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自治体と事業者の連携で店頭回収による資源リサイクルを確立

山形県新庄市では、市内スーパーマーケット9店舗が店頭回収を実施し、回収されたスチール缶などの資源物を自治体が収集してリサイクルするシステムが確立されている。新庄市における自治体と事業者の連携のあり方を紹介する。

家庭から排出された資源物だから店頭回収を市が収集する

新庄市は奥羽山脈や出羽山脈の山々に囲まれた盆地に拓かれた城下町で、豊かな水田地帯が広がっている。古くは最上川の舟運によって人とモノが行き交うまちとして栄え、現在も交通の要衝として都市基盤が整備され、約3万7千人の人々が暮らしている。

新庄市では増え続けるごみの排出抑制策として、1993年に不燃ごみで処理していた缶とびんを分別収集する資源化の開始、1999年に家庭系ごみの有料化、2004年には指定ごみ袋への町内名と氏名の記入義務付けなどを実施した。その結果、2015年度の家庭系ごみ排出量は8,189トン、1人1日当たり597.7グラムにとどまっている。

ごみの分別や排出については、市内約780ヵ所に設置されたごみステーションで可燃、不燃、資源、粗大ごみを収集している。そのなかで缶(スチール缶、アルミ缶)、ペットボトル、びん、食品トレーは、ごみステーションから月1回の収集と、資源回収に協力するスーパーマーケット9ヵ所から随時市が収集する店頭回収を併用している。

「新庄市を含む最上管内8市町村では、最上広域市町村圏事務組合でごみを一括処理しています。施設の供用に伴って当初は資源物の全てを資源化施設に搬入していましたが、資源化の精度をさらに高めることと最終処分場の延命化を図るため、新庄市では店頭回収の資源物は市民が家庭から排出した家庭系として位置付け、市内の民間事業者に委託して収集・処理を行っています」
(新庄市環境課・井上勝人主査)

 

資源回収拠点として店頭が暮らしに身近な存在となる

新庄市の店頭回収は、1994年からの缶とびんに始まり、1998年からペットボトル、2004年から食品トレーへと順次品目が広がった。品目別回収量は缶119トン(スチール缶とアルミ缶の合計量。そのうちスチール缶が約60%を占めている)、紙パック26トン、ペットボトル125トン、びん55トン、食品トレー2トンに達している。

資源回収の拠点となるスーパーマーケットの役割は、回収ボックスの設置だけにとどまらない。回収ボックスの設置などに必要な資機材を自ら用意したり、回収した資源物を一時保管するバックヤードを確保したり、店頭回収を維持管理するためのスタッフを配置しなければならない。店舗の通常業務の中で取り組まれているものの、店頭回収の実施にあたっては追加的な負担を伴う。

「20年前の開始当初は分別や排出の仕方がルールどおりでなく、混入物も多かったのが実情でした。回収ボックスの設置場所も店内でなかったため、深夜に大量に排出されることもあり、対応に追われました。しかし今ではしっかりルールが根づきました。また店頭回収によって、お客様とのコミュニケーションの機会が増えました。これからも事業者としての社会的責務や地域貢献活動の一環として継続していきたいと考えています」(郷野目ストア・黒田茂次副社長)

郷野目ストア中央店では、回収ボックスを駐車場から売場へ向かう動線の階段出入口付近に設置し、利用しやすく、管理しやすいように工夫している。また回収ボックスの設置場所には、新たに始まった食品トレーの排出方法やリサイクルの意義などをボード掲出して、協力を呼びかける啓発活動を行っている。ボードは売場のPOP広告と同じように、華やかで親しみやすい書体やデザインが目を引き、利用者の分別意識も自然と高まっていく。

「従業員が回収ボックスの清掃などをしているとき、お客様から『ご苦労様。今日は何が安いの?』と気軽に声をかけていただいたりします。お客様との距離がより近くなりました。これからもお客様の暮らしに身近な存在でありたいですね」(郷野目ストア中央店・八鍬勝店長)