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STEEL CAN AGE

CLOSE-UP

スチール缶の市場拡大とともに着実に実績を積んだリデュースと環境配慮設計

缶素材の軽量化(薄肉化)により鉄鋼資源の採掘量を削減し、社会的コストと環境負荷低減を目指す「リデュース」。スチール缶製造業界は、素材技術と製缶技術の相乗効果で今日まで着実に省資源の成果をあげてきた。先頃、スチール缶リサイクル協会では、国内大手事業者数社の協力を得て、代表缶種である200ml缶の軽量化推移を調査。その結果、1950年代にスチール飲料缶が登場して以降、積極的なリサイクル活動とともに、製造業界が長年の研究・技術開発を通して実績を積み上げた、リデュースと環境配慮設計への努力の軌跡が明らかになった。

 

1970年代から継続的に軽量化と環境配慮設計に取り組む

1954年のぶりき(錫めっき鋼板)を使用した200ml缶(半田缶)オレンジジュースの登場後、68年の「缶入りコーヒー飲料」を機に、本格的に市場が拡大して生活に浸透したスチール缶飲料。70年代になりごみの最終処分場逼迫問題が浮上する中で、同年代後半から自治体による分別収集と鉄鋼メーカーによるスチール缶再資源化研究が進められた。

以前は、スチール缶は鉄鋼メーカーでの再利用において、錫を含有していることで使いづらいと敬遠されていたこともあり、鉄鋼メーカーと製缶メーカーは共同で、錫を使用しない「ティンフリースチール(TFS)」を開発し接着缶に適用、スクラップの高品質化による資源循環性の向上を図った。しかし強度などの品質信頼性の観点から、従来缶より材料使用量(重量)が増加した。

そのため80~90年代初頭にかれたスチール缶製造業界のリデュース努力により、スチール缶の軽量化・省資源は大きく進展した。

 

素材・製缶技術の両輪で軽量化を実現してきたスチール缶

スチール缶の軽量化は、製造方法の見直しや開発により、はんだ缶から接着缶、溶接缶へと進化した3ピース缶、胴底と蓋の2つの部品からなる2ピース缶の開発と歩んだ。これは缶用鋼板の強度向上による薄肉化と成形性向上など、製缶技術と缶素材製造技術の各開発要素の組み合わせにより実現したものである。

例えば、1973年に登場した「スチール2ピース缶(DI缶)」は、鋼板の性質を決める製鋼段階での二次精錬や連続鋳造により不純物・介在物を徹底的に除去した高強度かつ成形性に優れた軟らかい材料と、打ち抜いた薄鋼板を絞り加工やしごき加工でカップ状(底付きの缶胴)に成形する新たな製缶技術との組み合わせにより可能になった。開発当初41gだったスチール2ピース缶(350ml)は、鋼板のさらなる薄肉化を経て90年代には30gを切るレベルまで軽量化され、現在では350ml缶全般で63%、200ml缶で20%の軽量化を達成している。

一方、環境配慮設計では、1990年代に新たな製缶方法により塗装を省略する2ピース・3ピースのラミネート缶が登場し、製造時のエネルギー消費とCO2排出量の大幅な低減を図った。

 

容器包装リサイクル法に先駆け自主行動計画で極限に挑む

日本では1991年の再生資源利用促進法、95年の容器包装リサイクル法の施行を機に、廃棄物の資源活用(リサイクル)が推進され、2000年の循環型社会形成基本法と資源有効利用促進法の施行に伴い、ようやくリデュース・リユースの2Rが取り組みテーマとして明記された。

スチール缶製造業界では、2000年以降も継続的に材料の薄肉化と環境配慮設計の観点から研究開発を進めているが、容器の安全・安心を確保する上で薄肉・軽量化は限界の域に達しており、現在その進捗は緩やかになっている。そうした中でも06年6月の改正容器包装リサイクル法公布に先駆けて事業者による自主行動計画を策定し、日本製缶協会内に「スチール缶軽量化推進委員会」を発足。林 伸行氏また前回の容リ法改正を受けて、自主行動計画の数値目標達成のためさらなる努力を重ね、全缶生産数の約85%を占める対象主要缶型4種(200、250、280、350ml)で、第二次自主行動計画で掲げた「04年度を基準とする15年度目標(4%軽量化)」を前倒しで達成した(4.91%、1.75g/缶)。

最近では、飲料業界・流通業界の協力を得てディスプレイ性にも対応したビード(凸凹加工)を施すことで強度向上を図るなど、多彩な取り組みを通して1缶当たりの軽量化(薄肉化)をさらに推進している。

 

拡大生産者責任の有無にかかわらず、リデュースの地道な取り組みを継続

前述の各種法整備が実施される以前の1970年代から、消費者・自治体・事業者などの連携・協力によりスチール缶リサイクルが推進されてきたことは周知の事実だが、今回の調査の結果、リデュースについても70年代から各企業独自に研究開発・商品化が進められ、着実に成果をあげてきたことが明らかになった。現在の「法規制で事業者の責任を強化すれば、軽量化(リデュース)は進展する」といった説はスチール缶には当てはまらないと言える。

今後もスチール缶リサイクル協会では、スチール缶製造業界の新技術開発や連携強化に資する取り組みを展開するとともに、利用事業者や販売事業者、消費者などとの幅広い協力関係の中で、さらなるリデュースに向けた新たな施策を提案し続けていく。