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HAND IN HAND

沖縄から、エコロジカルな市民社会の構築を広げる

沖縄リサイクル運動市民の会

沖縄リサイクル運動市民の会では、1983年の設立以降、エコロジカルな市民社会の構築を目指して、ごみやリサイクル、環境教育、市民活動などをテーマに、誰もが気軽に参加できる場とシステムを構築し、常に新たな試みを続けてきた。数多くの取り組みから、代表的なプログラムを中心にご紹介する。

 

沖縄でのごみ分別・減量の仕組みづくりから参画

沖縄リサイクル運動市民の会は、「物を大切にするところから心の豊かさを取り戻そう!」の呼びかけのもと、1983年に設立された。同会の代表を務める古我知浩氏は次のように振り返る。

「沖縄は72年にようやく本土復帰したこともあり、他県に比べてごみの分別回収の仕組みづくりが遅れていました。処分場には焼却できなかった生ごみを含めあらゆるごみが廃棄され、夏には大量のハエが発生して近隣の団地は窓も開けられない状態。その解決に向けて最初に取り組んだのが資源ごみの分別回収です。フリーマーケットを開催すると同時にその会場で資源回収を呼びかけたところ、多くの人がきちんときれいに分別した資源ごみを持ってきてくれました。その後、那覇市でごみの分別・資源回収が始まりましたが、良いPRになったと思います」

また、レジ袋有料化の牽引役も務め、現在沖縄県内のスーパーマーケットで日用品を買った場合、有料で3円がチャージされる仕組みになっている。事前にスーパー各社と協議を重ね、導入前に5円支払う実験を行い、賛成・反対のアンケートを集計。次第に反対から賛成の数が増え、真剣なメッセージも出てきたことから、1年かけて那覇市長などとの間で協定を結び、08年に11社のスーパーで実施するようになった。
 

新しい食の循環システムを構築

ごみを減量し有効に再生利用しようという観点から、01年より食の循環を目指す「くいまーるプロジェクト」を推進。スーパーや食品工場から排出された食品残渣を回収し飼料や堆肥に再生する。昔から沖縄で盛んだった残飯養豚とは一線を画す安全で栄養価の高い飼料づくりを行っている。養豚農家、資源化業者、プラントメーカー、学識経験者、環境コンサルタント、NPOなどの異業種が協働で進め、09年には食品リサイクル推進環境大臣奨励賞を受賞した。

 

次世代を担う子どもたちにアプローチする買い物ゲーム

ごみは私たち一人ひとりが出したものであることを子どもたち自身が気づき、できることから行動してもらうことを目的に99年に誕生したのが「買い物ゲーム」だ。企画・構成した同会事務局長の福岡智子氏は次のように語る。

「ワークショップ型のプログラムを考案し、一方的に教えるのではなく、子どもたち自身が考えることを重視しています。先生方が教えるには準備など手間もかかるので、私たちが出張して授業を行っています」

買い物ゲームは、子どもたちが模擬店舗でカレーの材料と飲み物を買いながら、皆でごみを減らすアイデアを考え、発表後にもう一度ごみの少ない買い物に挑戦する。

ファシリテーター を務める環境プロジェクトマネージャーの眞喜志敦氏は次のように語る。

「子どもたちが楽しめるように工夫する必要があるため、授業は毎回真剣勝負。また子どもたちの反応はさまざまで私自身も毎回勉強になります。ときには大人が使わない言い回し、なぞなぞのようなコメントもあります。それを辛抱強く掘り下げると、非常に有効な意見や感想だったこともありました」

03年にはもっと多くの人に買い物ゲームを実践してもらうことを願って本を出版。日本全国からの問い合わせが増えた。

「以前授業を受けた子どもが大学生になり、スタッフとして参加してくれたときは大変うれしかったですね。これからも買い物ゲームを継続し、裾野を広げてもっと多くのグリーンコンシューマー  を育てていきたいです。続けていくことに意味があると思っています」(福岡氏)

 

沖縄発、世界へ。ごみ問題の解決を目指す

同会は08年から経験とノウハウを海外へ伝える事業を行っている。JICA国際協力機構の「草の根技術協力事業」では「固形廃棄物3R啓発活動推進プログラム(那覇モデル)」を那覇市と協働で企画運営し、ベトナムとマレーシアでプロジェクトを実施。09年からは中米カリブ周辺諸国の研修員受け入れ事業や南太平洋の島嶼国トンガで事業を展開している。

「マレーシアのNGOに買い物ゲームを紹介したところ、すぐに導入が決まりました。ごみ処理の仕組みはほとんど同じなのでコンセプトを変えることなく受け入れられました。

一方、沖縄のような島嶼地域は各島から発生するごみの量がさほど多くなくても、運搬方法や費用の負担が大きく、どのような仕組みが合理的なのか検討しているところです。世界の島嶼地域でも同様の問題を抱えており、今後、沖縄から世界各地へごみ問題の解決策を発信していきたいですね」(古我知氏)