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鉄スクラップリサイクルの今後を見据えて

中国・四国発
分別排出・分別収集されたスチール缶は、鉄スクラップ処理業者を通じて鉄鋼メーカーに運ばれ、さまざまな鉄鋼製品の原料としてリサイクルされる。前号に引き続き、スチール缶リサイクルに欠かせない鉄スクラップ処理について紹介する。今回は、(社)日本鉄リサイクル工業会の中国・四国支部長を務める平林久一氏(平林金属(株)代表取締役)にお話を伺った。

 

グローバルに資源循環を捉える

山陰や四国など広範囲にわたる中国・四国エリア。陸上・海上交通の便が良く、関西圏から名古屋、九州エリアは2時間圏内。全国の鉄スクラップ発生量約3,500万トン/年(2009年)のうち、約11%を占める(中国7%、四国3%)。

日本鉄リサイクル工業会中国・四国支部は、この10年で約38社が新たに加わり、現在の会員数は110社にのぼる。韓国や中国など近隣諸国の旺盛な需要を踏まえ、同支部では活発に情報交換が行われているという。

「地域に眠るリサイクル資源を掘り起こすだけでなく、アジアからトルコ、アメリカ、ヨーロッパに至るまで、グローバルな視点で資源循環を捉えようという意識の高揚が、当支部内にも見られます」

 

市民の理解を促し地域に根ざしたリサイクルを推進

地球規模での資源循環の実践を目指す一方、もちろん地域に根ざしたリサイクル活動もしっかり行われている。例えば岡山県岡山市では、2010年6月からごみ減量化に向けた取り組みの一環として、家庭から排出される資源化物の回収拠点と品目が拡大された。この施策を受けて、市内48業者でつくる岡山再生資源事業協同組合が、民間業者の敷地を資源化物回収拠点と して開放している。平林金属も5拠点で受け入れ体制を整えている。

「長年資源回収に取り組んできましたが、当時はまだ缶の中に食べかすやタバコの吸殻が混入するなど、分別排出の重要性が市民に認知されていませんでした。組合で初代の理事長を務めていた私は、10年にわたって全市内を説明して回りました。その効果もあり、今ではきれいに洗って徹底した分別が行われています。

私たち鉄スクラップ業者にとって、ごみ処理費は経営の大きな課題であり、いかにごみを減らすかが至上命題です。スチール缶は、磁力選別機で選別できるため、設備の合理化もしやすい。また、錫めっきフリーなど缶の品質が向上したこともあり、不純物が少なくリサイクルしやすいため、鉄鋼メーカーなどお客様に喜ばれる材料。リサイクルするうえでごみの発生や電気の使用料など最小限の手間・コストで済むリサイクルの優等生です」

 

悩みの種は不法投棄皆の意識改革が大切

こうした分別回収や適正なリサイクルに水を差すのが、無許可業者による不法投棄だという。
 
「当社は鉄のリサイクルから出発し、現在家電製品の専用リサイクル工場を持っているので、家電製品の回収も行っています。ところが、家電リサイクル法を無視し、冷蔵庫やテレビ、自転車を野積みして環境を破壊している無許可の業者がいます。通常は、リサイクル料金がかかりますが、彼らは無料か、通常4,000円のものを2,000円で引き取ります。安易に利用する消費者も無許可業者の取り締まりを阻んでいるという自覚が必要です。『環境破壊は困るけど、自分だけは安く済ませたい』という考えではなく、一人ひとりが『私たちの地球環境を第一に考える』という意識を持つことが大切だと思います」

 

次世代に引き継ぎ新たなリサイクルの形を創造する

平林金属では、「ごみゼロ」をテーマに、さまざまな資源を回収する取り組みに挑戦している。
 
「一度選別した後のごみから、さらに細かい選別を行っています。岡山大学と永田エンジニアリング(株)との産学共同で研究を進め、ミックスメタルを選別する乾式比重装置を開発・実用化しました。スチール缶はほとんど鉄ですが、廃棄物の多くはさまざまな種類の金属やプラスチックが混合しており、レアメタルも含まれます。これまでリサイクルコストが安価な中国などに輸出されることも少なくありませんでしたが、国土が狭く資源が乏しい日本だからこそ、廃棄物から資源をよみがえらせることが重要。全国の同業の皆さんからも注目していただき、2011年からは北海道の(株)鈴木商会などと共同で、登別市で埋立処分された過去の産業廃棄物を掘り返して再生させる事業に携わっています。非塩素系プラスチック、アルミ、真ちゅう、銅などの資源を回収できる装置なので、再び埋め戻す量は約10分の1に減る見込みです。これらの技術開発を先導してきたのは、私の息子をはじめとした若い世代。これからも次世代が新たなリサイクルの形を創造・発信していくことを期待しています」