画推進局の中尾稔主幹は次のように説明する。

「どのように課題を解決して、どんな地域にしていきたいかは、地域の皆さんが話し合って決めていきます。市は、話し合いの段階から地域と情報交換をして、地域が中心になって課題の解決に向けて取り組んでいけるように支援します。さらに市民と市がパートナーシップ協定を結び、相互に果たすべき責任と役割を自覚し、ともに考え、ともに汗を流すことによって、地域課題の解決を図り、その取り組みを通して地域が自らの力で継続できるような、新たな地域力強化のための仕組みづくりに取り組んでいます」

 

震災復興後に芽生えた気づき野田北ふるさとネット

ここで地域実情に応じた美しいまち神戸の取り組みを2事例紹介しよう。

2005年に神戸市で初めてパートナーシップ協定を結んだ「野田北ふるさとネット」では、「野田北部 美しいまち宣言」(写真1)を行い、まち美化を推進している。野田北ふるさとネット事務局長の河合節二氏は、取り組みの経緯を次のように振り返る

「長田区野田北部地区は、1995年1月の阪神・淡路大震災で家屋の全壊全焼が70%を超えるなど甚大な被害を受けましたが、震災復興土地区画整備事業などハード面での整備がいち早く進みました。その一方で『まち並みはきれいになったけど、ポイ捨てごみとかあって、ほんまに美しいまちになったと言えるの?』との声が住民の間からあがったことがきっかけとなりました」

野田北ふるさとネットは2002年1月、自治連合会や長寿会、婦人会、まちづくり協議会などと連携し、住環境改善を図ることを目的に発足。地域の総合窓口として地域課題の解決に向けた勉強会の開催や行政との折衝などの役割を果たしてきた。パートナーシップ協定では、「犬・猫の糞対策」「迷惑駐輪対策」「ごみ・タバコの吸殻のポイ捨て対策」「貼り紙対策」「ごみの分別徹底」などのテーマについて、地域と行政の役割分担を明確化し(図1)、活動を展開した。その結果、JR鷹取駅周辺のポイ捨てタバコの総数は協定前の738本から協定後には362本、迷惑駐輪は223台から43台へと大幅に減少するなどの成果をあげた。協定は2008年3月に終了したものの、引き続き事務局が地域のサロン的な場となって地域課題の迅速な把握と対応を続けるとともに、ホームページの開設や広報紙の発行など情報発信によって地域内外との交流を図っている。

「当初、行政に対しては部局間の縦割りを強く感じました。しかし一緒に取り組み成果をあげることによって、柔軟で横断的な動きへと変わりました。協定によって行政とのパイプを密接にできたことは大きかったと思います」(河合氏)。
 

 

ごみ出しルールの徹底二宮ふれあいのまちづくり協議会

2010年3月にパートナーシップ協定を結んだ「二宮ふれあいのまちづくり協議会」は、ごみ出しルールの徹底という具体的な活動を通じて「住み続けたいまちづくり」に取り組んでいる。中央区二宮地区はJR三ノ宮駅の繁華街に近い住商混在エリアで自治会がほとんどなく、ワンルームマンションが多く単身者や外国人居住者の割合が高いという地域特性を持つ。これまで公園やJR高架下にあるクリーンステーションの不法投棄がひどく、その他のステーションでも日常的にごみが捨てられている状況にあったという(写真2)。

二宮地区では、2005年から二宮ふれあいのまちづくり協議会が消防団や婦人会、老人クラブなどと連携し、ワークショップやアンケートの実施で地域課題と今後の活動について話し合った。そして多言語チラシの配布や夜間パトロールの実施、多言語看板や監視カメラの設置を開始。さらに不法投棄キャンペーンや、主要ステーションでの立ち番などを実施し、活動を見える形にすることで理解者や協力者を増やしていった。活動の進展について、二宮ふれあいのまちづくり協議会の橋井弘和氏と近田常雄氏は次のように語る。

「地域コミュニティが希薄で、どうしても一部の人に負担が集中してしまう傾向は否めません。それでも立ち番を当番制とせず、自主的な参加を呼びかけ続けました。その結果、ルール違反のごみ量が大幅に減り、メンバーの機運は大いに高まりました。今後、幅広い地域課題の解決に取り組むためにも、世代間・組織間の交流を図り、後継者問題などにも対応できる仕組みづくりを進めていきたいですね」(橋井氏)。

「6分別講習会やごみ出しルール説明会だけでなく、子どもの見守り活動や安全・安心パトロール、放置自転車追放キャンペーンの実施などについても市の担当職員の方に指導していただき、チームとして二宮地区の取り組みを支えていただいていることを心強く感じます」(近田氏)。

「今日もお子さんの姿がありましたが、その子は絶対ポイ捨てをしないようになるはずです。そういった地道な活動をやっていくしかないと思います。市街地で捨てられたごみは排水路などを通って川に流れ込みます。流域全体を面として考えていかなければ効果はあがりません。私たちも市と一緒になって河川を中心とした流域での取り組みを続け、“美の国あきた”を実現していきたいと考えています」