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STEEL CAN AGE

HISTORY

缶の履歴書  
■190g缶は40gから32gへ、350g缶は75gから28gへ

~スチール缶重量の軽量化に向けての軌跡~

スチール缶の飲料缶と食料缶を合わせた生産量は、平成16年で約63万トンに及び、これはスチール缶生産量の約80%を占めている。廃棄物の全国的な分別回収の普及・浸透、自治体の尽力をはじめとして、製缶、鉄鋼メーカーの体制づくりの進展などにより、わが国のスチール缶リサイクル率は平成16年で87.1%と世界トップクラスに位置する。では、資源の有効利用を推進するポイントと言われる3つの「R」(リデュース、リユース、リサイクル)のうち、リデュースの面ではどのようなアプローチがなされているのだろうか。
今回は、缶重量の時代的変遷をさかのぼってトレースが可能な飲料缶に焦点を絞り、リデュースへのアプローチを紹介する。(本稿に掲載の缶重量の数字は、天地蓋を含めた概数)

リデュースへのアプローチは製缶技術と缶素材製造技術の“両輪”で

ここで言う「リデュース」とは要約すれば、蓋を含めた缶素材の重量を軽くし、使用量を減らすことに集約される。それによって社会的コスト削減、環境負荷の低減、枯渇性資源の採掘量削減をもたらすことができる。

では、軽量化への挑戦はどのように実現されているのだろうか。大きく言って二つある。第1が製缶技術である。以下にご紹介するようにハンダ缶から2ピース缶まで、さまざまな製缶技術が開発され、新たな製缶技術の開発によって重量の軽減を果たしてきている。第2が缶素材製造技術である。これは集約すれば缶用ブリキ鋼板の薄手化である。また、2ピーススチール缶に代表されるように、製缶技術と缶素材製造技術との両者が相まって大幅な軽量化をもたらした事例もある。このように、軽量化は製缶技術と缶素材製造技術の両輪、そして両者の相乗効果で進められてきていると言える。

缶容器の原点といえる「ハンダ缶」

製缶技術は時代とともに変遷し、発展を遂げてきた。代表的なものに3ピース缶としては「ハンダ缶」「接着缶」「溶接缶」がある。なかでもハンダ缶は最も歴史が古く、後に登場する製缶技術の礎となったと言っても過言ではないだろう。ハンダ缶とは、缶胴のサイドシーム部の接合にハンダを使用している「3ピース缶」(缶胴、上蓋、底部の3ピースによって構成)の一つで、1960年代まではほとんどがこのハンダ缶だった。

ハンダ缶に代わって登場した「接着缶」と「溶接缶」
ハンダ缶に代わって登場したのが「接着缶」と「溶接缶」で両者とも3ピース缶に属する。接着缶は接合部にナイロンテープを使用したもので、1970年代に登場した。接着缶による190g缶は発売当初38gで、ハンダ缶に比べ、2gの軽量化を実現した。その後、接着缶自体としての軽量化も進展し、1980年代には34gとなった。

同じ接着缶で350g缶のうち果汁飲料用では1980年代に65gでスタートしたあと、1990年代に57gとなった。一方、同じ350g缶でも炭酸飲料用を見ると、1970年代に55g、10年後に54gとなったあと、炭酸飲料用の缶は、ほとんどが2ピース缶に移行していった。

さて、溶接缶は溶接部を重ね合わせ、ローラー電極(加圧と通電を行う)により、抵抗溶接する方法で製缶される。溶接缶が開発された背景はコストダウン(材料使用量削減と高価なハンダの不使用化)をめざしたものであった。現在、普段目にすることの多い食料缶、飲料缶、ドラム缶や18L缶(一斗缶)なども溶接缶である。

溶接缶の重さを見ると、1980年代に190g缶で34g、350g缶では58gのあと、1990年代に53gと、5gの軽量化を果たしている。

飲料缶に新たな可能性を拓いた「スチール2ピース缶」の登場

これらのほかに、「スチール2ピース缶」がある。2ピース缶は、缶用鋼板の薄手化とともに深絞り加工をはじめとする新たな製缶技術との組合せから可能となった缶で、打ち抜いた板を、絞り加工やしごき加工でカップ状に成形し、底付きの缶胴と上蓋の2つの部分(2ピース)によって構成されている。現在2ピース缶はおもに飲料缶に使われている。ブリキ鋼板の薄手化が可能になった要因としては、鋼板となる前段階のプロセスである製鋼段階で、二次精錬技術や革新的な連続鋳造技術(特に垂直曲げ型)の開発によって介在物を除去することにより、結晶を均一に制御し加工性に優れる軟らかい鋼板を製造する技術が確立されたことが挙げられる。

こうした技術開発の成果により、現在2ピース缶向け缶用素材の板厚は1973年当時の0.3mm強が、最近では0.2mm弱にまで薄手化されている。缶重量で見ると、190gスチール2ピース缶で1990年代に32gとなった。一方、350gスチール2ピース缶の炭酸飲料用では、1980年代に41gでスタート以来、薄手化のさらなる進展を経て、1990年代に29gと、30gの大台を切るレベルにまで軽量化された。

また、軽量化を進めた別の要因として蓋の小径化も見逃せない。ちなみに、350g缶の蓋の場合、図4のように小径化され、従来比約42%の軽量化を実現している。

リデュースのほかに缶スクラップの品質も向上

以上ご紹介したほかに、リサイクル時における缶スクラップの品質向上も、見逃せない貢献を果たしている。製鉄所の製鋼プロセスでは、スクラップは1,600℃の高温で溶解されるため、ある程度の異物は燃焼または酸化されて分離されるものの錫や銅の混入による品質低下が課題とされていた。

しかしハンダ缶用ブリキ主流の時代から接着缶、溶接缶では錫を使用しないティンフリースチール(TFS)が主流の時代となっていることを大きな要因として、缶スクラップの品質向上(図5)がリサイクルに寄与していることも見逃せない。

今後とも、スチール缶のリサイクルをより普及促進することに加えて、缶自体の軽量化をもさらに進め、原材料の使用量を減らしてリデュースの一層の進展を目指していくため、“より軽く”は、いわば永遠の課題であり、今後もその挑戦は続く。