カンカンBOOKスチール缶リサイクルで子育て支援
子どもたちのために役立てる
越後平野のほぼ中央部に位置する燕市は、洋食器の生産で世界的なシェアを誇り、高い金属加工技術を持つ事業所が集積するものづくりのまちだ。事業所から排出される事業系ごみは、家庭系ごみとは異なり、事業者が燕・弥彦総合事務組合環境センターに自ら搬入するか、市の許可を受けた一般廃棄物収集運搬業者に回収を依頼し、有料で適正に処理しなければならない。一方、燕市は人口の減少傾向に歯止めをかけるため、安心して子どもを産み育てられるまちづくりに向けた環境の整備や子育て支援を進めてきた。このようななか、事業系ごみの資源回収と子育て支援を連携して推進する「カンカンBOOK」が2015年度から始まった。
「事業系ごみ減量化の一環として、缶の再資源化を利用して何かできないかという鈴木力市長の問題提起を発端に、職員一人ひとりがアイデアを持ち寄りました。その1つが『カンカンBOOK』でした。事業所を訪ね、あき缶処理の現状をお尋ねしたところ、『売って福利厚生に充てています』『ベンダーに任せています』という回答がほとんどでした。そこで、ぜひ市内の子どもたちのために役立ててほしいとご賛同をお願いしました」(更科明大課長)
1年目の15年度は6事業所にとどまったが、2年目の16年度は24事業所が協力。道の駅 国上の指定管理者のふれあいパーク久賀美は、17年度から参加した。道の駅国上は、新潟県内有数の観光地である弥彦と寺泊を結ぶゴールデンルート上にある。温泉施設を併設しており、県内外から多くの利用者が訪れる。そのため散乱ごみ防止対策の一環としてカンカンBOOKに登録し、協力事業所のなかで2番目に多い458㎏のあき缶を寄付している。
「回収ボックスは絶えずきれいに管理しなければ、ごみの散乱につながります。自動販売機の回収ボックスに排出されたあき缶は、ベンダーが飲料納品時に営業車両を活用して回収していましたが、頻度を増やすとコスト増となるため、私たちで管理する方法に切り替えました。それを契機にお客様が排出したあき缶を寄付し、子どもたちのために役立てていただいています」(相田信事務局長)
「回収ボックスの中はいろいろなごみが混ざっていて、きちんと分別排出されていないのが現状です。特に車中泊されるお客様は、分別マナーが緩くなってしまう傾向にあります。あき缶が資源回収できるよう分別にご協力をお願いしています」(牧正輝さん)
連携の輪を広げる
協力事業者はあき缶を、市役所西側の車庫前に設置された回収場所に直接持ち込んでいる。衛生管理や資源物としての品質を維持するため、飲み残しがないように排出している。
「回収日は毎月第1・3水曜日で、事前に生活環境課へ搬入予約して午前10時から正午までに直接持ち込んでいただいていましたが、現在は利便性を考慮して平日8時30分から5時15分までの開庁時間中随時受け付けています。検品後に受け入れさせていただいたあき缶を市が燕・弥彦総合事務組合環境センターへ運んでいます。事業所数、回収量共に増加しています。これからも多くの絵本を寄贈できるよう、引き続き事業所の皆様にご協力をお願いしています」(市川正人主任)
16年度はスチール缶3万5,600本、アルミ缶6万6,600本合わせて前年度の2倍近い10万2,200本が寄付された。売却益は15万1,238円で前年度7万2,045円を大きく上回り、絵本などの児童図書84冊が購入された。17年度からは保育園10カ所に絵本を贈る予定だ。図書内容は子育て支援課を通じて児童館や保育園の職員に聞き取り調査を行い、希望に合った絵本を購入している。16年度の絵本贈呈式では児童館を利用している小学生から「宿題の自主学習でいただいた本をよく使っています。今年の本もとても楽しみです」「素敵な贈り物をありがとうございます。たくさん本を読んで広い世界を知りたいです」と感謝の言葉が寄せられた。
「さらに『福服BOOK』が17年度から立ち上がりました。家庭でタンスに眠っている古着や靴、カバンを無料回収し、業者を通じて東南アジアで使用していただくとともに、カンカンBOOKと同じように売却益で絵本も購入して児童館や保育園へ贈呈します。これからも資源回収と子育て支援の連携の輪を広げる取り組みを加速させていきます」(丸谷勇太主事)