東京都多摩市に見る大規模マンションの集団回収の取り組み
ライオンズ聖蹟桜ヶ丘パシーナ
多摩市による「出前説明会」を経て、集団回収をスタート
日曜日午前10時。パシーナのごみ集積所は休日とあってごみ出しに足を運ぶ男性の姿が頻繁に見える。今年4月から第4期理事長を務める高橋悠一さんは、「2007(平成19)年3月に入居開始となったこのマンションは、約500世帯1,500名規模で、比較的に幼い子どもを持つ30歳台から40歳台前半の若夫婦が大半を占めています」と説明する。
その場に立ち会う中村俊幸さんと吉備和雄さんは、パシーナで多摩市廃棄物減量等推進員(以下、推進員)を務める。お二人は管理組合で第1期と2期に理事長、副理事長を務めたコンビ。現在は揃って推進員となりマンションの集団回収の中心的役割を担っている。「集団回収のスタートは2008(平成20)年8月。それに先立って3月の総会の席で市による出前説明会を依頼しました。時あたかも4月から市の有料指定袋によるごみ収集が始まるタイミングで居住者の関心も高く、集団回収は恵まれた条件下で立ち上がりました。私自身当時理事長でしたが、8 月から推進員にもなりました」と中村さん。
しかし、ごみ出しのマナーが定着するまでに苦労もあった。その一例がペットボトル。ラベルをはがさず潰さないままの排出が多く、管理人の協力も得てお手本を示す作業を繰り返した。「私も帰宅して毎晩のように作業しました。マナーの定着まで約3カ月かかりました」と中村さんは振り返る。その後も居住者の意識の高揚・維持に向けて、奨励金や補助金(後述)、CO2の削減状況など具体的成果を“見える化”するため作成したポスターを7基のエレベーターに貼ったり、管理組合報に掲載するなど努力が重ねられている。
3年目に入り順調に進展している要因について、「多摩市や回収業者の熱心な対応とともに、マンションの世帯主の大半が勤務先でISOと関わっており、ごみの分別が当然の世代であること、セキュリティを確保しつつ2カ所の集積所を24時間利用可能としていること、子どもたちの環境への関心が高いことなどが挙げられます」と吉備さんが分析する。
パシーナは、9種類すべての回収品目(別表参照)を扱う市のモデル事業団体でもある。生きびんをマンション側で酒屋に持ち込む以外は多摩市の登録業者が回収。市からの奨励金と補助金は別通帳にプールし、奨励金の使用用途は集団回収のために必要な容器購入などに充てられ市に報告。補助金の使途についてはマンション側の自由とされており、これからの検討事項となっている。
世帯あたりの資源回収量がトップで、市長表彰を受ける
多摩市認定の7モデル事業団体の一つであるパシーナは2009(平成21)年5月、「ごみの発生抑制やごみ減量の取組み」に対して市長表彰を受けた。表彰理由は、世帯あたりの資源回収量の多さで、8カ月の合計で実績データがトップの144kgであった。
多摩市の推進員は300世帯あたり1名が通例だが、パシーナでは500世帯のためこの4月から新たに吉備さんが推進員に加わり、現在中村さんとの2名体制で取り組みを強化している。
「マンション名のパシーナ(PERCINA)はPERsonCItyandNAtureの頭文字から採られています。ごみ対応を含めて名実ともに自然との共存を目指すマンションであり続けたいと願っています」と高橋さんが思いを述べる。
多摩市の今後の課題は戸建て住宅における集団回収の拡大
多摩市では現在、集団回収登録団体が214。推進員は約200名を数える。集団回収の補助金は1kg当たり12円で、団体に10円、業者に2円、年間で約5,000万円規模となっている。さらに9品目すべてを扱う7モデル事業団体には奨励金(集合住宅では<5,000円>+<7円×世帯数>×12カ月)を前払いしている。
最後に多摩市くらしと文化部ごみ減量担当課長・松平和也さんは平成24年度の目標達成に向け、「補助金、奨励金はプラスのインセンティブを目的としています。市の今後の課題は自治会の組織率が現在6割程度の戸建て住宅。冊子の『資源集団回収はじめませんか?』を作成し、説明に出向いています。今後さらに市民との協働を進め、集団回収の展開・拡大を目指していきます」と、力強く意気込みを語ってくれた。