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HAND IN HAND

アカウミガメがやってくる砂浜を守る

高知海岸パートナーシップ

日本の砂浜に上陸しているウミガメは、環境省作成レッドリストで絶滅危惧種に指定され、近い将来絶滅の恐れがあるとされている。アカウミガメの産卵地として知られる高知の砂浜では、海岸環境を守るため、高知海岸パートナーシップが海岸の清掃・美化活動に取り組んでいる。

安心して産卵できる美しい海岸に

アカウミガメのメスは、毎年5月から8月にかけて、産卵のため高知の砂浜に上陸する。しかし海岸がごみや漂流物で汚れていたり、周囲が明るかったり騒がしかったりすると上陸しなかったり、たとえ上陸しても産卵せずに帰ってしまう。アカウミガメの産卵は大変デリケートなのだ。そこで2005年に高知海岸パートナーシップが発足し、定期的に海岸清掃活動を行っている。清掃活動により、景観が保たれると同時に、産卵の妨げとなるごみを取り除き、アカウミガメが上陸・産卵しやすい環境をつくっている。

「清掃活動の主体は住民グループなどのボランティアの皆さんですが、高知市と土佐市は回収ごみの収集・処分などの支援、国土交通省は清掃活動に必要なごみ袋をはじめ資材などの支援を行い、三者が一体となって取り組んでいます。当初あき缶やペットボトル、たばこの吸い殻などが目立っていましたが、最近は清掃活動が周知されポイ捨てされたごみがかなり減りました」(国土交通省・加納知加子係長)

高知海岸パートナーシップは、国土交通省四国地方整備局高知河川国道事務所が事務局となり、清掃ボランティアの参加者を募っている。現在は地域住民や企業、マリンスポーツ団体など14団体延べ540人が参加している。活動範囲は高知河川国道事務所が管轄する桂浜から仁淀川河口域周辺までの海岸線約6.3㎞。絶好のサーフポイントとなっていることから、マリンレジャー活用が盛んな海岸だ。しかし海岸利用者のなかには、ごみなどを捨てる人も多く、景観上またウミガメの環境保護のためにも大きな問題となっていた。そこで海岸線を一定区間に分けて、参加者は担当区間を年3回以上清掃・美化活動を行っている。また区間内15カ所にボランティア団体を記載した看板を設置して、清掃・美化活動をPRするとともに、ポイ捨て防止を呼びかけている。こうした地道な活動が実り、可燃ごみは2010年の1,025㎏、不燃ごみは2007年の401㎏をピークに減少している。

ウミガメを大事にすることは人間を大事にすること

海岸の清掃・美化活動の輪はさらに広がり、アカウミガメの保護活動に発展している。アカウミガメは産卵しても、卵がふ化するまでに台風で流されたり、野犬などに掘り返されて食べられてしまうこともある。たとえ卵が無事にふ化しても、全部が無事に海に帰ることができるわけではないのだ。そこで高知河川国道事務所はアカウミガメのふ化場の設置を支援し、高知海岸パートナーシップと共に毎年9月うみがめ放流会を開催している。今年で7回目を迎える放流会は、年々参加者が増え約300人にのぼっている。

高知海岸パートナーシップに参加している春野の自然を守る会は、高知県ウミガメ保護条例に基づいて高知市内で唯一、放流会の母体となる保護活動に取り組んできた。活動は上陸産卵の確認と、ふ化場への移植、そして生まれた子ガメを海に帰すもので、地元小学校と連携して4年生の総合学習を指導している。ふ化場は高知河川国道事務所の支援を受けて、春野漁港ならびに地元小学校2校に設置されている。

「ウミガメを大事にすることは結局、人間を大事にすることにつながるんじゃないかと思います。子どもがこの活動を見て、ごみをポイ捨てしてはいけないという気持ちになってほしいですね。それが未来につながっていきます。当時小学生だった子どもたちが成人しています。その子どもたちが自分の体験したことを自分の子どもに伝えていってほしいと願っています」(春野の自然を守る会・熊沢佳範会長)

高知県の海岸では、今後30年以内に約70%の確率で発生するといわれている南海トラフ地震への津波対策など、総合的な整備が進められている。国交省では、こうしたアカウミガメ保護などの自然環境と調和した防災対策に取り組んでいる。

「消波ブロックがウミガメの産卵時の阻害になることもあります。しかし堤防や消波ブロックは、津波や高潮・波浪などの災害から人命や財産を守るためには必要不可欠です。海岸工事を携わる者もウミガメに配慮した海岸づくり、工法を検討していかないといけないと考えています」(国土交通省・吉岡修一所長)