漂流物の調査をもとに、ごみ問題の解決に取り組む
「海岸に漂流してくるごみは、実際は町で発生し、川を流れて海へたどり着くケースが約7割、つまり日常生活から発生したごみが海を汚す結果となっているのです。海から離れたところに住んでいる人たちはそのことに気づきません」と語る小島さん。クリーンアップ全国事務局(以下JEAN)は、全国各地で行われる海岸・河川の清掃ボランティアの代表者から収集したごみのデータを取り、アメリカの環境NGO「TheOcean Conservancy(以下TOC)」にその調査内容を報告している。そのほかにも、JEAN主催の「クリーンアップキャンペーン」や全国各地で行われる清掃活動のコーディネートも行っている。
JEANはTOCの呼びかけを受け、1990年に小島さんを含めたメンバー数人により創設。以来、地道な調査・報告活動により、国際的なキャンペーンに日本から参加できる礎を築いた。「私たちの活動が新聞などで報じられるようになると、活動の趣旨に賛同して『調べる』クリーンアップに参加したい、という問い合わせが全国から来るようになりました。17年間ずっとこの活動に取り組んでいますが、周囲の期待に応えるためにも責任を持ってJEANを継続していかなくてはなりません」(小島さん)。
現在、海岸で拾われるごみに多いのは、プラスチック片、タバコのフィルターなどだ。以前多かった缶飲料のプルタブは、ステイオン式への移行とともに報告個数が減っていった。そのほかにもガラスの破片や使用済みの注射器などが発見されるケースも増えており、環境問題だけでなく人体への安全も危惧される。また、漂流物を含め海岸で採取できるごみは、海水に浸りきっていたり、異物が付着・混入して劣化が激しいため、リサイクルに回されることなく埋め立てられてしまうのが現状だ。
ごみは洋上を漂流している間、動物に深刻な被害をもたらす。ごみ自体がからまり身動きが取れなくなったり、誤飲により体内に蓄積され、消化されないごみの満腹感でエサを取らなくなり死に至るケースも多い。
「残念ながら海のごみ問題についての一般的な認知はまだまだ低いといえます。各市町村の普段の生活から発生するごみと海岸の環境問題は無関係ではないことをもっと知ってほしい」(小島さん)。発生元が不明な海のごみは国際問題の一環であるため、各国の行政・産業界・研究者とともに注視していかなければならない。これまでさまざまな機関と協働しながら問題解決に努めてきた小島さん。今後も市民団体のリーダーとしてもその活動に期待が高まる。
こじま あずさ 東京都出身。JEANクリーンアップ全国事務局ディレクター/環境カウンセラー。1990年にJEANを設立。海岸・河川で行われる清掃・美化キャンペーンのコーディネーターや、シンポジウムにおけるパネリストを務めるほか、全国各地で講演活動を行う。
JEANクリーンアップ全国事務局について http://www.jean.jp
国内でのクリーンアップキャンペーン活動の企画運営とコーディネートを主な活動とするJEANは、アメリカの環境NGO「TheOceanConservancy(オーシャン・コンサーバンシー)」の呼びかけに応え、1990年に日本で設立されました。
2006年には、日本と韓国での環境保全活動に貢献した人に贈られる「日韓(韓日)国際環境賞」を受賞しました。
(写真:漂着ごみに埋めつくされた海岸 ーJEAN/クリーンアップ全国事務局提供ー)
JEANの特徴
●世界共通の方法でゴミのデータを取りながら拾う
散乱しているごみのデータを集め、その正体を突きとめます。蓄積されたデータはごみ問題啓発のために情報公開します。
●世界中で一斉に、同じ時期に実施
海は一つにつながっています。世界中で同じ時期に一斉に活動し、同じやり方でデータを集めます。
●ごみを元から出さない仕組みをつくるためにデータを活用する
拾っても拾ってもきりのないごみ拾いに終止符を打ち、「拾うより“出さない”暮らしを」と呼びかけています。