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HAND IN HAND

まち美化推進をめざしアダプション・プログラムを展開
– 善通寺市の取り組み –

香川県善通寺市は、有岡古墳群や空海ゆかりの古寺などの名所・旧跡で知られる歴史と文化の薫り漂うまちである。美しい景観を守り、暮らしやすいまちづくりを進めるため、これまで善通寺市では様々な取り組みを進めてきたが、繁華街でのごみのポイ捨てや、山間部での不法投等に悩まされてきた。このような問題を解決するため、住民・企業・行政が一体となって協力し、まち美化を推進する取り組みが広げられている。

 

まち美化推進に向けて様々な活動を展開

善通寺市では、美しく暮らしやすいまちづくりを進めるため、早くから環境美化活動に取り組んできた。

1972年には、市長の呼びかけにより「善通寺市を美しくする運動市民の会」が組織され、多くの市民がボランティアとして活動に参加し、市内の公園・道路・河川の一斉清掃や緑化を進めてきた。

1998年には、美化向上を目的に「善通寺市環境美化条例」を施行。同条例では、ごみのポイ捨て禁止のほか、飼い犬のフンの放置の禁止、自動販売機に対する回収容器設置、空き地の適正管理等の責務を規定しており、住民と協力しながら条例の普及を進めてきた。

また、善通寺市は廃棄物資源化についても先進的な都市として知られており、空き缶や空きビン、容器包装プラスチックなどの資源ごみを8種類に分別回収し、市が運営するリサイクルセンター「未来クルパーク21」で再資源化を進めている。

このように、善通寺市では、住民・企業・行政が協力しながら様々な活動を進め、まち美化や廃棄物の減量化・再資源化に取り組んでいるのである。

 

住民主導の活動としてアダプト・プログラムを実践

こうした活動をより発展・継続させていくために、善通寺市では、住民や企業が主体となって公園や道路等の美化を進めていく「善通寺市アダプション・プログラム(里親制度)」を導入している。

道路を管理する関係機関と協議を進め、里親登録への呼びかけを行い、1999年4月に公園での活動を開始し、同年6月に道路での活動を実施している。

アダプション・プログラムの対象地域は市内の全道路と市管理の公園であり、団体でも個人でも里親登録することができる。活動場所は参加者の希望に沿った形で決められているが、道路の場合は300m程度を1区間とし、なるべく重複しないように調整を行っている。公園の場合は複数の団体が担当しているところもある。

現在、市内16公園に16団体・13個人(計262人)、市内382km道路の内78kmの区間に54団体・158個人(計1,813人)の登録がある。

里親の役割は、(1)散乱ごみの収集、?管理区域内の除草、(2)情報提供(遊具・植木等の破損)等であり、活動の頻度は各里親に任されている。行政の役割は、?活動に必要な物品の支給(ごみ袋、清掃用具)、?ボランティア活動保険への加入、?里親の名前を記したアダプトサインの設置等である。

収集したごみの処分については、道路の場合は原則として家庭ごみとして処理されており、公園の場合は市の委託業者が週1回回収している。大量のごみが発生したときは、市が責任もって回収している。

 

アダプトの効果と可能性

アダプション・プラグラムには、自治会や商店会、ボランティアグループや趣味のサークル、企業や学校等、多くの人たちが参加している。

企業としてアダプション・プログラムに参加している石井事務機(株)の皆さんは、社屋前の国道319号線バイパスの里親として、毎月第2・第4金曜日の朝に清掃活動を実施している。

担当している国道は人目につきにくいということもあり、弁当の空箱やペットボトル、あき缶やタバコの吸い殻等が捨てられていることが多い。清掃時には植え込みの枯葉も収集しており、多いときは1回の清掃で45リットルのごみ袋2袋になることもあるそうだ。

また、企業として参加することで、働き盛りの人たちも活動に関わることができる。これは地域社会にとっても大きなメリットといえる。

多くの里親の皆さんの活躍により、市内の散乱ごみは着実に減ってきている。「清掃活動をしている人たちの姿を見て、ごみを捨てる人が減り、活動に参加する人が増えていけば、まちはきれいになると思います」と同社営業部係長の山下敦史さんは語ってくれた。

 

パートナーシップを深めさらなる発展をめざす

善通寺市では、もう一つ新たな取り組みとして「エコポリス制度」を実施している。

同制度は、住民のリーダーを「エコポリス」として委嘱し、ポイ捨てを行った人に注意したり、不法投棄を通報するというもの。

現在、143人の住民がエコポリスとして活躍しており、年間50件を超える通報があるということだ。市では「環境パトロール隊」を組織し、日々寄せられる通報に迅速に対応している。

善通寺市市民部生活環境課の山下博主幹は、活動の手応えや今後の展望について、次のように語る。「里親や住民の皆さんの協力により、活動開始時に比べ、散乱ごみは着実に減ってきています。今後は里親のネットワーク化を進め、活動に参加している方々と情報交換しながら、まち美化を進めていきたいですね」

善通寺市の場合は、早くから環境美化に取り組んできたこともあり住民の意識が高く、また、住民からの意見や通報に迅速に対応することで活動を発展させてきた。

今後も住民・企業・行政がパートナーシップを築きながら、まち美化に向けた活動が進められていくことになるだろう。今後も善通寺市の取り組みに注目していきたい。