調べるごみ 拾い川ごみの実態を知り、行動する
荒川クリーンエイド
秩父山地を源に埼玉県と東京都を流れ東京湾へと注ぐ荒川。源流から河口まで173キロに及ぶ流域では、年間1万人を超える人たちが河川敷の清掃活動「荒川クリーンエイド」に参加している。荒川に集い、思いを寄せる人たちの交流を、NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムが22年にわたり支援している。
気づき、考え、行動を促す
荒川クリーンエイド・フォーラム事務局では、清掃活動に必要なごみ袋の提供や道具の貸出から、マニュアルの作成・配布、企業の社会貢献活動や学校の環境教育活動などの受け入れまで、参加者へのさまざまな支援を行うとともに、回収ごみの適正処理や活動の継続ができるように自治体や国土交通省との連絡調整役を果たしている。事務局長の伊藤浩子さんは、荒川クリーンエイドのねらいを次のように語る。
「活動は河川敷の清掃だけにとどまりません。散乱ごみを拾いながら調査カードにごみの種類と数を記録してもらっています。参加者一人ひとりが川ごみの実態を知ることで、どうすればごみをなくすことができるのかを考え、ごみをなるべく出さないライフスタイルを実践するきっかけになればと考えています」
2015年の調査結果を見ると、回収ごみの内訳は可燃ごみ53%、不燃ごみ22%、ペットボトル25%となっている。散乱ごみの回収個数は、ペットボトルが飲料缶や飲料びんなど他の品目を大きく引き離し数多く拾われている。用途別では容器包装77%、タバコの吸い殻や使い捨てライターなど9%、サンダルや文具などの生活用品4%、ゴルフボールなどレジャー用品3%の順となっている。散乱ごみは私たちの日常生活を色濃く反映していることがわかる。
ライフスタイルの提案
「調べるごみ拾い」を続けた結果、散乱ごみは時代と共に変化していることも浮き彫りになった。1990年代にはタバコの吸い殻の回収量が圧倒的に多く1位、飲料缶も2位であった。しかしマナーの向上でポイ捨てが少なくなったことなどにより、現在タバコの吸い殻は8位、飲料缶は6位まで減っている。2009年以降はペットボトルが7年連続1位となっている。
「使う量を減らせば荒川のごみも必ず減ります。そこで荒川クリーンエイド2015では、ごみを減らす第一歩として、参加者へのマイボトル持参をこれまで以上に呼びかけました。参加した皆さんが、日常生活でもごみをなるべく出さないように行動していただくことで、荒川がきれいになるだけでなく、ごみを生まない社会の実現につながると確信しています」(荒川クリーンエイド・フォーラム事務局 藤森夏幸さん)
生物多様性の保全
川ごみは流域の人たちが捨てた散乱ごみが上流から流れてくるため、下流域から河口部へ行くほど増えていく。しかし継続的に拾い続けた河川敷では着実にごみの堆積量は減り、成果をあげている。荒川下流部は潮の満ち引きの影響で東京湾の海水が逆流し、満潮時と干潮時では1メートル以上も水位が変わり、真水と海水が混じった汽水が流れている。
このような汽水域の泥干潟には環境省の準絶滅危惧種に指定されているトビハゼが生息しており、東京湾の河口が分布の北限となっている。荒川では一時期トビハゼが見られなくなっていたが、最近ではクリーンエイドの活動中にも元気に飛び跳ねる姿を見ることができるようになった。また汽水域のヨシ原にしか生息しないヒヌマイトトンボを守る活動にも取り組んでいる。
「荒川で収集したデータを活用した情報提供などを通して、荒川流域だけでなく、全国の河川や海、まちの環境美化関連団体との連携を深めています。ごみ発生抑制とごみ拾いを通した自然の回復に向けた取り組みをさらに加速させていきます」(伊藤さん)