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OVERSEAS REPORT

循環型社会を目指すアメリカの挑戦(上)
~概要、そしてニューヨーク~

ごみ処理施設の不足と埋立地の減少。この減少は日本に限ったことではない。世界各国が直面している地球規模での問題である。日本と日常の消費生活様式が似ているアメリカでは、環境保護庁(EPA)が全米レベルのリサイクル率目標を「2005年に35%」と定め、循環型社会への変身を試みている。
「循環型社会を目指すアメリカの挑戦(上)」では、これまで大量生産・消費・廃棄社会の代表格だったアメリカがいまいかに変わろうとしているのか、その概要と世界最大級の大都市ニューヨーク市の事例を、[第6回(1998年)あき缶問題訪米調査団報告書]をもとにご紹介する。

廃棄物リサイクルのカギを握る[カーブサイドプログラム]

アメリカのリサイクル・固形廃棄物減量の政策は、EPAの設定に基づいて各州が具体的な目標値を立て、州法の方策に従い自治体が実施するというもの。

各州では、EPAによって固形廃棄物(MSW)のリサイクル目標値が出された1988年から、強制リサイクル法を施工し、自治体で日本の分別収集にあたる[カーブサイドリサイクリングプログラム](以下カーブサイドプログラム)等の方策を実行している。95年には各州の自治体の努力によってEPAの目標値の25%を達成し、現在では新たに“2005年に35%”を目指して奮闘している。リサイクル率向上のカギを握るのは日本と同様に分別収集であり、カーブサイドプログラムの人口カバー率は96年時点で51%に達している。また、自己搬入によるドロップオフセンターが自治体運営のシステムとして増えていることも見逃せない。

一方、MSWの減量化対策として有料化が注目を集めている。EPAによると、95年のアメリカのMSW量は2億80万tで、人口1人当たり1日の排出量は1,948g。ちなみに日本は1,184gである。ごみ処理費の類型は、税金によるものと排出量によって処理費を徴収する方法があるが、近年では、リサイクル率の目標達成とともに、ごみそのものを減量化する方策として処理費を徴収し、カーブサイドプログラムとの併用で資源物を無料あるいは低料金で収集する自治体が増加しており、プログラム数は約3,000に達している。

[デポジット制度]から[カーブサイドプログラム]へ

飲料容器の回収方法として、10州でデポジット制度が実施されている。

ここで認識しておきたいのは、この制度の目的は散乱対策であり、リサイクル手法と一線を画するものということだ。この制度は、70年代初頭にビールと炭酸系の飲料容器を対象として始まり、83年のニューヨーク州への導入以降広がっていない。EPAの目標が設定され、各州がリサイクルに積極的に取り組み始めた80年代後半からは、MSW全体の4%に過ぎない飲料容器のみならず、古紙や金属類を分別してリサイクルを行うカーブサイドプログラムが急速に拡大している。もちろんデポジット制度を実施している10州でも、リサイクル手法としてカーブサイドプログラムが採用されているのだ。

自治体関係者で構成されている北米廃棄物管理協会のフローラ女史は「デポジット制度は飲料容器のように、すでにリサイクル体制が整いリサイクル率の高いものではなく、有害物質など適正処理が難しい廃棄物を回収するシステムとして活用すべきである」と語る。

“リサイクル” “MSW減量化”の両面から取り組むニューヨーク州

96年のニューヨーク州のMSW総量は2,797万t。その処理については、1,067万tがリサイクルされ、990万tが埋立、370万tがエネルギープラントでの処理、そして370万tが州外に搬出されている。

ニューヨーク州では埋立地が減少する中で、87~97年のMSW管理計画をつくり、8~10%のMSW発生量の削減と50%のリサイクルを目標に諸施策を実施してきた。リサイクル率は96年の実績で38%を達成し、新たに策定した98~2003年の計画ではリサイクル率の向上とともに排出量に応じたユーザーフィー制度とコンポストの普及を推進することによってMSWの排出量削減を目指している。

83年に導入されたデポジット制度は、炭酸飲料・ビール・ワインクーラーを対象に機能しているが、リデンプションセンター、サービスステーションといった小売店以外の回収場所はあるものの、容器受取の義務を持つ都市部の小売店は概してスペースが狭く、消費者から回収した容器保管や、デポジット制度が実施されていない他州からの持ち込み、不明瞭な非請求デポジット金の活用などの問題も抱えている。

資源再生化の巨大モデル都市、ニューヨーク市の試み

人口750万人、世帯数300万を擁するニューヨーク市では、2002年までのMSW管理計画を独自に策定中である。同計画最大のテーマは、唯一残存する埋立地が2001年には閉鎖されることで宙に浮いてしまう年間380万tのMSWの行方だ。同計画では、衛生局が収集する家庭からのMSWの25%をリサイクルし、2002年には市全体の33.7%をリサイクルする計画を立てている。

家庭からのMSW収集は、約5万人がビルの住人ということもあり有料化が難しく、現在は税金で賄われており、分別形態は、一般ごみ・紙類・資源物の3種類。カーブサイドで収集された紙類と資源物は、市内の4社の民間施設で選別・処理される。その中の最大手[Browning Ferris Industry(BFI社)]では、紙・金属類・ビンなどを選別・処理した後、年間25~30万tの売却を行っている。

一方、オフィスが多いニューヨーク市の事業系MSWの処理は、自己処理責任の原則のもと民間の廃棄物処理業者との個別契約(容積ベースでダイレクトフィー)で行われている。これらの処理についても再資源化が進んでおり、市が民間の廃棄物処理業者から受けた報告によると、収集した844万tの廃棄物のうち、63.4%にあたる535万tをリサイクルしているという。

しかしこれらの努力も、消費者が適正にごみを排出しなければ始まらない。消費者のモラルとマナーの問題は、各国が共通に抱える普遍的なテーマである。その点で特筆すべきは[リサイクルポリス]の存在だ。一般の警官と同じ訓練を受けた彼らは、不適切な廃棄(20の罰則)に対して警告なしで罰金(25~1万ドル)をチャージする権限を持っている。一般ごみの収集時に、資源物を取り出し警告文とともに玄関に置くといったことも行っている。本来なら、[リサイクルポリス]が不要な社会が好ましいのだが、皆さんはどうお考えになるだろうか。

 

■あき缶処理対策協会では、海外調査を重要な事業と位置づけ、調査団を派遣してきました(アメリカ6回、ヨーロッパ6回)。派遣毎にまとめられる調査報告は、欧米のリサイクル事情の紹介として各方面の方々にご活用いただいています。