店頭拠点回収
一人ひとりの意識と行動が循環型社会をつくる
店頭回収の歩み
人々の思いがひとつになり社会システム化される
日本チェーンストア協会によると、2011年度の店頭回収はペットボトル1.5万t、トレイ1.1万t、牛乳パック1万t、アルミ缶5,000t、スチール缶800t、びん400tにのぼり、回収量の多いペットボトル、トレイ、牛乳パックの3品目が中心となっている。トレイはトレイ納品業者が帰り便で回収し、トレイメーカーでリサイクルされるルートが確立している。ペットボトルは有価で売れるようになってきたため、廃棄物処理業者が引き取った場合でもリサイクルされるようになった。牛乳パックは古紙リサイクル業者ルートで再資源化されるのが一般的だ。
国内外で啓発活動を展開
店頭回収はきれいに分別した資源物を持ち込む地域の人々と、回収ボックスを設置・管理するスーパーの人々が、それぞれの役割を担うことで、回収ルートとして確立した。その始まりは1980年代にさかのぼる。山梨県大月市の子育てを考える主婦グループが、使い捨て生活を見直し、子どもたちにものの大切さを伝えたいという思いから、84年に牛乳パックの回収を市内に呼びかけたのがきっかけとなった。翌85年には全国牛乳パックの再利用を考える連絡会が発足し、全国に牛乳パック再利用運動が広がっていった。こうした運動を受けて、各地の生活協同組合やスーパーで店頭回収が始まり、80年代後半から90年にかけて普及していった。
牛乳パックをはじめとする紙パックは、分別だけでなく、洗浄・開封・乾燥して店頭に持ち込まなければ資源とならないため、排出者にとって手間がかかる。スーパーもまた回収ボックスの設置・管理のために、通常業務以外に人と時間を提供しなければならない。しかし福祉作業所などの団体や自治体が協力するなど、リサイクルに共感する地域の人々がつながることで、店頭回収が社会システム化した。
トレイ業者トラックの帰り便を活用
同じころトレイのリサイクルに関する機運も高まった。スーパーと消費者団体の対話が行われるようになり、90年からトレイの店頭回収が始まった。トレイは排出者が使用済みトレイを洗って乾かしスーパー店頭に持ち込み、スーパーは回収ボックスを設置し、トレイ納入業者のトラックの帰り便で使用済みトレイを持ち帰るという回収システムが構築された。当時このシステムはスーパーや食料品店などで使用される簡易食品容器の専業メーカーである(株)エフピコ(本社・広島県福山市)の物流を活用することで回収コストを抑えることができ、食品トレイが食品トレイにリサイクルされる「トレー toトレーR」
※はエフピコ方式と呼ばれるようになり注目を集めた。現在も全国6,500ヵ所を超えるスーパー店頭で月間約500tのトレイが回収され、同社全国6工場でリサイクルされている。
ゼロエミッション化作戦
行政の関与でペットボトル回収が加わる
牛乳パックやトレイの店頭回収がこうして始まると、92年ブラジルのリオデジャネイロで環境と開発に関する国連会議が開催されたのを契機に、90年代半ばから地方中堅スーパーを中心に容器包装の店頭回収が定着。その後行政の関与によってペットボトルが回収品目に加わった。ペットボトルの店頭回収は”東京ルールⅢ”がきっかけとなった。ペットボトルの利用は80年代から90年代にかけて急速に広がったが、そのほとんどが使い捨てにされていた。ごみ問題が深刻化していた東京都では、ごみ減量のための東京ルールを考える懇談会を設置し、96年にペットボトル対策に関する東京ルールⅢを提言した。東京ルールⅢとは、緊急対応策として行政が店頭の回収拠点から中間処理施設までの運搬を暫定的に行い、販売事業者および容器・内容物メーカーなどの自主的な体制づくりに発展させていくというもので、都民と販売事業者の協力のもと97年4月からペットボトルの店頭回収が始まった。ペットボトルの店頭回収は、こうして行政による分別収集を補完するシステムとして確立し、全国に普及していった。
そして2000年に容器包装リサイクル法が完全施行されると、店頭回収は大手スーパーでも本格的に実施されるようになり、現在では回収品目の数に違いは見られるものの全国大半の小売店舗で実施されている。
店頭回収システム
市町村の分別収集を補完する
スーパーなど小売店舗の店頭に回収ボックスを設置し資源物などを回収する活動は、店頭回収と呼ばれ定着している。店頭回収には自治体が関与する場合と、スーパーが自主的に実施しているケースに大きく分かれる。
自治体が関与する拠点回収
店頭回収に自治体が関与する場合は、スーパーの店頭を拠点として自治体の回収に利用する「拠点回収型」と、回収ボックスの提供など物的支援をして回収などは全てスーパーの自主性に任せる「支援型」がある。
拠点回収型は自治体の施策により、市民の排出機会向上などを目的として実施される形態だ。市民が排出しやすいスーパーなどの店頭への回収ボックスの設置から管理まで協力するという形で小売事業者が負担し、回収処理は自治体が行う。店頭回収は多くの場合、店舗からの運搬処理費にコストがかかるため、その部分を行政が負担することで、かさ張るペットボトルや蛍光灯、乾電池などの有害物を効率よく回収することが可能となる。またスーパーの駐車場などの店舗敷地を、自治体の拠点回収に提供している例もある。この場合、回収容器の設置、管理は自治体が行い、店舗は関与しない。店頭回収と自治体の拠点回収のハイブリッド型と言える。
一方、支援型は店頭回収を実施する小売事業者に対し、運搬処理の負担まではしないが、店頭回収協力店舗という形でのPR・広報協力、回収ボックスや登り旗などの物品提供といった支援を行っている自治体も多くある。
スーパーが自主的に実施する店頭回収
行政の関与が一切なくても自主的に店頭回収を実施しているスーパーは数多くある。実施している理由は消費者の利便性や販売者責任としての考えによるものだが、スーパーにより取り組み内容に大きな隔たりがあり、経営方針や近隣のリサイクル業者の有無に影響される部分が大きいと言える。
店頭回収を実施する小売事業者の大半は、店頭に集まった時点で廃棄物リサイクル業者へ一切を任せ委託するという「業者委託型システム」となっている。すべて委託することで、店舗側の作業は最小限で済むが、運搬・選別・中間処理までを全て業者に任せることになるため、委託コストはそれなりに必要となる。
一方、近年少しずつ増えてきているのが、自社の物流センターの近くにリサイクルセンターという中間処理施設を設置して、帰り便で店頭から回収しそのままリサイクルセンターで中間処理した上で売却するという「自社処理型システム」だ。帰り便を利用することで、輸送効率が大幅にアップする上、自社で中間処理まですることで資源価値も上がるため、事業として採算がとれるという。
店頭回収への期待
容器包装リサイクル推進に向けて
店頭回収はスーパーのCSR活動として行われているが、回収ボックスの管理、バックヤードでの保管、集めた資源物の処理など、店舗側の負担は大きい。一方では資源価格が上昇してきたため、大量に集めることで店頭回収の経済性や採算性を改善しようという考え方もある。スチール缶リサイクル協会のヒアリング調査を通して、次のような課題が浮き彫りになった。
自治体との協働が重要
スーパー各社共に自治体との連携や協働の重要性を指摘している。自治体は、店頭回収をスーパーの「社会的責任」と見なすだけではなく、地域の「社会システム」としてその意義を評価し、その活動を支援、あるいは協働してリサイクルの実効性を高めるという考え方が必要である。
廃棄物処理法の規制が課題
スーパーが回収した容器包装を運搬する場合に、廃棄物処理業の許可を求められるというケースがあった。廃棄物処理法では古紙や金属は「もっぱら物」(もっぱら再生利用の目的となるもの。金属くず、古紙、空瓶、ぼろ布が例示されている)として、その運搬に特段の許可は不要だが、これに該当しないトレイやペットボトルはプラスチックくずとして産業廃棄物に該当するため、その運搬に許可を要するというものである。
店頭で回収された容器包装の扱いは、国・都道府県・市町村で判断があいまいで、一般廃棄物とするか産業廃棄物とするか判断はさまざまだ。いずれの場合も許可が必要となるが、中には判断できないとして、中間処理することで有価物と見なし黙認している事例もある。対象品目で見ると、もっぱら物だけの場合は許可が不要、もっぱら物とそれ以外であれば許可が必要となる。
廃棄物処理法の解釈や業の許可に関する対応は自治体によって異なるものの、先進的なスーパーの自主的な取り組みが自治体にとっても社会にとっても循環型社会の構築に大きく貢献していることを考えると、こうした廃棄物処理法などの規制についての対策が求められる。
求められる連携の強化
スチール缶リサイクル協会の調査では、消費者はますます排出機会の向上を求めていることが判明している。スーパーは日常的に地域住民が通う場所であり、店頭回収はライフスタイルに合ったリサイクルシステムといえる。2013年4月から小型家電リサイクル法が施行されたが、ここでも店頭回収の可能性が期待されている。
一方、こうした社会的なニーズを民間事業者であるスーパーにすべて求めることはできない。民間リサイクル業者との提携など多様な方法を模索しつつ、逆にスーパーの店頭回収の経験やノウハウを公共施設などに広げていくといった発想も必要となる。
スチール缶リサイクル協会は、今後とも多様な回収の先進事例の調査と研究を行い、社会に提言していく。